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【完結】魔王様リバイブ! ~美少女魔王と始めるエンタメ迷宮運営ライフ~  作者: お芋ぷりん
第2章 魔王が誇る最強の忠臣

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エピローグ エンターテイナーの兆し

今回は本当に長めです。

区切ることも考えましたが、中途半端に場面が途切れるので断念。ですがその分、内容の濃い話となってますので、どうぞご堪能を!!

 




 他のエリアに居た冒険者達の攻略が、ガリウスにより頓挫(とんざ)されられた頃――


 宝物庫前の戦闘部屋では、未だ激しい攻防が続いていた。


「ククッ、力が入ってないな? 余程、さっきの悲鳴が気掛かりだったと見えるッ」

「ぅ、グクッ……!」


 余裕そうな笑みを浮かべるハルトの眼前で、剣を両手で逆さまに持ったジンの上体が、ガクッと折れ曲がる。


 その(さま)を見て、ハルトはますます得意げとなり、顔が強張った。


「おっと、まだ倒れてくれるなよっ? でないと、早々に決着がついてしまう。俺としても、この戦いを終わらせるのは惜しいっ……こんなに胸が高鳴るのは、久しぶりなんだ! だから頼むっ――負けないでくれっっ……!!」

「いやまぁ、さっきの悲鳴も気になるがよォ――」


 ジンが持つ剣がプルプルと震える中、ジンの視線が下に向けられる――


「なんで負けてるテメェの方が余裕面(よゆうづら)なんだよォ?」


 そこには――首元に迫る刃を両手で掴み、必死に食い止めているハルトの姿があった。


「いやぁ、『相手を楽しませるには、まず自分から』って言うじゃん? だから、戦いにドラマ性を追求してみようと思ったワケっ☆」

「この状況で言う台詞かよッ!? ふざけやがってっ……テメェ、いま殺されかけてんだぞッ!」

「だから食い止めてんでしょうが。さてはお前、馬鹿だな?」

「テメェにだけは言われたくねぇんだがっ!?」


 最初は、ハルト自身も驚く程にジンを圧倒していたのだ。


 しかし残念ながら、この短期間では長年体に染み付いた癖が完全に抜け落ちるまでには至らず、こうして追い込まれてしまっている。


「ほらよォ……死にたくなきゃ、さっさと負けを認めろよ? 財宝と命、どっちが大事なんだァ?」

「――迷宮が大事に決まってんでしょうがッ!!!!」

「第三の選択肢なんか(はな)っからねぇッ!」


 命が懸かっている状況でもハルトはブレなかった。


 事情を知らないジンはそんな冗談とも取れる態度に苛立ち、剣を押し込む両腕へ更に力を込めていく。


「良い加減にしろやテメェ……早く負けを認めた方が身の為だって解るだろォ?」


 やがて、その剣先がハルトの首筋に到達する。


 ハイネックの布地に鋭い刃が食い込み、裂けた布の隙間から赤い血がじわりと滲み出す。


 更に剣を押し込まれれば、大怪我に至るのは免れない。更に言えば、『迷宮の守護者は殺してはいけません』――という迷宮ルールをジンが守る保障はどこにもない。


「フッ……」


 そんな状況に置かれても(なお)、ハルトは不敵に笑った。


「……お前、さっきから勘違いしてないか? そっちが優位とでも?」

「ほぅ、この状況でもホラが吹けるたぁ驚きだ。一体なんの根拠があってそんな……」

「――この迷宮には、俺の他にも守護者がいる。最強のクソ師匠がな」

「?」


 (あざけ)るジンの言葉に被せる形で、ハルトが言い放つ。


 突然の告白をジンが訝しげに思った瞬間――


「お前、一体いつから一対一の戦いだと思い込んでたんだ?」

「ッ――!!!?」


 直後、ジンの顔が一瞬にして青褪めた。ハルト(ハルベルト)が余裕でいた意味を理解して。


 ジンはすぐさま体を起こして背後を確認しようとした。思わず、(つか)に込めていた力を抜いてしまうほど必死に。


 そうして、ジンの重心が不安定になった隙を、ハルトは見逃さなかった。


(掛かったっ――!!)

