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十九冊目・予告された殺人の記録・ガルシア・マルケス

     ガルシア・マルケス    予告された殺人の記録     



がるしあまるけす……呪文のような人名

がるしあまるけす……どこかで聞いたようなお名前

検索してみるとノーベル文学賞作家ですか、いいなあ

私はがるしあまるけすを古本屋で入手した

予告された殺人の記録……題名もいいねえ

これを百八円で入手した私はツイてるわ、

と連呼すると、どなたかが怒るかも

私にとって本の世界は遠い世界の別世界


それでは本腰入れて読みましょう

作家なら読者が安い値段で買えたぜと喜ばれるよりも

最初から最後まできちんと読まれる方がうれしいはず

だから値段のことは忘れてね

活字になって本になった作品はいつでも読者を持っている

読者を引き込む作品は強いのよ

この作品がまさにそうだった

私はがるしあまるけすに引き込まれたわよ


でも感想を書く前に道草をくうわ

恒例の前書きがないと書けないからね

私は物語は何でも最後から読むの

ミステリーでも童話でもなんでも後ろから

予告された殺人の記録で、がるしあまるけすはこう書いたの

この物語のラスト一ページ、この文章が目立つ


「おれは殺されたんだよ、ウェネ」


ほおっ


私は急いでその前後の文章を追う

そのセリフを吐いた哀れなさんでいあごなさーるは

己の腹から全部はみ出てきた腸を落とすも、すぐに拾い上げる

己の腸についた泥を手で払う

その時彼は大きく目を見開いていただろうか、それとも伏し目がちだっただろうか

きっと寝ぼけたような、半眼の状態ではなかっただろうかと思うがね

いいねえ、いいぞ

その情景が目に浮かぶ

肩を落として自分は死ぬんだという男が多分何も考えずに

反射的に泥を手でのけたことに奇妙な感動を覚えたわ

その男の手だってすでに己の血と体液まみれだったろうに、泥を手で払ったと

これはクル、と思った私はもう一度ラストページを読む


おれは殺されたんだよ、ウェネ

おれは殺されたんだよ、ウェネ


ほらやっぱりガーンときたわ


では、出だしはどう? 

私はページを繰って本に向かって右側を薄くする

最初の一言は

「自分が殺される日、サンティアゴ・ナサールは」

よしよし


最初が「自分が殺される日」 

ラストの言葉が「おれは殺されたんだよ」とな。

結んでひねって輪になって、

最初と最後がつながれている。

これはメビウスの輪だ。

やっぱりガーンときてジーンときたわ。


ノーベル賞の勲章がなくとも、極端な話、無名であってもこれは、私は読むでしょう。ノーベル賞なんか単なる権威という漬物的記号であって、結局読む、読まないは私の人生の中では私が決めることなのです。がるしあまるけすがいかに畏れ多くとも、そんなものです。

中身を開いてみれば異国的な響きのある人名連呼並びに文章から湯気が立つ。

ねっとりと繰り返される暑苦しい描写、かつ死に至るまでの本人の様子を淡々と描くしかも順番が前後して時系列がぐっちゃんこ。気短なおこちゃま向けではない作品。

視点を変えて方向を変えて書き方を変えて、それが暑苦しいというのよ。

普通の書き方をすれば、面倒なので誰も読まない。そんなもの読む気にもならない。

それなのにそんなものを夢中で読まされるのってすごい。

それが嫌味にならないなんて、すごい。


修羅場であってもどことなくユーモアをちりばめて

二人がかりで刺されていても誰も助けはこないのだよと

ラストは哀れなるさんでいあごなさーるは、自分の腸を持って歩く

無我夢中歩行にて家の周りをぐるぐると歩けるの

しかし、おいこらがるしあまるけす、ちょっと待てやこら

数ページ前の検視報告で肺にも刺し傷ありとあったぜよ? 

