第23話 英雄の目覚めとデートの約束?
◯キャラ紹介
【主人公】
・ユウ(優)
【概要】 日本の高校生……だったはずが語学留学へ向かう飛行機の事故により、異世界ニヴェアへと転移した。 数ヶ国語を操る頭脳と鋼のメンタル(勘違い力)を持つ。 第二王子シルヴァン救出の功績により、ニヴェア城での滞在を許された。
【ユウ本人による自己評価】
選ばれし神の器にして、真の英雄。 この世界は俺の伝説の序章に過ぎない。最近、俺の覇気に当てられて信者が増えてきたのが悩み(アリュールとか)。
【主なスキル(?)】
全言語理解: どんな言葉もわかる。本人は「天才だから」だと思っている。
現代知識無双: ガムや養生テープを「魔法具」として活用する。
【ニヴェア王国の仲間たち】
・アリュール
【概要】
ニヴェア王国の近衛兵隊長を務める女騎士。 真面目で責任感が強く、剣技においては国内屈指の実力者。ユウの護衛兼パートナーとして行動を共にする。 ユウの突拍子もない言動に最初は戸惑っていたが、修羅場を共にし、彼を「破天荒だが頼れる英雄」として信頼し始めている。
・イシュタル
【概要】
ニヴェア王国の皇女。愛らしい幼女。不思議な「光る石」を拾ったり、勘が鋭かったりと謎が多い。 ユウに非常に懐いており、彼と一緒にいると元気が出るらしい。
・テオ
【概要】
ニヴェア軍の一般兵士。 人当たりが良く、少しお調子者なムードメーカー。 ユウの新しいルームメイト兼世話係に立候補した。ユウの現代知識や武勇伝に興味津々。
【ニヴェア王家】
・ シルヴァン(第二王子)
【概要】
ニヴェア王国の第二王子。 自他共に認めるナルシストで、美しさを何よりも優先する。 敵に追われていたが、ユウたちによって救出された。意外と兄弟思いな一面もある……?
・ラファル(第三王子)
【概要】
ニヴェア王国の第三王子。 武力よりも知恵を重んじる研究者肌。城内の研究室に篭り、日夜実験を繰り返している。
・国王
【概要】
ニヴェアを治める賢王。 異邦人であるユウの実力を認め、城への滞在を許可した。
【その他】
・アカツキ
【概要】
各地を旅する行商人。 ユウたちが困っている時にタイミングよく現れ、馬車に乗せてくれたり情報をくれたりする。
・田中
【概要】
ユウと同じ飛行機に乗っていた日本人大学生。 飛行機内で泣き叫んでいたが、優が転移した後の行方は不明。
朝の光が差し込む中、ふと気配を感じて目を開けると、テオの顔が俺の顔に当たりそうなくらい近くにあった。
「……!な、何をやっているんだテオよ! 貴様、まさか俺の寝顔に見惚れていたのか? だが残念ながら、俺にそちらの趣味はないぞ! 断じてな!」
俺が飛び起きざまに声を張り上げると、テオは目を白黒させて大きな素振りで顔を横に振り、
「いやいや! 俺にもそんな趣味ないから! ちょっと寝起きでふらついて、バランス崩しただけだって!」
テオは顔を真っ赤にして、必死の形相で全力否定をしている。
(ふん、照れることはない。俺ほどの美丈夫ともなれば、同性すらも魅了してしまうのは罪な運命というものだ)
「そうか……。まあ、そういうことにしておこう。とりあえず、せっかく城に住めたんだ。まずはこの拠点を把握するためにも、一緒に冒険してみないか?」
その俺の提案に、テオはパッと表情を明るくさせ、目をキラキラさせて
「いいな! 城の中を探検なんて、滅多にできることじゃないしな! だけど、勝手に歩き回って怒られたりしないかな……。まあ、ユウと一緒ならなんとかなるか! 行こうぜ!」 と、間髪入れずに返事をしてきた。