「ぬぁっ!!?」


 ジンの動きと連動させるように、掴んでいた剣を奥へ目一杯押し込むと、ジンが体勢を崩し転倒。


 その機に乗じ、ハルトは素早く体を起こして難を逃れた。


「危ねぇあぶねぇ。もう少しで、俺の柔肌に傷が残るとこだった……」

「テメェ、ホラ吹きやがったなァッ!!」

「いやぁ、別にホラを吹いたつもりは……」


 怒り狂うジンの前で、床に転がっていた剣を拾い上げるハルト。


 あやふやだった形勢もこれで完全に振り出しに戻ったと言える。


『――ほっ、良かった……なんとか立て直したわね』


 そこでふと、ハルトの耳元(魔導伝音機)から安堵した声が流れた。


 温かくも優しい声を出すのは、迷宮ではクロエしかいない。


(ちょっと心配掛けちゃったか……)


 クロエの境遇を知って以来、ハルトはなにかと彼女の視線や反応を気にするようになっていた。


 今頃、モニターの前で胸を撫で下ろしていることだろう。


『でも、流石はハルトね。期待を裏切らないわ』

(…………ん?)


 しかし、クロエの感想はそれだけに留まらなかった。


『ガリウスとの修行があったとはいえ、こんな短期間で強くなる筈がないもの』

『あぁ! ハルトが戦闘で活躍するのは明らかにおかしいぜ!』

『ホントよねぇ。私、てっきり自分だけ異世界に飛ばされたのかと思ったわ……』

『あっ、それあたしも思った!』

(お前等なぁっ! 俺が活躍するのが、そんなにおかしいですかねっ! 仕舞いには泣くぞマジでぇ!)


 防衛戦恒例の待機組による観戦トークが始まり、ハルトは意図せず心に傷を負ってしまった。


「――チッ、オレのことは眼中にないってかよォ。あァそうですか……なら、こっちから行くぜェッ!」

「!」


 ハルトが二人の会話に気を取られていると、剣を拾い立ち上がったジンが気勢を上げて突進した。


「まずっ――!?」


 反応が遅れてしまい、ハルトの中で小さな焦りが生まれる。


 ジンの剣が振り下ろされる瞬間、ハルトは体に()()()()()()()から、思わず剣を横構えにしてしまう。


 直後――、


「ッッ――!!?」


 腹部に鋭い痛みが走った。


 攻撃が防がれるのを見越したジンがフェイントを掛け、横薙ぎに剣を振るったのだと、ハルトは遅れて理解する。


「ッハッハー! テメェの癖は、とっくの昔に見切ってんだよォ!! オラッオラァ!!」

「ぅ、ぐっ……! こ、このっ――!」


 ハルトに一撃を入れたジンが、愉快そうに何度も鋭い剣撃を放ってくる。


 絶え間なく打ち込んでくる為、ハルトは成す術なく防御する他ない。焦燥(しょうそう)という(もや)によって、〝避ける〟という選択肢自体が潰されている。


「ほらほら、さっき避けっぷりはどうしたよォ――!」

「ぐっ……! 言わせておけばぁあああっ!」

「おっと危ねぇ……ほらよっ!」


 苦し紛れに振るった剣はジンに容易く見切られ、逆にハルトが反撃を食らう。ジンの攻撃を焦って剣で捌こうとすれば、その度に隙を突かれ、体を切り刻まれる。


 優勢だったのは序盤だけだ。既に、ハルトの全身には無数の切り傷が大小問わず刻まれてしまっている。


「へへ、追い詰めたぜェ……ハルベルトさんよォ?」

「くっそぉ……! ホント嫌になる癖だな、オイッ」


 宝物庫の扉前に追い詰められたハルトが、息を荒く苦笑する。


 ガリウスのおかげで、体の歪な運用法に関しては少しずつ矯正されてきている。だが、危険な冒険者稼業で染みついた癖までは、どうしようもなかった。


 特に、〝無理して攻撃を防いでしまう癖〟が。


「サシで勝負を挑んだのが仇になったなァ。そう何度も奇跡は起こらねえぜェ……」


 ハルトを追い詰めたジンが左手を胸の前に掲げて、言葉を紡ぐ。


()は全てを炎獄(えんごく)(いざな)業火(ごうか)……」

(! 短縮詠唱!?)