理論上人間は肺を刺されていてそんなに距離が歩けるものかうそつき

でもそんなことどうでもいいやと思わせる筆力

些細なミスは大いなる壮大なるテーマに吹き飛ばされた

そう、これはリーダビリティがあるのよ。ありすぎよ

それ、今の私が欲しいもの


肺を刺されてもなお、

腸を持って歩き、

腸をほこりっぽい地面に落としてもなお、

土を払う余裕あり、

さあ連想コーナーへ。

私はナチの悪行の一つを思い出したわ。


アウシュビッツで収容されたある神父さんがナチに言ったの。

今から私が切り落とされた自分の首を持って走るので、

他の人の命は助けてやってくれ。

そんなことできるものか、ナチは笑ったし、同室のユダヤ人ですら

そんなことができるものか、助かるものか、と思った。

だけど彼はやった。落とされた自分の生首を持って走ったの。

首を斬られた鶏がしばらく走るように……彼は走ったのだろう。

信じるのだ。

それができると信じるのだ。

私は腸を持って歩くシーンでこの話を読んだ記憶が蘇ったの。

文面を読んで読者に記憶を掘り起こしたり、連想もさせることができる話は秀作よ。

スピンオフが作られる話も秀作よ。


そう私はこの話のスピンオフを作ったわ

さんでいあごなさーるが自分の腸を持って

なわとびができる話を作ったわ

これね、どうかしらね

私ならついでにもうちょっとだけ脚色するわ

さんでいあごなさーるの気を狂わせて腸を、特に小腸を引っ張り出させて縄跳びをさせるわ

大丈夫、できるわよ。多分ね

だって小腸の長さは七~九メートルもあるのよ、腸粘膜を丁寧にナイフで斬って広げたらね

まあ緊急事態では広げさせる必要はないか

このあたりは筆の実力があればいけるはず

私なら縄跳びさせてそれから笑わせる……大声で

それから思い切りすすり泣きをさせてから死なせるわ

彼の死に顔は薄ら笑いをしているのよ

死後硬直がすすむにつれて、それはピエロのにやにや笑いに進化する

歯もむき出して、目も飛び出して、額にも血管の怒張による網目模様が出るの

死はやすらかでなく

死は尊厳のあるものではなく

どなたにもひょっこりと訪れるもの

さんでいあごなさーるは死体を見たがる皆に印象付けられる死を迎えた


そうよ、かわいそうな、さんでいあごなさーるは自分のやぶけた腹部から飛び出た腸を持って歩いたの

腹圧というのがあるので、いかに力持ちでも一度飛び出た腸は戻せない

やるなら外科医を呼んで閉じさせるしかないよ

さあ、さんでいあごなさーる。かわいそうなさんでいあごなさーる

頭大丈夫? そう、歩くの

いいねえ

どんな旅芸人だって血と人糞と汗と湿度を伴った己の腸はもって歩かない

誰も見ないけど、一度見たら誰でも必ず二度見てしまうことをしでかした

それをがるしあまるけすが、書いたのだ

それみろ

それよめ

途中で他の事はさせんぞずっと読んでいろよ

夢中で書いたに違いない


いいねえ!

みなが見る、見たがる小説を書けたらねえ!

みなが読む、読みたがる小説を書くのだ!

それが読まれる小説でそれこそ書いた意味があり存在意義があるというものよ


あわれなさんでいあごなさーる。

彼は実在した。

がるしあまるけすはもう一人の彼を己の小説に閉じ込めた。

そして腸を持って歩かせた。物語ではそれが真実になった。

素晴らしい真実に。

小説の中で臨場感を盛り上げる真実に。

脚色が真実になる。

がるしあまるけすが死んだ彼に腸を持たせて歩かせているのよ、ねえ?


