★★ なんだかね・・・。 : 児玉かすみ
雪見さんと横川先生、いい感じでおはなししてたよね。
伊藤先生と中林先生には悪いけど、お似合いだと思うな。
雪見さんは最初から横川先生に見惚れてたもんね。
横川先生は美人だし、性格もいいしね。
「児玉さん。にこにこして、何を考えてるんですか?」
いけない、いけない。
隣に雪見さんがいること、つい忘れちゃってた。
飲み過ぎ?
――― 違うな。
雪見さんが隣にいることが普通になっちゃってるんだ、きっと。
あんまり毎日のことだから。
「楽しみだなあ、と思って。」
「楽しみ? 何がですか?」
「横川先生のお弁当。」
そうよ。
決まってるじゃないの。
横川先生が雪見さんのために言い出してくれたんだよ?
「どうして児玉さんが楽しみなんですか? 食べないのに。」
食べない?
ああ、わたしは食べないもんね。
食べるのは雪見さん。
「く…ふふ。内緒♪」
横川先生と雪見さんがうまくいくかなー……、って、楽しみなんだよ。
「児玉さん……、今日は酔ってますね?」
「そんなことありません。いつもと同じです。ふふふ……。」
雪見さんだって楽しみなくせに、平気な顔しちゃって。
平気な顔……。
ん〜〜〜?
平気って言うよりも、なんか、機嫌悪い?
わたし、変なこと言ったかな?
ああ!
「ごめんね、雪見さん。」
「はい?」
「送ってもらわなくても大丈夫よ。」
「え?」
「だって、ほら……ねえ。」
せっかく横川先生が雪見さんのことを気に入ってくれてるみたいなのに、誤解されたら悪いものね。
「いいんです。一緒に帰りたいんですから。」
「そんなに気を遣わなくても……。」
「いいんです。」
いいのか……。
まあ、一応、わたしも女性だしね。
何かあったら、雪見さんだって後味が悪いよね。
「ありがとうございます。」
それにしても、わざわざ「一緒に帰りたい」って言ってくれるなんて、ほんとうに紳士なひとだなあ……。
「児玉さん……?」
「はい?」
どうしたのかしら?
なんか、真剣な顔してるけど……。
「俺の弁当作るの、もう面倒になったんじゃないですか?」
「え? なんで?」
「だって……、横川先生が作ってくれるって言ったら、嬉しそうだったから。」
「……は?」
「ほんとうは面倒なのに、俺に気を遣って、やめるって言い出せないんじゃないですか?」
え?!
そんなふうに思ったの?
わたしは雪見さんが、横川先生のお弁当の方が嬉しいだろうと思って……。
「違います。そんなこと、ないのよ。」
「……ほんとうに?」
「そうだよ。わたし、楽しいって言ったでしょ?」
「でも……。」
「雪見さん。わたし、自分のことはウソは言わないよ。ちゃんと、嫌なことは『いや。』って言えるのよ。」
そう。
あのお見合いのあと、わたしは変わったから。
「じゃあ、これからもお弁当は……?」
「もちろん作るよ。雪見さんがかっこよく痩せるまで。」
……あららら。
そんなに嬉しそうな顔してくれちゃうの?
「あの……。」
「なあに?」
「明日かあさって、お米を届けます。」
ふふ、機嫌が直った?
こういう現金なところ、やっぱりかわいいよね。
…なんて言ったら悪いかな。
「はい。お待ちしています。」




