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七冊目・大草原の小さな家・ローラ・インガルス・ワイルダー 


  ローラ・インガルス・ワイルダー 大草原の小さな家




 今回は、大草原の小さな家シリーズです。

 四冊目で紹介した赤毛のアンのシリーズ同様、幼かった私が何度も何度も何度も何度も繰り返し読んだ物語です。これも期せずしてある女性の一代記を読んだことになろうか……。全シリーズを私に買い与えてくれた両親に感謝しています。


 モンゴメリの書く赤毛のアンはアン・シャーリーという空想上の主人公です。あちらとは違い、こちらはアメリカ開拓の時代に実際に生活した思い出を書き綴ったもの。その名もローラ・インガルス・ワイルダー。

 原作を読まない方にはどうしてもテレビドラマの方がなじみがあると思います。もちろんどちらもローラ・インガルスが主人公です。このシリーズも私は大好きですが原作とは違う逸話が大半です。これはこれでおもしろいのですが私はこれはなんというかスピンオフとして見ています。(ドラマは脚本ストーリーに秀作が多くこれも大好きです。意地悪な役目を担ったネリーがいるオルソン一家がいい味だしてます。勧善懲悪を知らしめるんだよね。それと家族愛と平和がテーマで嫌味にならない作品ですね。俳優さんたちも素晴らしいし私は手放しでこのドラマが大好きです。)


 また話がそれました。

 以下は作者のローラ・インガルス・ワイルダーの話です。彼女の両親がアメリカに移住してきた白人一家の初代の子供です。ローラの祖父母たちが移住者、最初の開拓者だったのです。彼らはイギリスからの移住者ではなくノルウェーからだったように思いますが記憶が正確ではありません。ローラの両親はチャールズとキャロラインです。両方とも初代開拓者の子供でアメリカ北部で生まれました。そして結婚してローラを含む数人の子供をもうけました。ドラマでご存じメアリーが長女でローラが次女、キャリー、グレイスと続きます。この設定はドラマもそのままです。


 ローラはアルマンゾ・ワイルダーと結婚して、二人の子供を授かりました。長男は残念ながら生後一か月未満で亡くなり、長女のローズ・ワイルダーだけが成長しました。つまり一人娘さんですね。年表を見るとローラは彼女を十九歳の時に産んでいます。ローラの子供、ローズは成人して作家になりました。居住地で有名人だったようです。ローズの母親であるローラが己の生い立ちを書くまでは! 

 ローラはつまり子育ても一段落して落ち着いた頃にシリーズを書き始めたのです。はっきりとした年代はどの資料も書いてないのですが大体四十歳代後半でしょう。

 ローラは原作を読めばわかりますが独身時代は小学校教師として活躍していました。アルマンゾ・ワイルダーと結婚してから農業にいそしんでいたのです。りんごの収穫や馬車を引いている写真が残っています。つまり本当に普通の農家のオバサンだったのです。

 多分娘であるローズの作家としての成功を目にし、すぐ下の妹のキャリーも新聞社に勤務していたことも大きかったのではないかと思います。自分も何かを書けば何かが残る。不特定多数の方々に活字として呼んでもらいそれが記憶に残されるのです。己と己の両親、チャールズとキャロライン、そしてそのおじいちゃんやおばあちゃんの話を書けばそのままアメリカの開拓史を綴ることになると思ったのではないでしょうか。多分娘のローズや妹のキャリー、夫のアルマンゾもローラのする昔話がとてもおもしろいので書けば? とすすめたのではないでしょうか。


 そうして書いて出版するとあれよあれよと娘の作家としての知名度を凌ぎ、当時の全米上でのベストセラーになります。大金を得て新しい家を両親に買ってあげたり、八十歳も過ぎてから賞をもらったり。ローラもうれしかったのではないでしょうか。家の仕事、家事や馬や牛の世話をしながらそれ以外の時間は全部書くことに勤しみました。シリーズは全部売れに売れ、ローラは図書館の設立に携わったり社会的な活動もしますが、基本は自分の生活を大事にしていました。だからこそ書くことに純粋に専念できたともいえます。彼女は九十歳で大往生を遂げますが今なお、小説やドラマを経て親しまれています。これもまた不朽の名作といえましょう。


 ただし、シリーズ最後の「最初の四年間」 だけはローラが書いたものではなく、娘のローズが書いたものです。この作品のみ書き方が硬く荒く、何か違う、と思っていたらあとがきにちゃんと書いていました。「最初の四年間」 という題名は結婚相手のアルマンゾが農業を好まないローラに最初の四年間だけ農業をしようと言ったのがそのまま題名になっているのです。出産後の長男の死や火事騒ぎで踏んだり蹴ったりのひどい目にあいますが、結局はローラは自分は農業に向いていると思うというのが粗筋です。

 ローズもこの作品を公表するのは自分の手がかなり入っていて母親のローラの純粋な作品とはいえないし、作風が違うということでシリーズの最後に入れることにかなり躊躇したのでしょう、初版はローズの死後です。ローズの遺品の中からこの作品が見つかったので出版されたのです。ですがこれも母親が始めたシリーズを娘が書いて終わらせる。これも一種の家族愛だと思います。


 アメリカの開拓史といえば忘れてはならないのがインディアンの話です。開拓者たちがアメリカの原野を開拓して白人の居住範囲を広げるごとに原住民のインディアンが追いやられます。作者が当時幼かった&女性であったせいかそのあたりはぼかされ、血なまぐさいシーンは皆無で書いていますがそれでもインディアンの部族が追い出されて馬や徒歩で一列になってどこかへ引越ししていくシーンが書かれたりしています。 当時の幼いローラの目で見たインディアンへの迫害もまた考えさせられます。ローラの父親はインディアンとアメリカ人との戦いが起きそうと見れば家族の安全第一でせっかく開拓した地をあっさりと捨てて新しい新天地を求めて幌馬車を仕立てて旅立ちます。幌馬車シーンもドラマでは有名ですね、私もあんなふうに旅をしてみたいとあこがれたりしました。当時の小さかったローラも保護される方だったのでいいように書いていますが実際には苦しいことの方が多かったのではないでしょうか。無事生き延びたローラはよいですが、インディアンに襲われて酷い目にあわれた話も残っていますから。

 ローラは私たちの方がインディアンを追いやっているのだと書いています。これは彼女を育てたご両親の良識でもあります。今大人になった私の目から見てもきちんと目配りの効いた文章を書かれていてやはりすごい人だとは思わずにいられません。

 果てしなく広がる開拓時代のアメリカ、自然豊かで自然を敵に味方に生きていくということはなんと酷く楽しく美しいことか。

 ローラの書いた大草原の小さな家シリーズはこれもまたアメリカが誇る不朽の名作に違いありません。





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