がるしあまるけすの手により、未来永劫語り続けられる死を更に与えられた

さんでいあごなさーるはページを繰る読者の脳裏で律儀に

腸を持って歩くシーンを読者それぞれの想像力にあわせて

回帰する。時には恐怖をもって時には笑いをこらえて

本の中に閉じ込められたさんでいあごなさーるは

殺されつつある話の中を永遠に泳ぎ、最後には腸をもって永遠に歩く

とぼとぼとね……かわいそうにかわいそうに

でもあなたは小説の中で書き起こされて小説の中で実在して生き続ける

それが幸せか不幸か、多分大いなる不幸だろう

がるしあまるけすはそういう意味では愚かで残酷な男

読者にさんでいあごなさーるの死に至る世界を永遠に見せる


皆が皆、殺人にぼんやりとかかわっていた

それを強引に納得させるのががるしあまるけす

それを文学にしたのががるしあまるけす

私はもうお星さまになった彼に尊敬という形のない心を差し上げるわ

私は百八円でがるしあまるけすの作品を買ったけど、

お値段以上のものを、がるしあまるけすからもらったわ

とても良い買い物をしたわ

読めば、がるしあまるけすはちゃんと仕事したってわかるのよ

そして書き上げた後の作家としての誇らしさも容易に私は想像できるのよ

がるしあまるけすはこれを書き終えた時に達成感を持ったに違いない

少しずつ時系列がずらした歪んだパズルが最後にはまった時にね

これでよいと思ったに違いない

だから皆に認められてノーベル文学賞もらえてよかったね

あなたは認められたのよ、よかったね

がるしあまるけすはもう死んで過去の人だけど、ちゃんと作品は生きている

良い人生よ、あなたは文章で人生に勝ったのよ

誰にだい、と私に聞かないで。でも作家志望の人ならわかるよね

おくればせながら、受賞おめでとう、がるしあまるけす

数十年後には私も人間なので死ぬでしょう

同じ天国に行けて顔をあわせることができたら、私はあなたに声をかけるわ

私はあんな暑苦しい文章がかけてモノにしたあなたのことを尊敬するよってね

だけど先に死んでいたさんでいあごなさーるには天国で出会った途端

殴られただろってね

がるしあまるけすは苦笑いをするだろうね


」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」


わかってんだよ、身の回りの体験に渾身の脚色つけて小説という売り物にしたのだから

小説に芸術に昇華したからってそれがなんだい

そういう栄誉に関係ない実在の関係者からは恨まれるってことをね


名誉の殺人をしたと公言するビカリオ兄弟は?

殺すために殺しましたとクソ名言を吐いたビカリオ兄弟はどう料理するの?

(多分がるしあまるけすはこの文章を書きながら背中をいつもより丸めて

書くために書きましたとつぶやいていたに違いない)

