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懐かしい顔

何だかブクマ外しが地味に増えて泣きそうですが、まぁ、頑張りますわ。



 幻術とは恐ろしいものである。強い魔力で被術者の容姿を変えるだけでなく、その外観に合わせて精神も改変される事すら起きる。まさかそんなこと無かろう、と言うなかれ。試しに今まで身に付けた事の無い衣服を着てみれば判る。お薦めは異なる性別の衣服である。もし適性が有れば……明日から……、


勿論合わない時もある。その時は黙って脱げばいい。


……その代わり、その姿を他人に見られたらきっと……



✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳



「……それにしても、その見た目は戻せるのか?」


狐鉄は腰に提げた短刀の柄を(もてあそ)びながら、ジャニスに訊ねる。


「戻せるわよ、その為の解呪の呪符も渡されたし……たぶん」


カミラの性格を最近起きた出来事から身に染みて理解しているジャニスは、一旦は肯定したものの、暫く後に曖昧にしてしまう。


(いやぁ~ん♪イヌ耳ジャニスちゃんもいいけど、やっぱりとんがり耳長ジャニスちゃんも捨てがたいわぁ~ん!)


……ぞぞぞっ。背筋が凍るような感覚に襲われたジャニスは、尻尾の毛が逆立つのを感じた。有りそうで怖い……。



暫く歩けば目的の店が見えてくる位まで近付いたその時、三人を待ち構えたかのように建物の脇から三人の男女が姿を現した。


前を歩く二人の男は影のように静かでゆっくりとした動きにも関わらず、気付くとあっという間に自分達の間合いの手前まで近付き、その場を動かない。明らかにそうした戦いの場に長く身を置いた者特有の油断の無い行動であり、それをこうして自然と行える者は間違い無く手練れであろう。


そして奥に控えながらやって来たのは一目で判る犬人種の女性。紺色のゆったりとした袖の長いシャツの上に革のチョッキを身に付け、下は黒のスラックスと艶やかな黒の革のブーツ。装飾じみたものは耳元の小さな紅い宝石位であるが、その見た目の若さからは想像も出来ない権力を持つ者特有の余裕が窺える。


リューマは男達の立ち振舞いに警戒したものの、連れの二人が全く身動ぎしていないことを悟り、手指に籠めていた力を少しだけ抜いた。


だが次の瞬間、彼女の口から発せられた声は彼を驚かせた。


「……お久し振りね、ジャム。彼とは上手くやっていっているのかしら?」


幻術により森人種(エルブ)の姿に化けている筈のジャニスに向かって易々と話し掛け……しかもセイムスしか使っていない名前で呼び掛けると言うことは……


「……姉さん!?どうしてこんな所に!!」


ジャニスは驚きの余り、身を強張らせながら一歩退いてしまう。例え自分が何と渾名されようと、彼女にとっての姉は常に強く気高く、そして絶対に頭の上がらない存在である。そう……彼女こそ【武装商工組合】に縁の深い、ジャニスの実姉のニケ。ニケ・ロングテールだった。


(あね)さん、お久し振りです……しかし、何でこんなトコに?」


狐鉄は膝を着きながら独特の仕草で挨拶をし、立ち上がるとそう訊ねる。頭巾で細かい表情を窺うことは出来ないが、何処と無く不審げに思っているのは明白である。


「えぇ、それも含めて皆さんと少しだけお話がしたいので、()()()()()()()()()()()()()()座りませんか?」


後ろを親指で指し示しながらそう言うと、前に立っていた二人の男は後ろに下がり、ニケを先頭にして歩き出す。


「もう!私達の意見は聞いてくれないの!?……て、ゆーか何で姉さんはこの格好でも私だって判るのよ……!」


呟くジャニスの言葉にニケは無言で振り向くと、自らの鼻を指差してニコリと笑い、そのまま数軒先にある店へと入っていった。



✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳



ニケが店の入り口で護衛の二人に何言か交わすと、一人が店内へと入り店員と何か話しながら店内を見回し、そしてそのまま出てきたかと思うと待機していたもう一人と共に店の外で不動の体勢を取る。


そうした動向に慣れていないリューマは怪訝な顔になるが、そのまま店内へと進むジャニスとニケを追って歩き出そうとしたが、


「おっと……ダンナはここで俺と一緒に待機してください……理由は、姐さんとジャニスで二人だけの話をさせる為、ってことで……」


狐鉄が申し訳無さそうにしながらも、その巨躯(きょく)に全く臆することなく当然のように遮る。


「狐鉄……お前はジャニスの味方か?それともニケとやらの手先なのか?」


リューマは言葉に若干の剣呑さを含ませながら、しかし無作法に彼を押し退けたりはせずに問う。しかし狐鉄はその言葉に一切の迷いを見せること無く、


「……俺は姐さんにジャニスの面倒を見ろ、と言われている。だからジャニ坊と行動を共にしている。だが、()()()()()()()()()()()。ニケがジャニ坊を斬れ、と命令すれば……俺はジャニ坊を斬る。それが……俺の仕事だ」


と、答えた。その答えを聞いたリューマは暫く沈黙していたが、突然思い出したかのように、


「ところで狐鉄……何故、ジャニスの事を【ジャニ坊】と呼ぶのだ?」


と、唐突に訊ねる。狐鉄は質問を反芻するかのように暫く沈黙していたが、突然、……ん?あぁ、そりゃそうだよな……確かに確かに!と肯定した後、


「俺とジャニ坊が初めて会った時ってな、あいつ……男か女か判んなかったからさ~つい見た目だけで坊主!って呼んじまってな!後からジャニスは女だ、って姐さんから言われてさ……それ以来、あいつのことをジャニ坊って呼んでるって訳。それだけなんだよ」


リューマはやや呆れながら、しかしそれなりに納得し狐鉄と並んで店の外で待つことにした。






地味な話が続きますが、作者もそろそろビシッ!と、話の展開を狙いながら……ゆっくりと進めて参ります。

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