第二十三話「階層主との一戦」
四階層から五階層に進んですぐ苔や植物の蔦などが絡まった巨大な扉が前に現れた。
「どうやら、アースが正解だったようだね」
にやりと笑みを浮かべ、ロメリアさんは大剣に手をかける。ロメリアさんだけじゃない。共に調査をしている冒険者達が、目の前の扉を前に戦闘態勢をとっている。
「どうみる? 兄妹」
と、ドッゴさんが僕の隣に並び問いかけてくる。
「階層主のことですね」
「おう」
「……植物系。もしくは獣系かと」
森林ダンジョン。そして、ここまで戦ってきた魔物達の種類を考えると植物系の魔物が来る可能性が高いけど。獣系というのも考えられる。
「なぁに! 何が来ようと、あたしが居るんだ! 過激に挑みな!! あんた達!!」
扉に手をかけ、ロメリアさんは叫ぶ。
それを聞いた冒険者達は、鼓舞されロメリアさんに負けないほど大きな叫びを上げた。
「いくよ!!」
武器を構え、扉の奥へ進んで行く。
「あいつが階層主」
冒険者全員が入ると、扉も閉まる。
部屋の中央に居たのは、巨大な樹。まるで何百年、何千年も生きているかのような大樹だ。
「へえ、あいつはデグボーだね」
「ロメリアの姉貴、知ってるんですかい?」
「あたしがまだ中級冒険者に成り立ての頃だけどね。一度戦ったことがあるんだ。気を付けな、あんた達! あいつは、地面から根っこを生やしたり、毒の果物を投げつけてくるよ!!」
それは厄介だ。特に、毒の果実。
一応、回復術を使える冒険者と回復薬を十分に持ってきてはいるけど……当たらないのが一番だ。
「その果実はできるだけ避けな。ぶった切っても中から毒素が出てくるからね」
「ロメリアの姉貴! 動き出しましたぜ!!」
大樹が動き出す。床からは無数の根が出現し、一斉に襲い掛かってくる。
「前衛! 足元に気を付けつつ根を片っ端から切り捨てな!! あたしに続けぇ!!」
ロメリアさんは、そう指示を出すと先陣を切る。
それに続くように前衛の冒険者達は、駆け出した。よし、僕は。
「ロウガ! 後衛の護衛を! ハヤテ! 後方から前衛を支援! 危ないと思った根を最優先だ! ティナ!」
「わかってるわ! 〈ブースト〉!!!」
ティナが両手を前に構え強化魔法〈ブースト〉を唱えると、ロウガやハヤテだけじゃない。前衛の冒険者全てに〈ブースト〉がかかる。
ロウガも前衛にしたいところだけど、それだと後衛の守りが薄くなる。
「それにしても、馬鹿みたいに全員突っ込んでいったわね」
「こっちは、僕に任せたって四階層で言ってたけど……重大過ぎるよ、まったく」
五階層へ行く前に、僕はロメリアさんに言われた。もし、五階層が階層主だった場合。自分達は、迷わず突っ込むので、自分の判断で動くようにと。
信頼してくれているのか。それともいい加減なだけなのか。どちらにしろ、任されたからにはやるしかない。
「おら! おら! おらぁ! そんな単純な攻撃じゃ、あたしは止められないよ!!」
「うおおお! ロメリアの姉貴に続けぇ!!」
次々に根が襲ってくるが、それをロメリアさんとドッゴさんが多く切り捨てて前に進んでいる。
他の前衛も苦戦しつつも切り捨ててはいるけど、数が多すぎる。
ハヤテが、後方からエネルギー砲で視線しているとはいえ、油断はできない。なんて生命力。中々距離を詰められない。
「デグボーの様子が……」
ずっと不動だったのに、急にガサガサと動き出した。
まさか。
「果実が来るよ! 気を付けな!!」
やっぱりそうか。ロメリアさんの言葉に、冒険者達は全員身構える。
「後衛の皆さん! 皆さんのことはロウガが護ります! 安心して攻撃をしてください!!」
「ま、任せたわよ!」
「おっしゃ! 毒の果実を丸焼きにしてやるぜ!」
すると、弓使いは弓矢を構え、魔法使いは魔力を高めた。