その後、ビカリオ兄弟は気がふれるってのはどうですか

気がふれるってのは、一種の逃げですか、特に小説上ではそうでしょうね

パブロ・ビカリオ、そしてペドロ・ビカリオ

しかも双子とな

ここまでいくと、凄惨な殺人事件が一気におかしみのあるギャグになる

実在の事実らしいがギャグになる。がるしあまるけすはそこをわかっていた

事実なのに事実がギャグになる

皆が知っていた

ビカリオ兄弟が殺すのを知っている

ビカリオ兄弟は殺人を止めてほしかった。しかし止められなかった

一度見送ったがそれでも結局は殺人した


私は昔どこかで読んだ象を殺す短編を思い出した

連想コーナーその二、スタート、あらすじを書くわ

あるイギリス人が昔の未開地で銃を持ったが

象がいるときいて見学に行く。見物人がぞろぞろとついてくる

いつのまにかイギリス人が象を殺すことになっていた

イギリス人はそのうわさに驚き、うわさ通りのことをしないといけないと思う

衆人環視の中で象を撃つ、象は死ぬ、うわさは無事、成就した

めでたしとな

これも名作

これに通じる感覚をあの双子は持ったに違いない

ひくにひけない名誉のために

このあほくさい名誉のために


その元凶のアンヘラ・ビカリオは知らん顔。いやそうでもないか

結婚式の直後に突き返される女

彼女はどう料理しましょうか

そして処女を尊重するメキシコの風土、

初夜の翌朝、集まるご近所さんにシーツを広げ

破瓜の証拠を見せびらかさないといけない

破瓜の赤いシミは幸せの象徴

そこからごく普通のありふれた夫婦が誕生する

しかしこの話では殺人が始まる

アンヘラ・ビカリオは抱かれてがっかりされた夫から

聴かれるままに思いつくままにさんでいあごなさーるの名前をあげる

一体どんな気持ちだったのだろう

事実、さんでいあごなさーるは女には手が早い方だった

作中では早いところでそれが明かされている

アンヘラ・ビカリオはそれをいつ、知っていたのだろう

しかし少なくともさんでいあごなさーるは彼女の相手ではなかった

さんでいあごなさーるの名前をあげたその真意は……


しーらない、しらないよ


がるしあまるけすはほくそ笑みながらわざと書かなかったに違いない

やあやあやあ、私は笑う

地獄の草葉の影にいるがるしあまるけすに言う

ほんま、うまいねあんた


さんろまんはその戯言を信用し家族もそれを信用する

そうして双子の兄たちはさんでいごなさーるを殺す準備をする

そこらへん、全員がバカですね

なぜアンヘラ・ビカリオの言い分を全部信じるわけ?

でも事実がそうだったからそうなるんだよ

がるしあまるけすはきっとペン先をインク壺に勢いよくつけて

大急ぎでつづったに違いない

理由はどうでもいいんだ、殺人の記録を書くんだ

腸をもって歩いたんだ、彼は腸を持って歩いたんだ、腸を持たせるんだ。

いいぞ、いいぞ

ラストはこれ

筆が走るぞ


結局アンヘラ・ビカリオの相手は誰だったの

がるしあまるけすのずるいあざといかしこいところは

そこを全く書かなかったこと

どうでもいいことは、どうでもいい

だから紙面を割かない

事件後アンヘラ・ビカリオのさんろまんへの恋が始まった

不条理な真実は小説の事実を上回る。これは書いてあげようではないか、と

がるしあまるけすは片頬をあげたに違いない

かようなこだわりに粛々と言葉をつづりクライマックスになって

殺人シーンをねちっこく書いて殺させる……

アンヘラ・ビカリオの言葉を受けて皆が信用し殺されることを確信し

殺されるだろうとわかっていたさんでいあごなさーるも逃げない

いや、逃げようとしたが逃げ方が甘いよなんだこれ

しかも偶然が重なってドアが開かない

開けてくれ、母さん

おおドラマだよ、ドラマになったね、と冷静に書き綴る


身体を伏せて二人がかりで刺されながらブタのように殺されつつも

さんでいあごなさーるはその土地から逃げることをしなかった

さんろまんは、単なる狂言回しだ。彼は最初から最後まで町の人間ではなかった

だから花嫁を返品しても咎められない

本来ならば、殺す役目ははさんろまんがすべきものだし、逆に

誇るべき美しい妹に哀しい思いをさせたとさんろまんが双子にぶち殺されても

おかしくはないのに

またさんろまんが双子の義理の兄から脅されてそのまま嫁にしてしまうことも

物語としてはありえるが事実はそうでなかったのだ

だが処女崇拝の強き暑苦しきメキシコの夜

スペイン語とアラビア語が一家族で飛び交う家庭

彼らの生きる世界では読者の持つその常識は遠く及ばすつながらず

それでもこれはこうなってこうなるのだと最後には

さんでいあごなさーるは腸を持って歩いて死す


おれは殺されたんだよ、ウェネ


そのウェネの正式な名前はウェネフリーダ・マルケス

がるしあまるけすのマルケスだよつまりマルケス家の人間だ

あとがきにはがるしあまるけすの叔母だとある

そのうえ、がるしあまるけすは実在の被害者や加害者とも顔見知りで遠縁でもあったと

作品を書き上げて発表しようとしたら皆に止められたという

それはそうだろう

発表を数年我慢したあとがるしあまるけすは世の中へこの作品を放つ

さあどうだい、私の作品は?

