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「・・・痛く・・・ない。」
子供は呆然としたように呟いて、自分の足首を見つめている。
腫れも引いたようだし、赤みもない。
元の健康な状態の足首に戻っていた。
「・・・ありがとうございます。」
子供は立ち上がってお礼の言葉を言ってくれたが、私の顔を見てはくれなかった。
「ライムッ!!」
遠くの方から男の子がこちらに向かって駆け寄ってくる。
もしかして、この子供の知り合いからしら。
「あ。お兄ちゃん・・・。」
どうやら子供はライムという名前だったらしい。
ライムという名前ということは、女の子だろうか。
髪は短いし、服装も男の子のような服装だ。
顔立ちは幼く柔らかな感じだが、男の子のようにも女の子のようにも見えた。
「おまえっ!ライムに近づくなっ!!」
男の子はまだ10歳前後だと思うが、ライムちゃんを背に庇いこちらを睨んでいる。
その後ろでライムちゃんは慌てたように男の子の裾を引っ張っている。
「違うっ!この人は私を怪我を治してくれたの!!」
「え?」
男の子はビックリしてライムちゃんの方を振り返る。
「足を挫いてしまって歩けそうになかったから治しただけよ。じゃあ、私はこれで・・・。」
男の子が私から視線を外したのを確認して、私はさっさとこの場から逃げることにした。
「待てっ!」
男の子が慌てて呼び止めてくるが、知らん振りをしてやり過ごす。
「待てってばっ!!」
走って追いかけてくるのか、段々と声が近くなってくる。
かと言って、ここで私が走るのもどうかと思うし・・・。
でも、転移は魔道具で封じられているし・・・。
って、あれ?
この魔道具って、魔法全般が使えなくなるんじゃなかったかしら?
思わず立ち止まって、首にかかっている魔道具を見つめた。
どういう仕組みかわからないが、自分でこのネックレス型の魔道具を外すことはできない。
「待てってば!」
立ち止まってしまった私は、男の子に追いつかれてしまい右手をつかまれてしまった。
まずいと思ったときにはもう遅かった。
「捕まえた!ねえ!こっちに来て。お願い。助けてっ!!」
男の子は必死に叫んで訴える。
その後から遅れてライムちゃんも私に追いついた。
そして、空いている私の左手をギュッと掴む。
「お姉さん助けて・・・。」
ライムちゃんは大きな目に涙をためてこちらを見ていた。
二人の子供に両手をつかまれた私は、彼らに従う他なかった。
このまま助けを求めている子供を見捨てるわけにはいかないし。
「わかったから、理由を話してくれるかしら?」




