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十四冊目・「引き寄せの法則」 ウィリアム・W・アトキンソン (林陽・訳)


この本の著者略歴は以下のウィキペディアを参考にしています。

↓↓↓

https://en.wikipedia.org/wiki/William_Walker_Atkinson


ウィリアム・W・アトキンソン 「引き寄せの法則」 (林陽・訳)


 さてこれも押しも押されぬ大ベストセラーです。ご存知の方も多いかと思いますが、知らない人もいるはずです。ここでいう「引き寄せ」 は、己の望む環境や事象を文字通り己の意思で引き寄せましょうという良いことづくめの本です。この考えはニュー・ソートと言われています。ニューは新しい、ソートは思考ですね。(英語で書くと、New Thought)

 実はこの本の初版は百年以上も前の話。日本でいえば明治時代にすでにアメリカで出版されていました。それ以降もロンダ・バーンなど大物たちがこの類(ひとくくりにすると偉い人達から怒られるかもしれませんが、一応ニューソート分野にさせてください)の本を出していずれも現在に至るまで根強い人気を博しています。子引き、孫引きの流れを汲んでより優しく理解できるよう、わかりやすくそして甘くかみくだいて教えている本も数多くあります。大きな書店へ行くと良い場所の棚の一角を占領しています。男性向きならば「お金や地位、良い女? を引き寄せよう」 女性向きならば「思い通りの理想の恋人や結婚相手を引き寄せましょう」 とまあそんな感じです。

 そのわりには精神医学や心理学、宗教学側からみた詳細な分析本が見当たりません。体験本や体験サイトはたくさんあるのに、実証的な根拠を書いた本がない。それぞれの願望がかなったと感じるのはその個々の心が決めることだからでしょう。見てこうなりました、というデータが出ないので根拠もなきに等しい、だけどそれは「ある」 のだ、ということでしょうか。

 書いた通りです。引き寄せは誰でもできて皆が幸せになると普遍的に知られてきている割には懐疑的な本などはない。かつ政治学や他国のありよう、文化的批判などはまったくない。またニューソートに対して過激に反論する人もない。これは全般的に非常に珍しい現象ではないかと思います。実践するにしろ、しないにしろ、必要なのは書籍代だけであとは己次第というのは、クレームのつけようがない。本が書いてある通りのことをしたのに、願いがかなわなかった。そういう人もいるでしょう。しかしその人がいかに凄腕のクレーマーだとしても詐欺だと騒げないのです。それに現実にやってかなったとしても、かなわなかったとしてもそれによって、他人が困ることは全くない。

 この二つは大きな意味があります。

 すべての根源は己の行動や思考から来る……まさにこの思考は新しいもので私は一読して新鮮な衝撃を受けました。副題そのものがこの本の本質をズバリ表しています。それこそ「すべての願いが現実になる」 のです!

 主語がないけれど、これを見た人は全員「わたし」 という主語を勝手に脳内につけて手にとり「これで私の願いはすべてかなって現実になるのだ」 と思って購入したのでしょう。

 ベストセラーになるのも当然な本。一体この本を記したウィリアム・W(ウオーカー・アトキンソンなる人物はどんな人だったのでしょうか! 彼はどうやってそういうニューソートといわれる哲学を思いついたのでしょうか。こんなすごい思考をするなんて天才ではないか? ノーベル文学賞モノではないか。それでも文学賞とかには縁がないよね? どうしてだろうか? 私は興味がそっちの方へ行ってしまい、わくわくして調べました。すると驚くべき話がぞろぞろと芋づる式に出てきました。


 実は新しい思考=ニューソートと言われてはいても、根源的なその思考はなんと古代ギリシャから出ています。古代ギリシャは超大雑把にいうと古代ローマ時代よりも前の時代です。当然イエスキリストが生まれる前のBC紀……紀元前1400年ごろ。古代ギリシャの中の古代アトランティス時代にすでに占星術が完成されていて、そのリーダー格にヘルメス・トリスメギスタスという偉大な哲学者がいました。その人がそもそものニューソートの源になっています。

 このアトランティスというのも大きな謎に包まれた時代で大いに想像力を刺激してくれますね。そんな大昔にはすでにニューソートができていた……? これはすごい話です。そのヘルメスは今でいうニューソートを「エメラルドタブレット」 という希少な石に刻んだのはいいですが、時の権力者? などから異端視され歴史上から消滅したわけです。しかし偉大なヘルメスには支持者が当然いてその考えをまとめた書物を「キバリオン」 と名付けました。ヘルメス曰く、元々宇宙には七つの法則があり、その中の一つにすぎないものに「引き寄せの法則」 が存在するといっていたわけです。