その名も予告された殺人の記録

私も出てくるよ、出てくるのだよ、とっても書くのは楽しいよ

時刻も年代もページによって違うけどさんでいあごなさーるの死を最後に

ぴったりあわさるように書いたよ


お見事、がるしあまるけす

ノーベル賞受賞だよ、尊敬に値するよ

それで家族と事件の関係者は作者のあんたに礼を言ったかね?

あの殺人事件を小説に書いてくれたありがとうと言われたかね?

感謝と尊敬の微笑みをもらったかね?

いやあそれはなかっただろう

たぶん冷笑を浴びたか罵声を浴びたろう

だがそこを離れれば賞賛の嵐

それを確信していた

だからこそ書かずにはいられなかったのだろうね

偉大なる、がるしあまるけす


またまた戻ろう

アンヘラ・ビカリオはその後幸せになったのだろうか

否、彼女は数千通の手紙をさんろまんに贈ったが

読まれもしないことがわかる

哀れなアンヘラ・ビカリオ、彼女は捨てられてからさんろまんを愛した

捨てられたことに人生の負の烙印を押されて

だが老いたさんろまんは彼女の元に戻る

封切られてない大量のラブレターと共に

それから二人は幸せになったのだろうか

しかもそれが書かれたシーンの場所がよりによって

さんでいあごなさーるの殺人シーンの前

憎いね、話をそこに持っていきつつ

クライマックスの前に死後のエピソードのそれを書くのか

もし発表時にアンヘラ・ビカリオが存命していたら彼女はなんと言ったのだろうね

多分黙って床にツバを吐いたに違いないと思うけど

そこががるしあまるけすの陰湿で偉大な作家たる所以だと私は言うのだよ


この日本から置く離れた異国の結婚式、日時は大昔

過ぎ去った大昔を圧縮して読者の頭で解凍して展開して見せる

いや魅せてくれる

普通なら死んでからの解剖の話が途中にはさまりうそつき女の

アンヘラビカリオのその後のあと、さんでいあごなさーるの

屠殺現場中継みたいな文章を書けば誰も読まない

それを小説に仕立てて全世界の人々に読まれるというのは

がるしあまるけすが組み立ての天才だから




」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」


おまけの話。

題名、予告された殺人の記録スピンオフ劇場ラストシーン


ケンシロウ、さんでいあごなさーるに向かって指を指す

例の決めのポーズで

「お前はすでに死んでいる、己の腸を持って歩く必要はない」

さんでいあごなさーる

「俺は殺されたんだよ、上根」

ケンシロウ

「待て、上根とは誰だ?」

さんでいあごなさーる

「……」

ケンシロウ

「シンダカ」

さんでいあごなさーる

「……」

舞台上手からやっと死体を見つけた人の悲鳴が聞こえる

ケンシロウはすでに去った。あとには永遠の謎が残る。

そこへニワトリが二羽来てさんでいあごなさーるの腸を二センチほど動かしてついばむ。

犬が吠えだす。二匹、三匹と増える。

メキシコなのでハゲタカも上空を旋回しつつ事件現場にやって来る。

カラスが日本語で「アホウ」 と発音で合唱しだす。

途中でホイッスルヴォイスに変音する。

演出家はこれをアホウコーラスと名付けた。

アホウという命名にライバル劇団「安房」 が名誉棄損だと告訴してくる。

劇場のホームページは炎上した。この逆宣伝が効いて客入りは満員御礼。

ほんとに舞台化されたらいいな。


副題

「彼はどうやって己の腸を持って百メートルを歩くことができたのか」



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