表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生しまして、現在は侍女でございます。  作者: 玉響なつめ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

647/648

644

 そんなことがあった翌々日、なんと早速バルトチェッラ侯爵家から面会の申請が届きました。

 

 私に。

 私に!?


 と思わず確認してしまいましたが、間違いなくユリア・フォン・ファンディッドあての面会申請です。

 うーん、これは将を射んと欲すればまず馬を射よというやつでしょうか?


 スカーレットに詫びを入れつつ縁談を円滑に進めるために……とかそういう。

 まあ考えていてもしょうがないので受けましたよ!

 私も一言もの申したかったですからね!!


 といってもあくまでそれは私個人ではなく、私の立場……つまり王女宮筆頭としての責任からです。

 あちらもおそらくハンスくんの親という立場よりも侯爵家として私を訪ねてくることでしょう。


(はあ~……めんどくさいなあ!)


 正直忙しいんだからやめてくださいとしか思えませんが、こういうイレギュラーもあるのが仕事ってもんです。


「あの……忙しければ後日でもとのことですが、どうなさいますか?」


「いいえ、今から行きます。お待ちいただけるようお伝え願えますか?」


 面会室の役人さんには本当に昔からお世話になりっぱなしですよ。

 とはいえ彼らもそれが役目なので慣れた様子で戻っていきましたけどね……面倒な案件多いなとか思われていたらいやですよ、本当に。


 私はいくつかの仕事をライアンとスカーレットに割り振って、面会室に行きました。

 個室の方でお待ちと聞いて私がそちらに行けば記憶にあるとおりの優しげなオジサマ風の男性と、その男性をシュッとさせた容貌の方……多分息子さんですね!


 とにかく、バルトチェッラ家の男性が二人いらっしゃいました。

 あらまあ……私も他に人を連れてくるべきでしたかね!

 とはいえ面会室(こんなところ)で騒ぎを起こすほど愚かではないと信じておりますよ。


「お待たせいたしました。王女宮筆頭、ユリア・フォン・ファンディッドにございます」


「お役目中、ご足労をかけて大変申し訳ない。バルトチェッラ侯爵家当主、アントニオ・カミッロだ。隣は息子で次期当主のカリスト・トビアという」


「カリスト・トビアと申します」


「この度は、我が家の末息子が王女宮所属の侍女に対し大変失礼なことをしたと聞いて、その詫びにきた」


「さようですか。……どうぞ、お座りくださいませ」


 ちゃんと謝罪するつもりで当主と次期当主揃って……ですか。

 なかなかに今回のことを重く捉えていると考えて良さそうです。


 そして扉が閉まって全員が席に着くと、まずはバルトチェッラ侯爵が頭を深々と下げました。

 ついで、カリスト・トビアさまも。


「このたびは、誠に申し訳なかった。息子には厳しく申しわたし、今は自宅にて謹慎している。近いうちに領地に戻し、きちんと再教育を施すことを決めたことをお伝えするため本日はこうして恥を忍んで伺った次第だ」


「……承知いたしました。その謝罪は私が受け取ってよろしいのですか」


「本来であれば被害に遭った侍女である、スカーレット・フォン・ピジョット嬢に対し謝罪すべきということは理解している。だがあちらからすれば見知った者だからと気を許してくれた恩を仇で返す真似をしでかした者の家だ」


 見知った者だからと気を許した……っていうのはちょっと違うとは思いますが、まあ侯爵さまがきちんと(・・・・)考えておられることはわかりました。


 被害者に対して即座に動くのは当然としても、まず相手に謝罪をしたい旨と誠意を伝えなければならないのは大前提です。

 とはいえいきなり会いに行って謝罪するのって、相手の都合とかもあるでしょう?

 それに過去のスカーレットを考えると、一度嫌悪感を抱いたらずーっと拒否しそうじゃないですか。


 そういう意味でも間に人を挟む……それも彼女が耳を傾けそうな相手、つまり私を頼ったということです。

 加えて、ハンスくんの王宮侍女に対しての行動は許されざるものであり、今回私が苦情のみ(・・)としたことでバルトチェッラ侯爵家としては謝罪だけで(・・・)丸く収めることができるのです。


 人の目が多い面会室を使い直接当主が訪れたことも、それも次期当主まで連れて来たことも。

 私相手に面会を申し込んだことも、そうした打算もあるのでしょう。


「……きちんとしていただけると信じております。スカーレットには侯爵さまのお言葉を必ず伝えるとお約束いたします」


「重ね重ね、感謝する」


「縁談云々とご子息は仰っていましたが、騒ぎになる前に収束させたとはいえどこに人の目があったかもわかりません。当面はお控えくださいますよう」


「……承知した」


「ありがとうございます。私も今回の件を知られれば、方々(ほうぼう)から甘いと叱責を受けるかもしれませんでしたもの。侯爵さまのご理解をいただけて何よりですわ」


「ははは」


 乾いた笑いが返ってきたけど気にしません。


 これでよし。

 バルトチェッラ家としては次期王女宮筆頭を逃して残念かもしれませんが、万が一にもあの騒ぎを知った人がこの縁談を聞いたら『スカーレットがキズモノになったから責任を取らせた』なんて話になりかねませんからね!


 人の目があるところでっていうのは、そういう危険も孕んでいるものですから……どうしたって上に行くほどに妬まれるもの。

 スカーレットには傷一つなくプリメラさまの傍についていく侍女としてキャリアを積んで貰いたいなと思います!


 そのためなら私だって偉い人相手に嫌味の一つや二つ、釘の三つや千個は打ち込んで見せましょう!

 なんたって、今は私が筆頭侍女なんですから!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
こちらもよろしくお願いします!

魔法使いの名付け親完結済
天涯孤独になったと思ったら、名付け親だと名乗る魔法使いが現れた。
魔法使いに吸血鬼、果てには片思いの彼まで実はあやかしで……!?

悪役令嬢、拾いました!~しかも可愛いので、妹として大事にしたいと思います~完結済
転生者である主人公が拾ったのは、前世見た漫画の『悪役令嬢』だった……!?
しかし、その悪役令嬢はまったくもって可愛くって仕方がないので、全力で甘やかしたいと思います!

あなたと、恋がしたいです。完結済
現代恋愛、高校生男児のちょっと不思議な恋模様。
優しい気持ちになれる作品を目指しております!

ゴブリンさんは助けて欲しい!完結済

最弱モンスターがまさかの男前!? 濃ゆいキャラが当たり前!?
ファンタジーコメディです。
― 新着の感想 ―
いいぞユリア!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