 それは、魔法の詠唱だった。


 魔法が使えないハルトでさえ知っている、上級攻撃魔法の一種。


 力ある言葉に火の精霊が応え、次第にジンの手のひらに魔力の輝きが集束していく。


「――【炎熱獄火(ヘルブレイズ)】!」


 ジンが魔法名を言い放った瞬間、凝縮されていた魔力が、一転して燃え盛る黒炎球と化した。


「短縮での上級攻撃魔法だとっ!?」

「修行したっつったろ? まァ、ここまで使いこなすのにかなり苦労したがなァ」


 サイズは地球儀ほどだが、その炎は接触した対象を完全に燃やし尽くすまでは消えない。まさに地獄の炎とも云うべき恐ろしい魔法だ。


「……だがそれも、今日ここで報われるってもんだよなァ?」

「いや待て待て撃つなっ!? こんな密閉された空間で火属性魔法使うなんて、お前それ自殺行為だぞっ!?」

「フン、それで命乞いのつもりかァ?」

「馬鹿なお前の為に言ってんのっ! 下手したら、酸欠で俺達二人共死ぬんだよ!!」


 しかし、いま最も恐ろしいのは、この密閉空間で火属性魔法が展開されたことであった。


 ハルトはその危険性を必死に説こうとしたが、


「ハッ、追い詰められてるテメェの言うことなんざ信じられるかァ!」

「くっ……! まさかここまで馬鹿だったとはっ……!!」


 ジンは、ハルトの想定以上に頭が悪かった。狙いを外すまいと、ジンが更にハルトへ詰め寄る。


(こうなったら、()()()で一気にケリをつけるしかない――!)