部屋の外へ出ると、そこはすでに城の日常が始まっていた。数人のメイドのような格好をした女性たちが忙しなく行き交い、要所要所には厳つい武装をした見張りの兵士が立っている。
(ふむ、警備も厳重だな。やはり俺というVIPを迎えたことで、城全体の警戒レベルが上がっているのだろう)
テオと俺が見張りをしている警備の隣を通ろうとした時、その警備兵がいきなり兜を外し、
「おっ、テオじゃねえか! そういえば今回の活躍が認められて、特例で城に住めるようになったんだってな! 出世したな!」
と、親しげにテオに話しかけてきた。
「あれ、副隊長じゃないですか! お疲れ様です! そうなんです、昨日からニヴェア城の一室を借りてます! ……でも、なんで副隊長が今日、城の中の見張りを? 本来の仕事じゃないですよね?」
「あーそれはな、昨日の激戦で部下に重傷を負ったのが多くてな、人手が足りないんだよ。俺は昨日、別の極秘任務(別の仕事)で戦闘に参加できなかったしな。体が鈍っちまうよ」
副隊長と呼ばれた男は、豪快に笑いながらそう言った後、ふと声を潜めてテオに耳打ちした。
「それに、テオもお前、昨日ので疲れただろ。最近、他にも裏でいろいろ動き回ってるって噂じゃないか。あまり無理するなよ?」
その言葉に、テオの肩が一瞬ピクリと跳ねたのを俺は見逃さなかった。(裏で動き回っているだと? さてはテオのやつ、俺のために極秘で歓迎パーティーの準備でもしてくれているのか? 健気な奴め)
「は、はは……まあ、それなりに。副隊長も頑張ってください! ゆっくり休めよ!」
そう言って、テオと副隊長は手を振り別れていった。
「さっきの人物は何者だ? やけに親しそうだったが」
そうテオに聞くと、テオは誇らしげに、
「さっきのは、俺たちの所属する部隊の副隊長なんだ! 俺が尊敬してる人の一人でもあってさ。力がめちゃくちゃ強くてね、うちの隊だと、あのハイラ隊長よりも腕相撲なら強いんだぜー」
「ほう、それはすごいな」
(あのハイラよりも力があるとは、只者ではないな。いつか手合わせをする機会があれば、俺の『ゴリラモード』で相手をしてやるか)
テオとそんな世間話をしながら、迷路のような城内を勘を頼りに進んでいると、気づけば美味しそうな匂いの漂う、食堂と思われる部屋に着いていた。 そこには、まるで中世ヨーロッパを舞台にした映画のワンシーンのような、見上げるほど高い天井と、部屋の中央に鎮座する巨大な長机、そしてそれに並ぶ豪奢な椅子たちが、俺たちを待ち受けていた。
「おお……! これはまた、素晴らしい晩餐会場……いや、朝食会場だな!」
「あら、ユウ様とテオ様ですね。おはようございます」
部屋の奥から、上品な初老のメイド長が現れ、深々と頭を下げた。
「後ほどお部屋へお呼びに行こうと思っていたのですが、食堂の場所をご存じだったようですね。さすがはユウ様です。国王陛下からお二人の活躍は伺っております」
(ふん、当然だ。俺の絶対嗅覚にかかれば、朝食の場所など造作もない)
「本日は昨日の争いの事後処理などが多く、国王陛下や王子殿下方はご不在ですが、おそらく明日からはこちらの食堂でご一緒できると思います。本日は申し訳ないのですが、こちらでお二人でお食事を召し上がっていただいた後、ユウ様にはアリュール様が城下町をご案内する手はずとなっております。テオ様は、その後訓練の予定が入っております」
(なっ、城の外を散策できるというのか! しかもアリュールと二人きりで! これは、我が名を民衆に広めるのにちょうど良い機会ではないか! それに、これは実質的な……デートというやつか!?)
二ヴェア編2部開始!




