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ひねくれ魔術師とひねくれ勇者の冒険譚  作者: 渡辺 佐倉


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宿屋

「アンタってほんと、馬鹿よね」


 ユナが心底馬鹿にした口調で言う。

 いや、その……、もごもごと言い返そうとするが上手くいかない。


 実際、あの人形の機構のことで頭はいっぱいだったし、他の誰かが自分をどう見ているかという視点がその瞬間綺麗さっぱりと抜け落ちてしまっていた。言い訳のしようが無い位、多分俺は異様だっただろう。


 いつも異様だと言われるのだから、さっきの俺は相当異様だった筈だ。


 おずおずと進み出てきたのは、服装がしっかりとしていることから恐らく街の顔役というやつだろう。


「あのう……、これは」

「ああ、催眠魔法の使える刺客だったようですね。

大丈夫、魔術師も今は私の力で正気に戻っていますし、そこの魔王軍の手先は完全に破壊しました。

各地に色々なタイプの刺客が送り込まれていることは別の勇者からの連絡で分かっています。

至急の調査が必要と考えております。

残骸の回収と、解析を行いたいのですが場所をお貸し願えますか?」


 流れるように言う勇者に顔役は、一瞬見惚れたようになって、それからハッと気が付いたみたいになった。


「今日お泊りの宿屋に手配させましょう」


 元々であろう、人当たりの良い笑顔でそういうと、アルクも人の良い笑みで「ありがとうございます」と返した。



* * *


「二人に連絡はつきましたか?」


 宿に着くと、ナタリアが心配そうに聞く。

 連絡用の魔石は沈黙したままだった。これは、相手が通信に応答しないというより魔石自体が破壊されて消滅している感覚に近い。


 魔石をわざわざ破壊する理由なんて、一つしかない。


「連絡はつかないけれど、多分二人は無事だと思う」

「何でわかるんですか!?」


 ナタリアが俺に掴みかかる勢いで聞いてくる。


「魔石自体が機能を停止しているから」

「それは、魔族に破壊されたという事じゃ……」

「まさか、あり得ない」


 魔石は貴重品だ。あの二人に何かがあって魔族が接収したとしても存在自体は無くならない。

 追跡防止のため、術式が解除される可能性はあってもこんな風に術式毎魔石が消滅した反応にはならない。


「そもそも、あの魔石は通信用じゃない。

急ごしらえで通信ができるように魔術をかけてはあるけど、本来は別の目的に使う魔石なんだ」

「通信用じゃない?」

「ほら、俺、連絡を取り合いたい知り合いとかいないし」


 俺がそう返すとナタリアは微妙な顔をした。


「あれは本来攻撃用に、俺の魔力を込めているやつだから。

それが消滅したってことは、理由は明白だ。

本来の目的で魔力切れまでつかったんだろう」

「じゃあ……」

「少なくとも俺らのところに来たのと同程度ないし、それ以上ある程度まではそれで何とかなるだろう」


 はあ、とナタリアが息を吐く音が聞こえた。


「多分連絡が付かないだけで、二人は無事だと思う」


 アルクの方を向く。


「なあ……」

「駄目だ」


 アルクはこちらが提案をする前に却下する。


「使役している精霊を飛ばしたいというのだろう。

悪いが今日は駄目だ。ただでさえ、お前は街の人に不信を持たれてるんだぞ。

こここで、訳の分からないものを召喚してどこかへ放ってみろ。

魔王と内通していると思われるぞ」


 ぐうの音も出ない理由を述べられて、思わず黙る。


「明日、朝一番に街をでる。

それから、精霊でもなんでも飛ばして確認すればいい」


 それまでに、それの確認作業おわるのか?と聞かれ馬鹿にするなと笑い返す。

 恐らく数日以内に魔術人形が出現した場所に正式な調査チームが派遣されるだろう。そこに引き渡すため、人形の持ち出しはできない。


「一晩あれば何とでも」


 俺が答えると、じゃあもう今日は寝ようという事になった。



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