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「初心者VRMMO(仮)」小話部屋  作者: 神無 乃愛


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28/47

「嘘」にまつわるエトセトラ ――その二――

お待たせしました! やっとこ二つ目です

 (たもつ)の場合


 保はその日、四月一日であるということをすっかり忘れていた。というか、大量に入る仕事を捌くだけで精いっぱいだったため、曜日どころか日付の感覚も狂いに狂っていたというのが正しい。

 三月だ。美玖が十八になった。美玖と過ごすために目標としていた金額もたまった。

 あとはプロポーズだけ。それしか頭になかったのだ。


 保はすっかり忘れていた。美玖との結婚には大いなる壁あるということを。


「美玖、ただいま」

「保さん、お帰りなさいっ」

 最初に会った頃よりも明るい笑顔と血色のいい肌。保の顔が思わず綻んだ。

 もう少し後で、もっと雰囲気を出してと考えていたのはすっかり抜け、ポケットから指輪を出した。

「美玖もやっと十八になった。結婚しよう!」

 ……場所位考えればよかったかもしれない。徹夜明けのハイテンションが悪かったとしか言いようがなかった。


「え……えぇぇぇ!?」

 何故そこまで驚くのか、問いただしたくなる。付き合って二年半以上。何度かその話もしたはずだ。


「玄関先でいちゃつくでないわ。この年中脳内花畑男が」

「砂〇け婆、黙っててくんねぇか」

(たわ)け。ここは我個人所有の屋敷じゃ」

 少しくらい気を利かせてもいいだろ! と言いたいのだけは何とか堪えた。

「美玖よ。今日はエイプリルフールじゃ。こやつのプロポーズを真に受けるでない」

「え? あ、そうでした。今日四月一日でしたね」

 昨年、ゲーム内友人のエイプリルフールに引っかかった(という事になっている)美玖は、昌代の言葉に納得した。

「ちょっ!?」

「うふふ。エイプリルフールでも嬉しかったです」

 そう言って美玖は保から離れた。……指輪は保の手のひらの中だ。

「こんのぉ! くそ婆!!」

「褒め言葉じゃな。我を懐柔せんからそうなる。筆頭の保護者は我じゃ。そして美玖は未成年じゃ。我や禰冝田家の『自称保護者』たちを納得させい」

「納得してくれるならな!!」

 あの手この手で美玖と一緒にいるのを邪魔する奴らが。


 そして、今年のプロポーズも失敗に終わったのだった。


時期的には美玖が十八になった四月一日。つまりは、本編より少し未来の話です。2017/04/10現在

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