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お布団の中から

長期不更新を打破するべくコツコツと書いてきました。時には一日五百文字……で、今夜は手短に更新いたします。

 


 ……ジャニスはとても幸せな夢を見ていた。


 病気で亡くなった筈の母が家に来て、セイムスと楽しげに話している。声は聞こえないのだけど、孫を早く見たいと笑いながら言い、それにジャニスが……そんなのもうじきだから心配しないでよっ!!と、赤くなりながら返答する。


 何故かその場に姉のニケも居て、妹に先を越されたけれど今に見ていなさい!……私だってセイムス君みたいな強い男を必ず見つけてモノにしてやるんだから~ッ!!と妙に鼻息荒かったり……夢らしくやたらと破天荒なのに、何故かキチンと辻褄が合っていて、セイムスと二人で暮らしている今の住居で談笑しているのだ。



 ……あぁ、お母さん、会いたいな……会って、セイムスを紹介したいよ……


 ……お母さん、ジャニスは今、幸せなんだよ?……料理はまだ上手くないけど……


 ……お母さん、まだ、もう少しだけ、そっちで待っててね……



 ジャニスはそれだけを想い、それだけを願う。

 そうしていると自然と涙が零れてしまう。


 ……やだな、セイムスと暮らしてると泣いてばかりだね……


 ……でも、イヤじゃないよ?……だって、泣いてると、セイムスが私をギュッとしてくれて……



 ✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳




 ……スーッ、と眼を開く。



 目覚めて最初に眼に飛び込んできた光景は、今やすっかり見慣れた……セイムスとジャニスの寝室の天井だ。ただ、いつもより少しだけ真ん中寄りかもしれない……



 ……真ん中寄り……?


 ジャニスとセイムスのベッドは同じ店で購入した為、二つとも同じ高さである。つまり、横に繋げれば境目のないダブルベッドに早変わり!…………?


 ジャニスはゆっくりと、首を巡らして視線をいつもセイムスが寝ている側へと動かしていくと……、



 ……すぅー、……すぅー、……すぅー、と規則的な寝息を立てる、セイムスの顔が目前に有った。



 パチン、と両手で自らの鼻と口を塞ぎ、絶叫を堪えて我慢する。


 暫くは、ふ~っ!、ふ~っ!、と呼吸を荒げた後、ゆっくりと深呼吸しつつ考えてみる。



 ……まず、ベッドを繋げてから誘ったのはジャニスの方だし……そして、彼女の記憶はハッキリしている。……確か自分が鼻血を出して卒倒し、たぶんその間に……夢を見て……いや、違う!


 あれは夢なんかじゃない!謂わば追体験みたいなものだ。何故ならば、今まで何回も母の夢は見てきたけれど、あれほどハッキリとしたのは一度として見たことはない。しかもあの状況は……ニケと二人で母に抱き着いたのはたったの一度きり……母が病で亡くなる前の日だけだったのだ。


 それに……抱き着いたその時、ジャニスには確かに母の感情が感じられたのだ……


【今は甘えん坊のジャムの方が、しっかり者のニケよりも先に結婚しちゃうかもしれないわね……今は全然だけど、そのうち家事も覚えてくれてお手伝いもしてくれるようになるわね……】……と、頭を撫でながら……呟いていたのだ……心の中で。


 思い出すと、乾いた筈の涙がまた流れ出てくるけれど、それは決して不快なものではなかった。ジャニスにとって稀薄だったニケと自分、そして母との絆を再確認させて貰えた、貴重な体験だったからこそ心の底から嬉しかったのだ。


 やがてセイムスと同じように、穏やかな寝息を立ててジャニスは眠りについた。




 ✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳




 ……静かな呼吸音のみが聞こえる真夜中過ぎ、ジャニスとセイムスはどちらともなく抱き合って眠っていた。


 そんな幸せそのものな光景に、一つの異形が割り込んでくる。その発端はセイムスの襟元に集まる小さな粒から始まった。


 ……ぽつ、……ぽつ。


 大きさは米粒よりも小さくて、形として見えるかどうか。だが、それらは明らかに意図を持ってセイムスの体表をピクピクと脈動しながら移動していく。


 やがてそれは次第に纏まっていき、一つの紋様を形作る。それは、【眼】だった。寄り集まる小さな眼が集まって、大きな眼になったのだ。 


 その【眼】は、ジャニスの姿をじっ…………と見つめる。あまりの長さに紋様が固まってしまったかに思えるほどの時が流れた後、朝陽が昇る前になって、それは唐突に消えていった。


 だが、その一つ眼は消える直前に、何か(わら)いでもしたかのように一瞬だけ細く絞られてから霧散したのだが……二人に知る(よし)は無かった……。



 ✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳



 翌朝、ジャニスは窓から差し込む暖かな陽の光を浴びながら目を覚ました。しかし夜着代わりのざっくりとした大きめのシャツと、膝丈のハーフパンツ姿で暫くシーツを被ってゴロゴロと寝返りをしていたが、心の中に染み込むような温かみを感じて眼を開けると、居る筈のセイムスの姿は見当たらなかった。


 ……はて、何でだろう……彼は自分が起きていると判っている時は必ずおはよう、と声を掛けてくる。だがジャニスは目覚めの前にそうした挨拶を交わした覚えはない。で、あるならば……



 きゃーっ!!そーじゃないそーじゃない!!折角頑張って朝御飯の準備をしたつもりが、セイムスに先を越されちゃってたら、何の為に仕込みを頑張ったか判んないよ~ッ!!


 ジャニスは一瞬の溜めの後、一気にシーツを跳ね上げて起き上がり、そのまま台所へと赴く……そして、


「や、おはようジャム!……どうしたの?そんなに朝から興奮して……」


 セイムスの声を聞き、顔を見た瞬間……拘っていたものが氷解し、どうでもよくなって……ボフッと抱き着いた。


「……あ、あの……ジャム……?」


「おはよぅ……シム♪」


 そのまま顔をもふもふと押し付けたまま、彼の匂いと温かさを堪能し、さっきまで考えていた仰々しいあれこれを忘れて……地のままで心地よさに没頭することにした。


 何故なら……ジャニスは悟ったのだ。好かれることは、好きになるよりも難しいけれど、互いに好きならばそれが一番幸せなんだ、と。


 セイムスが作ってくれたスープと、今から焼き目をつけるパンで朝食にしよう。二人で囲めば楽しい食卓になるのだから、と。


 もう迷わない!お母さんが教えてくれたのは細かい料理のレシピなんかじゃない。複雑な過程を踏んで到達するような、難解な終着点などでもない!


 セイムスが自分を好きで居てくれるなら、私は全力でそれに答えよう!……それが、その……何て言うの?……アレだよアレ……うん、そんな感じでキスより先だったりしたら……それは、まぁ……そのうちに、ねぇ……?






書いていて「ヒューマンドラマってこんな感じですか?」等とたまに思います。たまにはヒューマンドラマ枠を検索してみますかね。それでは次回もゆっくりと進んで参ります。

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