 当時の権力者? からは異端視されるのも道理です。権力を発するには、いいなりになる奴隷もしくは信奉者、国民が必要です。王家や権力を畏怖せず、己の欲望は己が望めばかなうし、己の世界は己が作れるという思考は、時の権力者にとっては邪教のなにものでもないでしょう。時代くだって宗教がいくつもできても、その宗教は大体において創始者をあがめよ、創始者にすべてをゆだねよ、というものが多い。そしてそれにいたるまで弟子、先達は人々を導くべく厳しい修行を積んでいます。

 ゆえに迷える子羊には「引き寄せの法則」 を含むキバリオンとやらは、は必要ない……そういうわけです。



 アトキンソン本人は、このキバリオンの根底の思想を学んでいたはずです。誰に? どこから? アトキンソン自身の伝記も伝聞もないので皆目不明です。本当に不思議な人物です。十五歳で彼はすでに食料品店に働いたものの、勉強に励んだのでしょう。三十代で弁護士になっています。その時に大病をしたときにはじめてそのニューソートの根源に触れたようです。百年前以上の話です。彼は己に意思によって病気を直した、直せたと確信したのです。触発に導いた人物はおそらくヨガなどをしていた人だと推測されます。同時に引き寄せの法則を書いたときにはオカルティスト、フリーメーソンであると公言していたようなので大病前後にそれらとの接触があったに違いありません。

 結果として彼は百冊以上の書物を表しました。しかも初期の頃は著者名が本名ではありません。セロン・Q・デュモン、もしくはヨギ・ラマチャラカというペンネームです。どちらの名前も当時のアメリカ人にとって異文化を思い出させるペンネームをつかっています! ヨガの本が多いですね。元々持病があって、ヨガにのめりこんだと同時にニューソートに触れることができたのでしょう。また同時にこの健康志向を世の中に広めようという意思のある人だったのでしょう。その経緯も書いた書物がないので謎に包まれています。

 後世に残るこの「引き寄せの法則」 という書物は晩年近くになって本名で出版されています。


 この本すら心理学的に異端視されたのは実はこの引き寄せという思考そのものによります。おもしろいことにアトキンソンと精神分析の創始者のジークムント・フロイトはほぼ同じ時代に生まれています。接触あったのかなあ?

 もしお互いの本を読みあっていたらおもしろいですね。アメリカ人でベストセラーを生み出したややオカルトが入ったアトキンソンとオーストリアのフロイトはどっちも周囲から変人扱いされていたのではないかなあ、と思います。大いに想像力を刺激してくれますね! また話がそれました。すじを戻しましょう!

 宗教上のいろいろな神に頼らず、宇宙という漠然としたものと己の意思で人生を思いのままにしましょうというニューソートはそれを読んだ全員に強い印象を残したに違いありません。

 しかも当時の出版物の表紙を見ると人の手の中に目があるデザインです。アメリカ紙幣のあの目、ピラミッドの上の目……そう、フリーメーソンですね。アトキンソンはフリーメーソンメンバーであることは隠していなかったようです。

 今でこそフリーメーソンは高須克也(大好き)の気さくな印象で皆に親しまれているようですが、当時はどうだったのだろうか。禍々しい? うさんくさい? さあどうでしょう。まじない的に思われていたのかもしれません。この辺りもまた想像の余地がたくさんありますね。

 隠されていたそのニューソート、引き寄せの法則は宇宙の七つの法則の一つに過ぎないというキバリオン。それが現在のこの世に爆発的に広まり、庶民の私にも隠されていた宇宙の奥義とやらに触れることができる。

 今、どうしてこの時代に? 世の終末が近いから? 逆に未来志向は己志向だから? コンピューターの普及で逆にコンピューターがないと世の中が上手く機能しないようになったこの時代にですよ。私には人口知能の革新的な向上がありそれと無関係ではないように思えますがさてどうだろうか。













この本が私が気に入っているのは感謝の大事さを伝えているからです。それと善い行いも大事であると。つまり引き寄せの法則は根っからの悪人には使いこなせんぞということです。アトキンソンもまた世の中を良くしていこうという善人であったと私は思います。以上、書物にも出会いがある。この出会いに感謝すべき一冊だと思って書きました。



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