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児玉さん。俺、頑張ります!  作者: 虹色
5 六月の章
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 ★★ 雪見さん?! : 児玉かすみ


ちょっとイチゴの色が付いちゃったかな?

帰ってから、もう一度やってみなくちゃ。


結構時間がかかっちゃったかも。

デザートを食べ始めたばっかりだったのに、雪見さんを一人にして申し訳なかったな。


「雪見さん、ごめんなさ・・え?」


倒れてる?!


なんで?!

どうしたの?!


「雪見さん?! だ、大丈夫?!」


まさか、食中毒?

いえ、でも、わたしは何でもないし・・・。


「雪見さん?」


「・・・児玉さん、すみません・・・。」


ああ、意識はあるのね。よかった。

でも、ぐったりして・・・。

とりあえず頭を・・・膝枕でもいい?


「大丈夫?」


顔が赤い。

熱は・・・ないみたいだけど。


「雪見さん?」


「あの・・・飲み物・・・。」


「飲み物?」


「アルコールが・・・。」


「え?」


アルコール?


・・・え?

もしかして、アルコールが入ってたってこと?


うそ・・・?


だって、「0」って書いてあるのを買ってきたはず。

ええと、この缶だよね・・・ほら、やっぱり・・・あ?!



違ってる!



カロリー「0」だ!

よく見たら、こっちに「お酒」って書いてある!


「やだ、どうしよう?!」


普段買い慣れないものを買ったから・・・。


「ご・・・、ごめんなさい! 間違えちゃったみたい。これ、お酒だった・・・。」


飲めないって言ってたけど・・・どうなっちゃうの?

急性アルコール中毒とか?

救急車が必要?


「どうしよう? 苦しい?」


「ああ・・・、大丈夫です・・・。ちょっと・・・ふらふらして・・・。」


「あ、あの、お水とか、飲む? 冷たいタオルは?」


どうしたらいいんだろう?

自分に経験がないから分からないよ・・・。


「要りません・・・。このまま、で・・・。一時間・・・寝たら、治ります・・・。」


「寝るだけでいいの? 一時間?」


「児玉さん・・・、帰らないで・・ください。送り、ます・・・から。」


「送るって・・・いいよ、近いんだから一人で帰れ・・」


「ダメです!」


うわ!


「絶対に、送ります。だから・・・帰らないで・・・・・。」


「は、はい。」




・・・・・。




・・・眠っちゃった?




ああ、びっくりした・・・。


あららら。

よく見たら、手首を掴まれちゃってる。

膝枕のままだし。


「一時間寝たら」って言ってたけど・・・大丈夫なのかな?

わたし、何てことしちゃったんだろう?

不注意すぎるよね・・・。



それにしても・・・。


どうしたらいいんだろう、この状況?

酔っ払って(だよね?)寝ている男の人に膝枕をしてるって・・・いいのかしら?


いったいどれくらい飲んだの?

グラスの中身は・・・まだけっこうある。

つまり、一口か二口? それで、これ?

本当に飲めないのね・・・。



そういえば、うちのお父さんも強くないんだっけ。

親戚の集まりとかあると、いつの間にかほかの部屋で寝てるもんね。

で、しばらくすると元気になって・・・ああ、雪見さんもあれと同じか。


お父さんはビール1、2杯は飲むけど、雪見さんはほんの少ししか飲んでないんだから、一時間で大丈夫なのかも。

さっきの様子だと、自分で分かっていたみたいだし。


ああ・・・。

ほんとうに、悪いことしちゃった。

送ってもらう必要はないけど、だからと言って、この状態の雪見さんをほったらかして帰るのは申し訳ないし・・・。

玄関の鍵も閉められないもんね。寝ている間に泥棒に入られたりとか・・・怖いよね。




雪見さん・・・?




無邪気な顔して寝てるね。

よく見ると、色白かも。外の仕事じゃないもんね。


手を放してくれないかしら? そうっと・・・あ、離れた。



・・・ふふ。

ほんとうにぐっすり寝てるみたい。


まつ毛が長い。

ふっくらしたほっぺ。ちょっとつついてみても・・・?


「くく・・・、柔らかい。」


全然起きないや。

こっちのあごの下は?


あ〜、ほっぺより柔らか〜い。

ふよふよして・・・なんか面白〜い♪


「んーーー・・・・。」


うわ、動いた!


「ゆ・・、雪見さん?」


起きるの?

目は開いて・・・?


「え?」


ちょっと待って!

こ・・・、腰に抱きつかないで!!


「雪見さん? くすぐった・・うわ、はははは! くすぐったい! ちょっと・・。」


もぞもぞ動かないで!

ホントに寝てるの?!


「児玉・・さん・・・。」


「は、はい?!」


「帰ら・・・ないで・・・・。」


「ああ、はいはい、分かった。分かったよ。分かったから、放して。」


「はい・・・。」


・・・・通じた?

でも・・・寝てるのか。


とりあえず、腕は離れたけど・・・びっくりしたー・・・。



それにしても、こんな状態でも「帰らないで。」って・・・・淋しいのかしら?


さっき、横川先生のことを話したとき、なんとなく無理に元気を出しているように見えたよね?

ほんとうはショックだったのかも知れない。気の毒に。


よく考えると、横川先生も罪なことをしたよね。

伊藤先生を焦らせようとして、雪見さんと仲良く見せかけるなんて。


――― あ。


でも、それって、そもそもわたしが伊藤先生と仲良く見えたからだって・・・。

つまり、わたしのせい?

いえ、でも、それはわざとじゃなくて。


でもやっぱり・・・わたしのせい?

もう少し考えなくちゃいけなかったのかな・・・?

だとしたら、雪見さんが横川先生のことを期待しちゃったのもわたしのせい?

がっかりして、淋しい気分になっていることも・・・?



・・・ごめんね、雪見さん。

ここにいるのが横川先生だったらよかったのにね。







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