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【完結】魔王様リバイブ! ~美少女魔王と始めるエンタメ迷宮運営ライフ~  作者: お芋ぷりん
第4章 復讐するは追放者にあり!

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第4話 堅物キャラの味、それは……キャラ崩壊だ

続けて、ボーマンとレシアの視点ぅ

 




 ボーマン達は最初のエリアに再び舞い戻った。


 挑戦者を小馬鹿にしたような矢印には一切従わずに直進し、迷うことなく正面の扉を開け放つ。


 卑劣な罠に身構える二人だったが――


「敵は、いないみたいね……」


 そのエリアには何もなかった。


 がらんとした殺風景な部屋。奥行きはあっても、罠や敵の存在は見受けられない。


「敵は、ね……」


 だが()()はあった。


 レシアの視線が前方の更に下――壁際で毛繕いしていた小さな物体へと向けられる。


「っ……ネ、コッ……」


 そこには、なぜか黒猫がいた。不吉の前兆と噂される人々の愛玩動物が、魔石のリングを付けた尻尾をゆらゆらと振っている。


 レシアは傍らで仲間の気配が乱れたのを感じた。


 ここが迷宮の外ならば、特に警戒する必要はなかっただろう。王国内、そして魔族の中に魔法が行使できる猫の噂など出回ってはいない。


 ――しかしだ。


 ここはエンタメ迷宮――〝卑劣さ〟と〝油断大敵〟が皮を被ったような娯楽空間なのだ。冒険者として積み上げてきた長年の経験が、「警戒を厳に、冷静に対処しろ」とレシアに囁き掛ける。


 よって、レシアは全ての注意を黒猫に――ではなく。


 ()()()()()()()()()()()()()()


「い、いいっ? ボーマン。落ち着いて、落ち着いて……行動するの。さっき醜態を見せた手前、まるで説得力がないけども……! 正気を失っちゃダメだからねっ!?」


 目の前の異変を無視して、仲間の変化に細心の注意を払うレシア。


 レシアが自分の特殊性癖をひた隠しにしていたように、ボーマンもまた己の趣味を秘密にしていた。


「ぬ、ぐっ……ゥゥッ、れ、シアっ……! イ、や……ね、コォッ――!!」

「あぁっ!? もうすっかり呑まれてるぅぅぅぅ!!」


 ボーマンが辛うじて反応を示す。


 血走る眼。口元からダラダラと垂れ零す唾液。まるで獲物を前にした狼――いや、それ以上の執着心を体現したかのような存在。それこそが、強面男の今の姿であった。


(こ、このままじゃ、さっきの二の舞に……! こうなったら、一度魔法で眠らせて――!)

「も、もう……我慢のォーー限・界・だッ!!!!」

「ボーマンっ!!?」


 カッ! と鋭い眼光を放ったボーマンが一瞬にして鎧を脱着(テイクオフ)


 インナーとパンツだけの変態となって、血に飢えた獣の如く黒猫に飛び掛かる――!!


「にゃふぅ~ん! んちゅ! んぅ~っ、ちゅぱぁ!」

「にゃにゃ!?」

「は、始まった……ボーマンの猫狂いがっ」


 油断していたのか、はたまた理由があって動けなかったのか。


 黒猫は成す術なく、ボーマンの狂愛行動の餌食に。


 ボーマンの鼻の下はだらしなく伸びていた。硬かった表情は緩みに緩み、嫌がる黒猫に何度もキスを落とす。言うなれば、それは彼なりの求愛行動であった。


「可哀想だけど、全身を舐め尽くすまで止まらないわよ……」

「べろべろべろべろべろぺろべろべろべろっ!!」

「ふしゃーっ!」

「あぁっ、お猫様ぁ――んぎゃあああああッ!?」


 そのあまりの気色悪さに、黒猫の方も我慢の限界だったのだろう。


 爪を立てた前脚で、ボーマンの顔面を乱暴に乱れ引っ搔き。拘束が緩んだ隙に顔を足蹴にして離脱していった。


「だ、大丈夫ボーマン……!?」


 派手に引っ掻かれたボーマンを心配して、レシアは慌てて駆け寄る。


 ――のだが。


「く、くくっ……この痛みが、またオレを高めてくれる! お猫愛(ねこあい)こそLOVEパゥワァ!!」

(あ、もう手遅れだわ重症。万能のエリクサーでもダメね)