 もはや、ハルトに逃げ場はない。


 絶体絶命の窮地(ピンチ)の中、ハルトは覚悟を決める。


「お? 潔く腹をくくったかァ?」

「あぁ――奥の手を出す覚悟をな!」

「なに?」

「来たれッ!! 我が配下にして四人の闘士――〈カツアゲ隊〉よ!!」


 ジンが疑問を抱いた瞬間、ハルトは宝物庫の扉を強く叩いた。


 直後――


「「「「ウィー!!」」」」


 宝物庫の扉が開くと共に奇声が上がった。


 すると、今まで姿を見せなかった〈カツアゲ隊〉の四人が中から飛び出してくる。


「んだよっ。前回、何も出来なかった雑魚共じゃねえかァ」

「雑魚と侮るなかれ! お前は、ここで敗れるんだッ――この俺が、密かに新開発していた超強力必殺技でなぁっ!!」


 彼等は、「合図があるまで待機」とハルトに命令されていた。ハルトの修行の成果を見る目的があった為に。


 それを確認できた今、〈カツアゲ隊〉を縛るものは何もない。


「全員集合! 今こそ、あの技を見せる時だ!」

「「「「ウィー!!」」」」


 腕を組んだハルトの周囲に勢揃いするコボルド達。


 そして、隻眼コボルドがハルトの足の上で屈んだ瞬間だった。


「いざ喰らえっ――【コボル弾】ッ!!」

「はぁぁ!!!?」


 なんとハルトが、ジンに目掛けて隻眼コボルドを蹴り飛ばしたのだ。


 突拍子もなければ予想もつかない展開に、ジンが唖然とする。


「へへ、切り込み隊長を任せてもらえるたぁ光栄ですぜ!」

「だ、だがこんな技ァ、見切るのは容易いッ――」


 そう、見切るのは非常に簡単だ。


【コボル弾】はハルトの蹴りに合わせて、コボルドが前方に向かって跳躍しているだけ。どちらも肉体を鍛えてはいるが、そこまでの速度は出ない。


 ジンは眼前に迫り来る隻眼コボルドを横にスライドして避け――


「なっ!!?」

「君が驚く可能性はっ――百パァァァァセントォゥゥ!!」


 避けた先に、間髪入れず次弾(インテリ・コボルド)が飛んできていた。そして、その手には凶悪な棍棒が握られている。


「くっ……チィッ!」


 流石に避け切れないと思い、ジンは堪らず黒炎球を放った。


 だが――


「フフッ、その可能性を視野に入れていないとで――モモモモモモォッ!!!?」

「なっ――!? 棍棒を盾にしただとっ!!?」


 インテリ・コボルドは、咄嗟に棍棒を身代わりとして見事に魔法を防ぎ切った。


 名誉の負傷として、体を火傷し床を転がり回ることになったが、おかげで炎上したのは棍棒だけに留まる。


「よくやったっ! お前の犠牲は無駄にはしない! 全弾フルバァァーストッ!!」


 犠牲になったインテリ・コボルドの心配も程々に、ハルトは残るバーサク・コボルドとハイテンション・コボルドを次々と蹴り飛ばした。


「ヌォオアアアアアアッ!!!! キザマのマゲダァアアアア!!!!」

「ユー! ルーザーッ!!」

「チィッ――」


 その鬼畜極まりない所業を目の当たりにしながら、ジンは慌てて剣を構えたが、


「――うっ、ぐっ…………!?」


 傷口からの多量出血により眩暈が起きた。それにより、ジンの体勢は大きく崩れてしまい――


「はごォッ!!!?」


 残りの全弾が、ジンの顔と股間に命中。


 ぶつかった勢いで後ろに倒れ込んだジンの顔面に、バーサク・コボルドとハイテンション・コボルドは、馬鹿にされたお返しとばかりにオナラをお見舞いした。


「ぅンぐゥォォェエエエエエッ!!!!? ~~ッ、~~ッッ!? っ――――」


 長く続いた戦闘による疲労と傷の痛みもあって、既に限界が来ていたのだろう。


 コボルド達が尻を持ち上げると、オナラで嗅覚を蹂躙されたジンがブクブクと泡を吹きながら白目を剥き、気を失っていた。


「…………か、勝った? 勝ったよな?」

「ええ、我々の勝利でさぁ!」


 勝利の実感が湧かず、ハルトが隻眼コボルドに尋ねると、すぐさま肯定される。


「お? おぉぉぉっ――!」


 すると、腹の底から言い知れぬ感情が湧き出てくる。


「よっっしゃああああああっ!! 楽しませた上で、勝っったどぉぉぉぉっ――――」


 天下を取った覇王が如く、ハルトはジンの前でガッツポーズした。


 そして勝利の余韻を味わうようにして、笑顔のまま大の字に後ろへ倒れ込む。


『………………』


 そんなハルトの奮闘を、共有スペースのモニターで観ていたクロエとネモの表情は、軽く引き攣っていた。


『これって……修行の成果が出たってことで……い、良いのかしら』

『まぁ、エンターテイナーとしては成長したんじゃないか? 今回はエモトロンを大量に回収できたし』

『それなら良いのだけれど……』


 その言葉とは裏腹に、クロエが苦笑する。


『それが〝楽しみ〟の感情で生まれたものなのか、甚だ疑問ね……』


 その後、作業員達に身柄を回収されたジン一行は、気休め程度の治療を受けたのち迷宮の外で解放された。勿論、所持金と装備を一部奪取された上で。


 そして、敗走した彼等は王都の冒険者ギルドで忌々しげに喧伝した。


『エンタメ迷宮は面白いッ。ただ、その迷宮創設者と罠は卑怯卑劣にも程があるがなァ!』

『財宝を得る為には様々な障害を乗り越える必要があるケド、中でも宝物庫を守る守護者と恐ろしい剣技を使う守護者には気を付けてネ』――と。


 その日から、エンタメ迷宮には更なる挑戦者が訪れるようになり、クロエとネモは「エモトロンとお金を大量に回収できる」と息巻いた。


 しかし、この時のハルトは知る由もなかった。


 今回の防衛で広まったエンタメ迷宮の噂が、のちにハルト達を(おびや)かす未曽有の危機を招くことになるなど――

 




『ところでさ……クロエ』

『どうしたの、ネモ。早く祝勝会の準備をしないと……』

『ハルトの奴、一向に動かないんだが……』

『え?』

『あれ、ヤバくね? 真っ赤な血がドクドクと……』

『――言ってる場合!? 恐らく失神してるわ! 〈カツアゲ隊〉の皆、聞える!? ハルトを治療室に運んで! それと戦闘部屋の換気も! 大至急お願いっ!!』

その数分後、治療室に運び込まれたハルトは、女医の華麗なる治療によって一命をとりとめたのだった。



これにて、第2章は終了です!

ご迷惑をお掛けすることが多かった章でしたが、読者の皆様、楽しんでもらえたでしょうか?

3章は、なんと魔界の○○が襲来する波乱に満ちた内容となっています。○○の意外な一面も見れたりするかも!?


気になる3章の投稿日ですが、2章で出来なかった書き溜めや『異能学園の斬滅者』のこともありますので、来月の(11/1)に投稿再開とさせて頂きます。では、またー!

⇒追記。ジンが火属性魔法を使った部分周辺を修正しました。理由は、室内で火属性魔法を使うことの危険性を誰も認識していなかったからです。

★感想・誤字・脱字などがございましたら、ページ下部から行えます★

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