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児玉さん。俺、頑張ります!  作者: 虹色
10 覚悟の冬
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覚悟を決めて


『よかった。ようやく会わせてくれるのね。』


12月26日、母親に、児玉さんを連れて行く連絡をすると、電話から聞こえる声がほっとした様子に変わった。

児玉さんの実家には昨日のうちに児玉さんが連絡をして、元旦に訪問することが決まっている。


「うん。あれから何も連絡しないままでごめん。心配かけちゃって……。」


『いいのよ。連絡がないのは続いている証拠だって思っていたから。』


母さん……、ずいぶん気楽に考えていたんだなあ。


そういえば、清江伯母さんも、あれから何も訊いて来ない。

お節介な伯母さんなら、「どうなってるの?」なんて電話をかけてよこしそうな気がするけど。

ああ、児玉さんのお母さんと俳句の会で一緒なんだっけ。

だとしたら、5倍の話を知っているのかも……。


『じゃあ、元日にあちらにご挨拶に行くのね? で、2日の午後にかすみさんがうちに来る、と。』


「うん。身支度があるし、ここからの方が近いから、一日(ついたち)にはそっちには行かないから。で、2日の朝に車でそっちに行って、夜には児玉さんを乗せて帰るよ。」


『そう。じゃあ、今回はうちには泊まらないのね?』


実家に一泊もしない年末年始は初めてだけど……母さんたちは淋しがるだろうか?


「うん……。姉さんは?」


夏穂(なつほ)の幼稚園が終わったから、高志さんを残して、明日から泊まりに来るって。今、桐子(とうこ)はつわりが酷いのよ。年末年始は、うちでゆっくりしたいって言ってるの。』


「え? 姉さん、二人目?」


『そうよ。あら、柊には話してなかったっけ? そういえば、そうだったわ……。』


何か月も家族と連絡をとっていないと、こういうことも起きるんだな……。


「上の子は? 母さんたちだけで大丈夫?」


『大丈夫。もう5歳で手がかからないもの。』


「そう? もし手が必要なら年末に行くけど……。」


『ありがとう。何かあったら、お願いするわね。まあ、年末年始はお父さんもいるから大丈夫よ。』


そうだな。

それに、食事をする人数が少ない方が楽なのかも知れない。


「じゃあ、2日に行くよ。父さんと姉さんによろしく伝えといて。」


『わかりました。じゃあね。』


――― よし。


これであいさつの日取りは決まった。

あとは、児玉さんのお父さんが許してくれるまで粘るのみ!




12月の図書室利用は、社会科の課題学習があったおかげで2500人を超えた。

累計では、去年一年間の利用者の3.6倍。とりあえず、4月段階での “3倍” という目標は達成。

校長先生がねぎらいの言葉をかけてくれた。


けれど、児玉さんのお父さんとの約束まで、あと約5500人。

年末年始の休みや3年生が来なくなるこれからを考えると、やっぱり無理かもしれないと思ってしまう。


でも!


だからと言って、児玉さんとの結婚を諦めるわけにはいかない。

児玉さんだって、そのつもりでいてくれてるし。


今、俺に出来ることは、お父さんが許してくれるまで、何時間でもお願いすることだけ。

怒鳴られたとしても、殴られたとしても、それは2年前に自分が播いた種なんだから。







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