表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/45

二十九冊目・あっちゃんあがつく  げんあん・みねよう さく・さいとうしのぶ

  

 原案・みねよう 作・さいとうしのぶ ・ あっちゃんあがつく 


 いわゆる知育絵本です。副題が「たべものあいうえお」 となっています。つまり、楽しみながら「あいうえお」 を覚えましょうというもの。原案は峯陽みねよう、作画はさいとうしのぶ。さいとうは初版当時は絵本作家として全く無名だったそうです。最初は売れ行きもさっぱり。でも保育園や幼稚園の先生方がこの本イイヨと広めたようです。もちろん、本屋さんに勤務する絵本好き店員さんも。購入した母親も。大人が見て楽しい、と思う本ですのでもちろん、子供も見て楽しいのです。良い絵本はそういうものだと思います。子供が喜ぶ様子、親子で会話が弾む様子。みんなが食べ物をおいしそうに感じる絵本です。

この本は二千一年に初版発行。発売五十年……などの老舗本ではないけど、これからも末永く愛されることはもう確定済みな絵本です。

 実際、私の子供が夢中になって喜んで読んでいました。最初は私もこの本を知らず、保育園や幼稚園時に子供が借りてきて私も読ませてもらいました。借りてきた本は今にもばらけそうで、透明の粘着テープで補強されていたのを覚えています。見ているうちに、結局私自身も欲しくなって購入したものです。


 さいとうしのぶは、作家インタヴューによると、楽しい絵本を作りたいが、それにはまず子供と接しようと思ったらしいです。そのために学童保育の教員になられたとあります。その時に学童が「あっちゃんあがつくあいすくりーむ~」 と歌うのを聞き、これを絵にしようと思い立つ。さいとうの偉いところは作詞者をさがしてちゃんと許可を得ようとしたことにあります。口伝えだったらしく、なかなか見つからず、やっとのことで養護教員の峯陽にたどりつく。そして数年かけて作画をする。

 さいとうは子供が歌うとき、子供の名前をさがすのを実際に見ていたのでしょう。ぼくの名前ではじまる食べ物はなにかなあ、と。

「あいうえお」 はもちろん、ある。人名にも海外では結構ある「ばびぶべぼ」 などの濁点などもちゃんと存在する。「ぱぴぷぺぽ」 の半濁点もある。「を」 もある。最後には「ん」 ではじまる文面で終わる。どのような文字で始まる子供の名前も、あります。ぼくの名前がないと泣く子はいません。たとえばアフリカ系の子供の名前には「ん」 ではじまるのもあるので、これも大丈夫。

 見開きの左側は、ひらがなです。右側が楽しいイラスト。一番最初の「あ」 は、「あいすくりーむ」ですので、見慣れたアイスクリームのパッケージに笑顔の表情をつけ、手足もつけ、となっている。「あっちゃんあがつく あいすくりーむ」 です。

 次の「い」 は「いっちゃんいがつく いちごじゃむ」 です。どれもひらがなで手書きで書かれています。カタカナはいずれ覚えたらいいので、下に小さく印字されています。そして「あいすくりーむ」 の食物名部分は色を替えている。イラストの食品は、どのページを見開いても、ほっこりするような温かみのある色調かつはっきりした輪郭で描かれている。時には食品をおいしそうにほおばっている、親しみのある動物も出てくる。食品自体も皮を自分で脱ぐなど、調理や食べられる前に自分で支度したり。どれも、笑顔でおいしく食べられようと、楽しそうにしているのがいい。

 子供は順番に読むうちに、あいうえおを覚える。ついでに、自分の名前ではじまる文字を覚える。次に母親やおばあちゃん、ペットの名前をさがして覚える。濁点、半濁点もあるので、どんな名前でも大丈夫。ラストは「ん」 ですが、実はその続きもある。本当の続きは読者である子供が好きなひらがなでもって自由に作詞をするようになっている。そこのページだけ白紙になっています。空白のマルがあって、そこに文字を自由に書き入れられるようにしている。

 つまり「◎ちゃん、◎がつく、◎、、、、(と、食べ物の名前が続くようにしています)」 ですね。


 私が持っている本は、我が子が作成したものが残っています。我が子は、キーウィが好きなコだったので「き」 を選びました。ついでにいうと本編のある食べ物は「きゃらめる」 です。「きーうぃ」 ではありません。

 以下は四、五才時の我が子の作品です。文字はまだ書けなかったので私が書いています。

「きっちゃん、きがつく、きーうぃのだんす」 

 文字のとなりには、子供が蛍光ペンで描いたイラストがあります。キーウィらしい丸みのある縦長の物体が手足をはやしています。たぶん踊っているのでしょう。本の上に直接描いたものです。他のページには、食べ物のカスらしい、茶色や黄色のしみもあります。本も古びてきていますが、どこのページを開いても笑顔になれるイラストが迎えてくれる。そしてもう私の背丈を超すほどに大きくなったコ(現在絶賛反抗期継続中)が書いた例のキーウィダンスがあって私的プレミアム本。見た目は形の崩れかけた本ですが、もう絶対に捨てられぬ私の宝物となっています。

 本の中身を見れば、そして実際に子供に読ませれば反応の良さはわかる。見慣れた食品のパッケージもスプーンもフォークもお皿も現役です。子供自身やお友達の名前をさがして喜び合う。笑いあう。それを見るのも本当に保護者としても楽しいものだった。

 反抗期でぶすっとしている子供も幼いころはあんなに楽しそうに私と絵本を読んでくれたのに……ええ、もう私の育て方が悪かったのですけどね……今はアレが悪かったのか、コレも悪かったのかと反省中です。そして、疲れたときにぱらぱらとめくって、子供の赤ちゃんの時の写真も眺めて、それから寝ます。

 

 子供はいようがいまいが、どなたにでも心からおすすめしたいと思います。日本語を覚えようとする人にもいいでしょう。イラストのままの食品のパッケージを売り場で見かけて「ああ、絵本にあったわ」 となる。日本旅行のお土産にもどうでしょう。

 本作以外にもさいとうしのぶの作画で「しりとり」「十二支」「おつきさま」 本も出されているので要チェック。

 最後に自作を。

「ふ」 っちゃん「ふ」 がつく「ふ」 じたごうらこのだいえっとちょこれーと。

 ……いや、今糖質制限用のチョコレートが手元にありますので……す、すみません……なんのひねりもない一句で終わります。それでは失礼します。










評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