海開き!!
毎日暑いですね。と、言う訳で特別編を続けてお送りいたします。
「……っ!?……結界?」
セイムスは目の前に立ち塞がる見えない壁に阻まれ、その先へと進めなかった。勿論他の面々も同様で、掌でバシバシと叩く幼い子供達二人は何故か楽しそうだけど。
一行は落ち着いて結界沿いに壁を見てみると、壁沿いに小部屋を発見する。内側で二手に別れるようで、罠の類いは無いようだが油断は出来ない。
だが、詳しく調べてみようと壁を見ると、一枚のプレートが張り付けてあった。
【 ♂ 】
「…………オス……かな?」
セイムス以外の誰が見ても性別を現す記号にしか見えなかった。まさかと思い、もう片側の分岐点の先に向かうとそこも先程と同様の袋小路であったが、そちらには異なるプレートが張り付けてあった。
【 ♀ 】
「…………これ、女性ってことよね…………」
袋小路にプレート、更に調べると壁には四ヶ所に大きな引き出しが設置されていて、その中には古びない不思議な素材で編まれた丈夫な籠、そして何故か幾つかの見たことのない色とりどりの衣服が仕舞われていた。
まるで何かの準備の為に配置された各々の目的が皆目判らないジャニスとセイムスだったが、悩む二人の様子にカミラは飽きました!と言わんばかりの投げやりな調子で、
「ねー、これって着替えてさっさと先に行けって意味でしょ~?大衆浴場みたいにさぁも」
カミラの言葉に呆然とする面々を横目に、
「さー、ナノちゃん、グラスさん、ジャニスちゃん!女子は向こうでさっさと着替えてしまいましょ!」
彼女達の手を引きながら、カミラは分岐まで向かって反対側へと姿を消し……ながら顔だけ覗かせて、
「……ま、判ってるとは思うけど~、覗いたら永久に解けない幻視、見せてあげますからね……?」
と、末恐ろしいことをニッコリ笑いながら言い残してから、姿を消した。
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……男性用更衣室では、武器を置いていくか議論が繰り広げられていたのだが、こちら女性用更衣室での議論はまた、違ったものだった。
「キャ~♪見て見てこのブラッ!!黒地に紅い花柄とかどれだけ攻めてんのよ!!このダンジョン超イケイケよねっ!!」
「カミラさんッ!!これ見てッ!!どこから見ても同じ模様が無いわよこれ……しかも!ほらほら真ん中に付いた蝶番……どう見ても螺鈿細工よねぇ……ちょっと水に濡らすのが怖い位……芸術品よ!最早!!」
「何言ってるんですか!!これなんて鮮やかな黄桃色なのに……見てくださいッ!!こんなちっちゃい生地で何をどーすればいいんですかッ!?いや……隠す為の物じゃなくて逆に強調しちゃってます!!無理ですッ!!」
「ママ~、おしっこ~!!」
……結局ナノちゃんの体調維持の為に、彼女達のささやかな闘いは静かに終わりを告げたのだが……、それは舞台を変えて、更にヒートアップしていったのである!!
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「……グ、グラス……何なんだいその格好は……」
更衣室を後にして先に結界の外(どうやら結界の中には武器等を持ち込めない仕様になっているようだった)に進んだセイムスとアラミド、そしてカーボン君ら三人は、足元が砂地になっていることから先に見える景色が偽りの光景では無い気分になっていたのだが、彼らの背後からやって来た女性陣の姿を目の当たりにし、最も驚愕したのはアラミドだった……。
「……た、たまには、こういう格好も……いいかな?……なぁ~んて……ダメ?」
視線の先に立つグラスの服装は……いや、もうそれは服ではなかった。限り無く面積を小さく留めた布地はたてがみと尻尾の焦げ茶色に合わせた純白で、しかも豪奢な金糸で縁取られた花を模した飾り付けは、貴族のドレスも顔負けの高い芸術性と技術力で作られた、宝飾品に近い存在だった。
「ママ!すごいきれい!!おひめさまみたい!!」
「あ~ん!わたしのもおなじなのにぃ!!」
カーボンの言葉に嬉しそうにナノを抱き上げつつ、そーよねぇ、ナノもお姫様みたいよ?と言いながらカーボンとアラミドの方へと歩いて行った。
「セイムスく~ん?ほらほら貴方の大事なヒトは、一体どんな格好しちゃってるんでしょ~ねぇ?」
アラミド一家の様子をやや呆然としながら見ていたセイムスは、背後から革の胸当てを脱いだだけのカミラに声を掛けられて振り向いたが、そこにジャニスの姿は無かった。
だが明らかにカミラの後ろに身を隠していることは明白で、それが彼女の控え目な性格のせいだと判っているセイムスは、
「ジャム、他に男なんて居ないんだから、怖がることもないんじゃないか?」
「……うぅ、シムの意地悪……ってちょっとちょっとカミラさん!ダメよダメダメぇキャ~ッ!!」
どーせ減るもんじゃないんだから気にしないッ!!未来の旦那様にジャニスちゃんのジューシーな肉体を見て貰いなさいよっ!と言うカミラに捕まってしまい、グイグイと前に押し出されたジャニスの格好は……、
……やや褐色の肌に同調するかのような鮮やかな朱色の布地、そしてその至る所に緑色の鮮やかな葉を模した模様で……カミラが言っていた最も大胆な箇所……それは、丈を限界まで引き絞られた、上下とも同じ色柄の布地の面積だった。
胸元を覆う布地は肩紐のない野心的な意匠にも関わらず、何と下側は限界まで引き上げられて様々な予断を許さない、実にけしからんお肉の形がクッキリハッキリ……だったのだ。無論、腰下の方も大胆なカッティング様式を取り入れた攻めのスタイルは変化せず、明らかに水中への進入を拒絶していたのだが……。
「ほらほら~セイムス君!ジャニスちゃんたら、ずーっと恥ずかしがってこの調子なんだから、キチンと誉めてやんなさいよ?」
……あんまり暴れると上も下も捲れちゃうわよ?と冷静な忠告でジャニスを固まらせたカミラは、先に行ってるわねぇ~♪と言い残してアラミド一家の方へさっさとにじり去ってしまい、残された二人は暫くモジモジしていたが、
「ジャム……すごく、綺麗だよ?ホント、君が居てくれて幸せだ……」
「ば、バカッ!!もう……そんな風に言われちゃったら私……」
……迷宮の奥から聞こえる波の音を聞きながら、二人は初めての時と変わらぬ情熱で、口づけを交わした。
作者としては二人にもっとイチャイチャして欲しいんですが……まぁ、ここらが限界。次回もゆっくりと進んでまいります。




