★★ え?! : 児玉かすみ
「ああ、来た来た。」
「あ、ホントだ。やっぱり高校生は速いですね。」
ランナーが国道から公園への道に入って来たのが見える。
この突き当たりがゴール。
道沿いの芝生の広場で一緒に待っていた柳川先生が、ゴール地点へ、生徒の出迎えに走って行った。
雪見さんはどうしているかな……。
今はスタートからだいたい30分。1kmを5分弱で走るから……。
1kmを5分で計算すると6km、少し速くて7kmくらいってところ?
でも、スタートすぐには人混みで走るどころではなかったから、いつもよりも時間はかかるはず。
あと20分くらいはかかるかしら……。
あれ?
もしかして、先頭を争ってるのは、うちの陸上部じゃないの?
やっぱりそうだ。
2年の砂川くんだ。
来た!
応援してあげなくちゃ!
「砂川くん! 頑張って!」
うわ、速い。
これが長距離のスピード?
ラストスパートって、こんなに速いんだ。
雪見さんの練習では、こんなに速く走ってるのは見たことがないけど……。
「砂川ーーーーー! 負けるなーーーーー!」
「竹高、頑張ってーーーー!」
うちの学校の応援?
陸上部は選手以外は来てないって、柳川先生は言ってたけど……。
「砂川せんぱーい!」
「頑張れーーー!」
あれれ、あんなにいるよ。
みんな私服だ。
それで気付かなかったのか。
へえ。
運動部って、ああやってお友達が応援に来てくれるんだ。
いいなあ……。
「あ、児玉先生!」
え?
あら、うちのクラスの生徒?
そうか。
金子くんの応援なのね。
2、4、6、8……12人?
へえ。
金子くんって、人気者なんだなあ……。
「ねえ、雪見さんと先生の元カレって、まだゴールしてないよね?」
「え……?」
「10時半までに着けるかどうか微妙だったから走って来ちゃった〜。」
そういえば、みんな暑そうにしてるけど……。
「どういうこと……?」
「あれ? 先生、知らないんだ?」
「そっかー。そりゃそうだよね。」
「だから、何が?」
ちゃんと教えなさい!
「金子がさあ、9時ごろメールしてきて、雪見さんとたまちゃんの元カレの対決が今日だって知らせてきたんだよ。10時半ごろまでに着けば、ゴールに間に合うからって。」
メールで? 知らせた?
「あ、金子が来たぞ! おーい、金子! あと少し! 頑張れ!」
金子くんの応援は、 “ついで” ……?
じゃあ……向こうの子たちは……?
「たまちゃーん。おはよう。」
うわ、こっちに来た。
「ねえねえ、雪見さん、勝てそう?」
「相手の人って、何色の服?」
ああ……そうなんだ……。
高校生の情報網は分かっていたつもりだったけど、これほどとは……。
やだ!
さっき、プロポーズの話とかしちゃったけど、この子たちももう知ってるのかしら?!
やだ、もう〜〜〜〜!




