覚悟を決めて
『よかった。ようやく会わせてくれるのね。』
12月26日、母親に、児玉さんを連れて行く連絡をすると、電話から聞こえる声がほっとした様子に変わった。
児玉さんの実家には昨日のうちに児玉さんが連絡をして、元旦に訪問することが決まっている。
「うん。あれから何も連絡しないままでごめん。心配かけちゃって……。」
『いいのよ。連絡がないのは続いている証拠だって思っていたから。』
母さん……、ずいぶん気楽に考えていたんだなあ。
そういえば、清江伯母さんも、あれから何も訊いて来ない。
お節介な伯母さんなら、「どうなってるの?」なんて電話をかけてよこしそうな気がするけど。
ああ、児玉さんのお母さんと俳句の会で一緒なんだっけ。
だとしたら、5倍の話を知っているのかも……。
『じゃあ、元日にあちらにご挨拶に行くのね? で、2日の午後にかすみさんがうちに来る、と。』
「うん。身支度があるし、ここからの方が近いから、一日にはそっちには行かないから。で、2日の朝に車でそっちに行って、夜には児玉さんを乗せて帰るよ。」
『そう。じゃあ、今回はうちには泊まらないのね?』
実家に一泊もしない年末年始は初めてだけど……母さんたちは淋しがるだろうか?
「うん……。姉さんは?」
『夏穂の幼稚園が終わったから、高志さんを残して、明日から泊まりに来るって。今、桐子はつわりが酷いのよ。年末年始は、うちでゆっくりしたいって言ってるの。』
「え? 姉さん、二人目?」
『そうよ。あら、柊には話してなかったっけ? そういえば、そうだったわ……。』
何か月も家族と連絡をとっていないと、こういうことも起きるんだな……。
「上の子は? 母さんたちだけで大丈夫?」
『大丈夫。もう5歳で手がかからないもの。』
「そう? もし手が必要なら年末に行くけど……。」
『ありがとう。何かあったら、お願いするわね。まあ、年末年始はお父さんもいるから大丈夫よ。』
そうだな。
それに、食事をする人数が少ない方が楽なのかも知れない。
「じゃあ、2日に行くよ。父さんと姉さんによろしく伝えといて。」
『わかりました。じゃあね。』
――― よし。
これであいさつの日取りは決まった。
あとは、児玉さんのお父さんが許してくれるまで粘るのみ!
12月の図書室利用は、社会科の課題学習があったおかげで2500人を超えた。
累計では、去年一年間の利用者の3.6倍。とりあえず、4月段階での “3倍” という目標は達成。
校長先生がねぎらいの言葉をかけてくれた。
けれど、児玉さんのお父さんとの約束まで、あと約5500人。
年末年始の休みや3年生が来なくなるこれからを考えると、やっぱり無理かもしれないと思ってしまう。
でも!
だからと言って、児玉さんとの結婚を諦めるわけにはいかない。
児玉さんだって、そのつもりでいてくれてるし。
今、俺に出来ることは、お父さんが許してくれるまで、何時間でもお願いすることだけ。
怒鳴られたとしても、殴られたとしても、それは2年前に自分が播いた種なんだから。