 猫に付けられた傷が己を奮い立たせるのか、ボーマンはマゾのように歓喜しており、心配の必要性は全くなかった。


 実のところ、レシアは知ってはいたのだ。ボーマンが〝狂気じみた猫好き〟であることを。


 当人は、その親しみやすい趣味を隠し徹せているつもりのようだが。


「そ、それで……! あの黒猫はっ――――え?」

「……まったく、困りやすぜ。ハルベルト様」


 その頃、逃走を図った黒猫は何故か二本足で立っていた。


 ニヒルに笑いながら、そのままてくてくと歩いていき――


「こんな悪趣味な頼みはこれっきりで頼みますぜ?」


 壁の隅にあった謎のレバーを、「にゃふ」と言いながら器用に下ろした。


 直後、扉のように開く天井。


 間髪入れず、謎の液体がボーマン達の頭上にドバドバと降り注いだ。


「こ、これは……! まさか油!? 火を射かける気!?」

「お猫様からの攻撃ならば、むしろご褒美だ! アハハハハハッ、さぁ来い!」

「もう黙んなさいよ!! これ、魔族の罠よ!? まだ何か――っ!?」


 透明な液体のヌルヌルッとした感触から、即座に火と油の攻めだと考えたレシア。


 だが残念ながら、その推測は外れていた。


「ぅえ?」


 突如として、壁の石材の一部が回転丸太のように高速スピン。凄まじい勢いで石棒に巻き込まれたレシアとボーマンは、これまた高速回転しながら床を滑った。


 さながらそれは、凍結した道路でスリップした自動車のようで――


「ごッ!? オッ、ぉぉぅっ……!?」

「へぶっ!?」


 滑った先で、それぞれ壁に後頭部と顔面を強打。


 痛みに悶え、その場でのたうち回る羽目に。


「ぅ、ぅぅっ……これ、ただのローションじゃないっ……!?」

「さ、流石はお猫様だ……オレ達を楽しませる仕組みまで作っている、とはっ」

「アンタそのメルヘン脳をどうにかしなさいよっ!」


 この悲劇を招きながら、いつまでもトリップしているボーマンに苛立ったレシアはポーションを瓶そのままの状態でボーマンに叩き付けた。


 しかし猫愛で痛覚すらも麻痺しているのか、ボーマンが苦しみ悶える様子もなく、引っ搔き傷はアッサリと癒えていく。


「ぬぉぉっ、お猫様が下さった勲章が……ッ」

「いい加減戻ってきて。今頃、魔族に大笑いされてるわよ」


 残念がるボーマンにジト目を向けつつ、レシアが冷静に状況を分析し始める。


 先程の黒猫は、いつの間にか居なくなっていた。あれも罠の一環だったのだろう、とレシアが思う一方で、妙な違和感に思い至る。


「ねえ……アタシ達の性へ――ゴホンッ、弱点に合った罠があったのは、ただの偶然だと思う?」

「…………っ、それしかありえないだろう。信じ難いことだが、魔族ならばと納得する自分がいる」


 レシアが不審に思っていた事を口にすると、ボーマンは咳払いして肯定した。黒猫が居なくなったことに気付いてか、おかげでようやく猫欲を自制出来たようだ。


「確かに、魔族なら相手の情報を事前に知りえても不思議はない。けど、ここはエンタメ迷宮よ? 情報通りなら、冒険者を楽しませる場の筈。なのに――」

「わざわざ個人に合わせた罠を用意しているのはおかしい、と?」


 レシアが神妙に頷く。


「まぁ、確かに。迷宮の常連ならまだしも、オレ達は初見だ。この迷宮の本質を信じるならば、万人受けする罠でないとおかしい」

「それに、さっきから他の冒険者と全く出くわさないのも気掛かりだわ。昔の、枯れ迷宮の頃と違って、今や人気迷宮の一つなのに」

「なんだ、今頃気付いたのか。レシアが醜態を晒した頃には、オレはとっくに気付いていたがな」

「……その割には、未だに隠し徹せているつもりの性癖を脇目も振らず解放してたようだけど」

「ぬぐぅっ」


 口で負けたボーマンがらしくもなく情けない声を漏らす。


 その間、溜息を吐いたレシアは落としていたとんがり帽子を被り直す。


「何か、作為的なものを感じるわ。これは、かつてないほどの試練になりそうね」

「うむ。オレ達はとんでもない奴を相手しているのかもしれん」


 エンタメ迷宮の事前情報、現状との食い違いが、レシア達の警戒水位を否応なしに引き上げる。ここにきて、魔族が運営する迷宮という事実を再認識したのだ。


 それからの迷宮探索は更に難航した――


 探索中、ボーマンが誤って押したスイッチ(仕掛け)で二人共々落とし穴に嵌ったり、宝箱だと思って開けたミミックにレシアが顔面から捕食されたりと。


 お世辞にも上手く対処出来たとは言い難い有り様であった。


 そうして更に一時間。長い探索の末――二人の迷宮探索は最終局面へと突入していた。





堅物キャラの意外な趣味が発覚するのが結構お好き。もはや猫好きは意外でもないけども!


次の投稿も~~翌日、同じ時間でぇす。

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