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転生しまして、現在は侍女でございます。  作者: 玉響なつめ


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 晩餐を共にと王弟殿下が仰ったことにプリメラさまがとても喜ばれた。可愛い。

 人数の変更とメニューの組直しをメッタボンにお願いしたところ、魚なのは変えずにボリューム満点にしてくれるという。流石だねこの男!

 とはいえ、仕事の合間に来てくださった王弟殿下は一旦晩餐をここで取る前に仕事をひとつ片付けてくると言い残して戻っていった。色々ありがとうございます。


「ねえ、ユリアの悩みは解決したの?」


「とは申しきれませんが……糸口は掴めたような気がいたします」


「良かった! やっぱりプリメラが相談に乗れたら一番だと思うんだけど、こういうのは人生経験豊富な大人の方がいいだろうと思ったの。叔父さまにお願いして正解だったわ!」


「ふふ、プリメラさまのそのお気持ちだけで私は幸せですよ」


 いや本当に。

 こんなに無邪気に心配してくれて愛してくれる子がそばに居てくれるだけでどんだけ癒されると思うのさ!

 最近じゃあディーン・デインさまとの文通も楽しいらしくて妬けちゃうことも増えたけどね。

 いやあ、でも可愛いよねえ。手紙が来ただけで喜んで、内容見て喜んで……本当にこの子天使じゃないかって思う日が増えてきてるの。

 私大丈夫かな!


「そういえば明日は新しい侍女が来るのよね?」


「はい、ピジョット侯爵家のご令嬢でスカーレットさまにございます。ただ、本人に事情があり出身を気にせず接して欲しいと侯爵家からお申し出がございます」


「そう、あんまり詳しく聞かない方が良いのかしら?」


「……いえ、プリメラさまにはこの王女宮の主として把握していただいた方が宜しいかと思います」


 いや本当は情けない話だからね。

 プリメラさまに聞かせたくはないけど……あのスカーレット嬢が猫被れるわけないし。そうしたら即行バレるじゃん? びっくりさせちゃうじゃん?

 それなら最初から覚悟してもらったほうがなんぼか楽なんじゃないかな! 主に私の胃が。


 というわけで、スカーレット嬢についてざっくり説明した。

 性格に難がある、貴族としてのプライドが高い、協調性が低い。

 その点で内宮では内宮筆頭と縁戚関係だったことから修正が利かなかったため王女宮へ転属となった。

 まとめるとこんな感じ!!


 話を聞いたプリメラさまは、元々大きなおめめを丸くして驚いているようだった。


「そうなの……侍女にも色んな人がいるのね! いいえ、ビアンカ先生から貴族の女性たちも個性豊かな方がたくさんいらっしゃるって聞いてるから、きっとそういうものだと思うけれど」


「個性豊か、そういうものだと思っていただければ良いかと思います!」


「え、ええ。わかったわ」


「当面、スカーレット嬢の教育に力を入れるつもりでありますのでプリメラさまには園遊会のお客様のお好みなど目を通していただきたいと思います」


「わかったわ」


 今回の園遊会、プリメラさまがホストとして接待する相手はなんとシャグラン王国からのお客様だ。

 大公妃殿下も今回の園遊会にご参加かと思いきや、あの方は以前の問題で蟄居命じられているようだったし向こうの国もバツが悪いんだろう。今回は王族じゃなくて向こうの大臣がやってくることになっている。

 当然来賓なわけだから、大臣とその家族、それと幾人かの貴族、その護衛とまあぞろぞろ。

 お招きする側としては好みなどを把握して会話を盛り上げないといけないから、プリメラさまにとってもこれは大きなお仕事なのだ。

 今まで深窓の令嬢として社交場に出てくるのはちょっとだけだったけれど、そろそろそうもいかないからね。今回からホストの一人として仕事を任されたとあって、プリメラさまの意気込みもそりゃもう半端ないからね。

 頑張っちゃうプリメラさまかーわーいーいー!!


「そういえばドレスのデザインが決まったのよ!」


「まあ、それは楽しみでございます」


「えっとね……このデザインにしたの!」


 いくつかのデザイン画がプリメラさまの所に提出されているのは知っていた。

 その中からお好きなものを選んでいただいて、そこから生地だの宝石だのが選ばれるんだけど。

 お針子のお婆ちゃんだけに革新的なものだろうと期待してプリメラさまが差し出したデザイン画を受け取る。

 胸元がプリーツになっていて、袖が腕にぴったりのほっそりなのにレース。

 ストレートのスカート部分にはひだを片側にだけ作るとか……お婆ちゃんこれはちょっと大人っぽくないかな? いやプリメラさまがこれがいいって言ったんだからいいんだけど。


「色はね、ちょっと落ち着いたオレンジにしようと思うの! それでディーン・デインさまからいただいたネックレスをつけたいと思うんだけど……どう思う?」


「よろしいかと。素敵なネックレスですし、お選びの色味でしたらきっとネックレスとも合います」


「そうでしょ!」


 うふふと嬉しそうに笑うプリメラさま……ああ、恋する女の子になったのねえ!

 きっとディーン・デインさまも園遊会にお越しになるでしょうから、ちょっとでも会話できたらいいのに。まあプリメラさまは王族としてのお役目があるから本当に挨拶程度かもしれないけど。


「会えるだけで嬉しいからいいの」


 私がついついそう申し上げたら、プリメラさまは笑ってそう答えた。

 ああ、なんて健気なんだろう!

 そうか、会えるだけでも嬉しいのか。これが恋する力ってやつだね!


 うんうん、わかる気がします。

 ……うん? わかるのかな私。


 まあそれはともかくとして、こうなれば全力で園遊会、私も頑張らねば!

 いや前から頑張るって言い続けてるけどね、こうね、言い続けないと頑張れないっていうか自己暗示が必要なわけですよ……。


 ほら、教育とか余計なお仕事増えましたし。

 そういや外宮の筆頭侍女から連絡ないんだけどまさかエーレンさんぶっちしてないよね……?

 そんなことになってたらまた余計な噂だけ飛び交って厄介なことになってから統括侍女さまに呼ばれるとかそんなオチになるんだからね……?


 ないよね?!


「ねえねえ、ユリア! 叔父さまが来られる前に髪型を変えたいんだけれど」


「はい、ただいま」


「そういえば今日の晩餐は何が出てくるのかしら?」


「本日はメッタボンが魚の料理にすると申しておりました」


「そう、叔父さまはとてもお疲れのようだから元気になっていただけると良いのだけど」


「……プリメラさまは本当にお優しいですね」


「みんなのおかげよ」


 うう……良い子や!

 相変わらず両陛下はこの可愛らしいプリメラさまをご存知なかろう。ざまぁ。

 おっとまたもや口が悪くなってしまいました!


「どのような髪形になされますか?」


「えっとね……えっと、ちょっと大人っぽいのがいい! 折角叔父さまと晩餐ですもの」


「はい、かしこまりました」


 まだまだ、子供だけどね!

 いいの、私の可愛い子だもの。大切に大切に愛でていくんだから。

 たくさん甘えて、たくさん幸せになってくださいね。


 ……園遊会に教育に、私も頑張りますからね……!!

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