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【完結】魔王様リバイブ! ~美少女魔王と始めるエンタメ迷宮運営ライフ~  作者: お芋ぷりん
第5章 闇に葬られた真実

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第6話 クロエの夢

 




「これで私の昔話はお終い……どう? 幻滅したかしら?」

「――――」


 ハルトは激しい怒りを覚えていた。


 そして何故か。


 それ以上に、途方もない()()()が心に巣食っていた。


(なんだ……? この胸の冷え込み様は。ハルクリスと重ねたからか? 単に、クロエの境遇を不憫に感じただけなのか……?)


 ハルクリスに親近感を覚えたのは確か。クロエの過去に感化されたのも確か。


 けれど、どこか納得がいかない。


 その気持ちが芽吹いた理由を考えあぐねていると、クロエが目を細めながら顔を覗き込んできた。


「大丈夫? ハルト」

「いや……うん、平気……と思う。色々と心の整理がつかないだけ」


 乱れた心を宥めるように、ハルトは軽く息を吐き、


「クロエは、俺以上に壮絶な経験をしてきたんだな」

「……過ぎたことよ。この手で父を殺めたことも、ハルが殺されたことも……全部ね」


 クロエにとっては、本当に過ぎた出来事なのだろう。


 過去を語っていた時も、今この時もずっと――澄んだ水面(みなも)のような目をしていた。冷めた表情と言ってもいい。


 ハルトには、それが我慢ならなかった。


「なんで……落ち着いてられるんだよ」


 憐れみから生まれた苛立ちが、肩と胸を震わせ、口を勝手に動かす。


「今までどんな気持ちで、迷宮に関わってたんだよ……お前はッ!」


 いつの間にか、目頭が熱くなっていた。奥歯を噛み締めていた。自分はクロエの過去となんら関係はないのに、つい八つ当たりをしてしまっていた。


 普通ならば怒ってもいいところを、クロエは穏やかに笑った。


「私はね、〈聖教会〉を恨んでいる訳じゃないの。本当に憎いと思ったのは、後にも先にもエリファスただ一人。でも、当の本人は寿命でくたばった。だから私は、今の〈聖教会〉に復讐したいだなんて思わないわ」


 まるで最初から答えを持っていたように、クロエが澱みなく本音を吐露する。


「……エリファスがした事と、同じだからか?」


 ハルトが尋ねると、小さく頷くクロエ。


「そんなの、ハルも望んじゃいないわ。私はね、いま未来を見ているのよ。夢と言ってもいいわ」

「夢……? まさか」


 黒い画面を手で扇いで消したクロエが立ち上がり、背を向ける。


「私の夢はエンタメ迷宮の存在を今一度世に知らしめ、人間と魔族が手を取り合って生きていける……そんな世界を創ることよ。そしてそれこそが――私が復活したい理由なの」


 言いつつ、クロエは振り返った。


 初めて明かされた復活の目的。自身の夢を語ったクロエは陽だまりのような笑顔を浮かべていて――


「ぅえ……?」


 ――いつの間にか。


 ハルトの目尻から、大粒の涙がボロボロと零れていた。


「ぁ、あれ? おかしいな……なんでっ、涙が……っ」


 頬を伝う熱に遅れて気付き、ハルトは何度も目元を拭った。


 だが、何故か止まらない。ダムの堰を切ったように、心の泉からとめどなく涙が溢れてくる。


 涙が出るのは、なにも悲しい時ばかりではない。


 そう。ハルトは泣きながら、同時に嬉しそうに笑っていたのだ。


「ッ……」


 そんなハルトを目の当たりにして、クロエは目を丸くする。


 が、彼女もまた薄っすらと涙を浮かべ、身体を震わせた。


「……今、ようやく確信できたわ。貴方はハルの()()()()()()なんだって」

「俺が……? ハルクリスの生まれ変わり?」

「あなたを勧誘したのは、ただの偶然じゃない。以前に一度、この迷宮で貴方を見た時から……私はハルと同じものを感じていたの」


 ソファに腰を下ろしたクロエがハルトの顔をまじまじと見つめる。


「言動、性格……名前もそうだけど、一番は魔力の波長だった。数百年も前の人物と一致する魔力なんて、ほぼあり得ないから」


 懐かしそうに笑うクロエの手が、頬に伸びてくる。


 その瞬間、ハルトは眉間に皺を寄せた。


「…………なんか納得いかないな。というか、気に食わない」

「え?」

「複雑なの、死んだ奴と一緒だって言われて。それじゃあまるで、今の俺がどうでもいいみたいじゃないか」


 クロエは、自分をハルクリスと重ね合わせている。


 そうと気付いた途端、涙は何故か急に引っ込んでいった。しかめっ面のまま、ハルトはずずいっとクロエに詰め寄る。


「ご、ごめんなさい。そんなつもりじゃなかったの。ただ正直なところ……今のハルトとハルはどうしてもダブって見える。失礼だと思っていても、ね」

「ま、それもしょうがないか。実際、俺も似てるとは思ってたし……でも」


 クロエの本心に少し胸を痛めつつ、悔しげに顔を歪めたハルトはその場を立つ。


「俺にはハルクリスの代わりは務まらない。いや、()()()()()()()()()。なんたって俺は超エリート冒険者――ハルトだからな!」


 自分とハルクリスは別。


 そう言い切ったハルトは実に挑戦的な笑みを浮かべていた。


「さてと、()()()に負けないよう〈聖教会〉との因縁に決着をつけるとしますかね。おい、そこで聞き耳立ててる三人! 今から作戦会議だ! さっさと出てこい!」


 ハルトが視線を向けた先には半開きのドア。


 その隙間から、そろ~りと出てくる者たちが。


「……バレてたかぁ。いや、邪魔する気はなかったんだぜ? なんか出るに出れなくて」

「え……ネモ? え? あ、いや、それよりも……ハルト、今のって――」

「おぉおおおおおっ!! クロエ様っ、あの時お傍にいられず申し訳ありませぬッ!」

「ガリウス!? どうして号泣してるのよ!?」

「あはは。ガリウスさんってば、クロエ様の昔話で涙腺崩壊しちゃったらしくてぇ……」


 三者三様の反応を見せながら次々と姿を現すネモ、ガリウス、リリカの三人。クロエの顔が次第に赤みを帯びていく。


「そんなっ……見られてた。泣いたところも、夢語ってたところも全部っ……ハルトだけだと思っていたのにっ……!」

「良いじゃん、減るもんじゃないし。クロエの夢はすっげえ素敵――」

「心が擦り減るのよぉっ!? 馬鹿ぁあああああああっ!!」


 顔を真っ赤に染め上げたクロエの拳が、ハルトの顎を的確に打ち抜いた。





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