きらきらと輝く舞踏会土産のオルゴール付き宝石箱
挿絵の画像を作成する際には、「Ainova AI」と「AIイラストくん」と「Gemini AI」を使用させて頂きました。
大阪市の船場で古くより教科書会社を営まれている小野寺さんの御宅には、真弓様というそれは御美しい御嬢様がいらっしゃいました。
そんな真弓御嬢様は幼少の砌より、家名に恥じない立派な淑女になる事を目指されていたのです。
「ああ、物足りませんわね…もう少し大きければ私も参加出来ましたのに。御母様ったら今頃は華麗にステップを踏まれているのかしら?」
真弓御嬢様が溜息をつかれていたのは、生駒伯爵家で開催された今宵の舞踏会の事で御座いました。
舞踏会に招待されてこそ、一人前の淑女。
そう御考えの真弓御嬢様でしたが、まだ小学生の御若さでは参加など叶いません。
そう諦めはしたものの、逃した魚が大きく見えるのは必定。
宿題を仕上げられた後は、何をされるにも心此処にあらずという有り様でした。
そのため御母堂の凪子様が御帰りになるや、奉公人達よりも早く出迎えられたのです。
「あらあら、真弓さんったら…そう焦らずとも宜しいのに。」
とはいえ凪子様も、真弓御嬢様の御気持ちがよく御分かりなのでしょう。
苦笑こそされたものの、決してお叱りにはならなかったのです。
「ところで御母様、舞踏会の御様子は如何で御座いましたの?」
「左様で御座いますわね、真弓さん…」
凪子様の語られる舞踏会の御様子は、それは絢爛豪華な物で御座いました。
ホールに鳴り響くクラシック音楽の調べに合わせ、優雅にして華麗に舞われる様燕尾服や夜会服といった洋装の子息令嬢。
真弓御嬢様にとって、凪子様のお話は舞踏会への思慕を否応なしに募らせる物で御座いました。
しかし凪子様が舞踏会から持ち帰られたのは、そうした土産話だけでは御座いませんでした。
「そうそう、真弓さん。実は生駒伯爵より舞踏会の記念品を頂きましたの。きっと真弓さんのお気に召すのではないかと思いましたのよ。」
「まあ、これは…!」
真弓お嬢様が思わず目を輝かされたのも、無理は御座いません。
豪奢にして上品なオルゴール付き宝石箱は其れ自体が美しい宝物であるかのように、きらきらと光り輝いていたのですから。
この伯爵家からの素敵な記念品は、早くも真弓御嬢様の宝物となったのでした。
「記念品ですら彼程に豪華絢爛なのですから、舞踏会はこれに勝る素晴らしさなのでしょうね…」
そして宝石箱を開閉されてオルゴールの調べに耳を傾けられる度、そう夢見心地の声色で仰るのです。
どうやら真弓御嬢様の舞踏会への思慕は、また一段と募った御様子ですね。




