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十一冊目・3P・トリオリズム 叶恭子

  叶恭子著・3P/トリオリズム


 皆さんには過去読んだ本の中でこれがよい、よかったといえる本はあると思います。私もたくさんあります。心の中に残る本は、それぞれが大切にすべきです。今回あげる本もまた私が大事にしている本です。

 今回は叶姉妹のお姉さんの方、叶恭子さんの本を取り上げます。いわばタレント本という範疇に入ると思います。この本は文豪が書いたお手本になるようなストーリーや描写の素晴らしさをあげる作品ではありません。しかしながら書かれている内容が創作にしろ架空であるにしろ、著者である叶恭子の人生論が世間の大多数の人々が信じている一般的常識を上回っていて、かつ、それを事実として世に出すこの行為こそが素晴らしいと思うのです。

 叶恭子は過去何度か本や写真集を出していますが、それはもちろんタレントの副業といえましょう。

 彼女は作家ではありません。タレントさんとしての位置づけはセレブ美人。確かに美しいですね。アンチファンからは、サイボーグ美女となどと言われているのも私は知っています。その真偽については私は興味がありません。

 私は叶恭子の国籍不明の謎めいた雰囲気を好みます。公式では年齢は発表されていないのですが、彼女は熟年の私よりも年上のはずです。しかしながら誰も熟女とか、シニアの言葉は使わない。どういう言葉を使っても年齢をにおわす世俗にまみれた言葉は、叶恭子には不釣り合いだからです。その謎めいたルックスに似合う本を書かれたのが本作です。

 タレント本といえば、ゴーストライターがいるのは周知の事実です。この本もまた、ある程度文面を整理する補助的なゴーストライターはいたかもしれません。万一そうであったとしても、根本となるストーリーはもちろん叶恭子の経験でしょう。だからトリオリズムは、叶恭子が叶恭子たる本なのであります。叶恭子でなければこういう本は書けないし作れない。

 このトリオリズムは二千六年に初版が出ています。発刊以前の昔から現在もなお、叶恭子らしい言動がそれを上回り今改めて読み返しても魅力ある本となっています。


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 内容について言及してみましょう。

 叶がつきあう富豪と言われる人々との恋愛話はまるで雲の上の別世界です。どうやって知り合えたのか、それは「視線」だと叶は言う。逃げも隠れもせず、堂々と言いきっている。私は、絶句してページを繰るだけです。

 唖然とする言葉の連続です。これは読まないとわからないだろう。少なくとも私は一笑に付すことはできなかった。

 

 例えばこの一文、第六章のお題です。

「財力には一瞬で愛を生んでしまうパワーが宿っています」


 そうなんですか、ここまで言い切れますか。

 私はこの章を読むごとに、ため息がでます。


 世の中お金なんですね。お金持ちって凄いですね。財力さえあれば、叶恭子を感動させ、叶恭子から宝石のような涙を流させて、叶恭子からディープキスをしてもらえるんだ。

 マネーツリーがあれば、それを作った男性の性格は関係ないのですか、などと種々の下世話な文句も出てくるには出てくるのですが、話が私の乏しい知識のナナメ上をいくので呆然とするだけ。

 セレブだけの乱交パーティーに行った話も出てきます。(そこでは仮面舞踏会なので叶はこの本では全裸で踊るだけだったと明記しています)

 こういう普通の生活をしていれば聞くことのない話のオンパレードです。ここまでくると、事の真否、是非、良いの悪いの関係ないです。

 叶が経験して実地に学んだことは、叶にとっては真実なのです。


 私は同じ地球に住んでいながら、叶=全く違う理論を持つこの美しい美女に反論なんて出せません。

 逆に「あなたほどの美女となると、そうなってくるのだろうね」 と感嘆してしまうのです。

 そう、叶恭子は一般的な常識というものが通じない女性なのです。ここまでくるとね、さすがに。

 一般的な常識や、ものの善悪なんか関係ないのです。


 美しさとしたたかさ、そして財力もある。

 叶は好みの若い男は「グッドルッキングガイ」と言う。直訳すると「美しい見た目の良い若い男」という意味です。しかも叶が言いよるのではなく、叶が若い彼らをも悩殺するのだ。

 そうそう、彼女の愛する論理も単純明快です。彼女に愛される資格を持つ条件を書きましょう。

「ルックス」

「資産状況」

「無償の愛」 

 上記三つのうち、二つ以上を満たしていることです。

 グッドルッキングガイは、お金持ちではないだろうが、「ルックス」「無償の愛」があるから叶のお眼鏡にかなったのです。だってその彼らもまた叶に惚れて、愛のあかしに叶恭子の名前にちなんだタトゥを入れるのですよ。

 先に書いた叶の好みの容姿でない大富豪は、「資産状況」「無償の愛」をクリアしていたので叶のお眼鏡にかなったわけです。ある種の男性にとっては、叶はそれだけの魅力がある女なのです。

 つまり、私の知り得ぬ恋愛の世界がこの本に詰まっている。

 そう叶恭子は稀有な女なのです。これは一般的なタレント本の範疇を超えていると思う。

 世界中の富豪と贅沢を知り尽くしている叶だからこそ、この本が書ける。


 表題になるトリオリズムの話はラストの方に出てきます。はっきりいって3Pですね。これも私の知り得ぬ世界ですが、あるのだろうなと思っています。性愛には正解なし、正道なしともいいますから、これはこれでアリなのでしょう。

 私には縁のない世界を垣間見せてくれただけでもよかったと思っています。


 叶恭子が男女問わず根強い人気があるのは、彼女の理論が世間的な一般的常識と乖離してはいても、ブレを感じないからです。

 私はこうなのよ、と言い切る強さがあるからです。また他の女性に対する優越感や劣等感などみじんも感じさせない。多分興味がないのでしょう。だから書かない。そういうところも好感です。

 かといって独善的なナルシストではないのも読んでいるとわかる。読者に対して、年齢にせまる老いへの恐怖や将来への不安も全く感じさせないというのも叶のポリシーではないだろうか。

 それもまた叶恭子の素晴らしいところではないだろうか。






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