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(予定としては生誕祭までの間に諸々の事務を片付けつつ、プリメラさまのスケジュールを整えて……)
生誕祭の直前まで、準備は怠りませんよ!
念には念を入れて我らがプリメラさまを最高の淑女として送り出さねばならないのですから。
勿論、生誕祭の主役は王太子殿下です。
そして、フィライラ=ディルネさまです。
けれどやはりね、お仕えしている主人こそが最高の存在だと思って我らはお仕えしておりますのでね!!
当日の流れとしては、私も生誕祭のパーティーに参加しなければならないので総指揮をセバスチャンさんに託し、メインで動く役割はいずれプリメラさまの侍女となるスカーレットにお願いすることにしました。
その補佐にメイナです。
メイナの方が王女宮での勤務も長いですので、流れをよく知ってますからね。
プリメラさま付きとして動くようにすでにスカーレットには伝えてありますが、もう緊張してますから……。
メイナが補佐についてくれていればきっと大丈夫!!
(そういえばメイナについても考えなくちゃね……)
あの子は私についていきたいと言ってくれました。
しかしながら現段階で考えるに、勿体ないんですよ。
なにがって?
メイナの実力がですよ!!
王族に直接仕える侍女にまでなった子ですよ!?
自慢じゃないですが、私は王族の覚えめでたき侍女ですよ。
そしてその夫になるアルダールだって爵位持ち貴族になる近衛騎士ですよ。
でもね、しょせん領地なしの子爵家なんです。
決して階級として高くはないのです。
そこは自宅の大きさでもお察しの通りですが、雇うのもおそらく侍女よりランクが下であるメイド、それもオールワークスメイドという立場です。
正直忙しい役割ですよ。ええ。
王城勤務歴がそこそこ長く、平民ながらも王女の髪結いも任されるほど信頼されている。
宮の人数が少ないからこそってのもありますが、その分少数精鋭の一人として認識されている……そんなメイナを、たかが子爵家のメイドにしてしまうのは、気が引けてしまうでしょう?
(気持ちは……すごく嬉しいけれど)
メイナは私についていきたいとまで言ってくれて、本当に、本当に嬉しい。
だけど育てた側だからこそ、メイナの真価を理解してくださる家で働くまたは王城でこのまま勤務の方が絶対彼女のためになる……!!
(いや待てよ、アルダールがもしプリメラさまの降嫁までに伯爵に陞爵するなら……)
そうしたら私だって専属侍女の一人くらい許されるのでは?
王城のお給金ほど高くは出せませんけども! きっと!!
まああと三年近く猶予があるのだから、その間にあの子の気持ちが変わる可能性も考えて……でもそうなったらいいなあを夢に描いてみましょうか?
「ユリアさまー!」
「こらメイナ、廊下を走ってはなりませんよ」
「あっ、はいそうでした! でも大変なんですー!!」
「どうしたの、いったい」
こんな初歩的なミスをするほど大慌てするって、また脳筋公爵でも来たのかしら?
あの人突然来そうだものね……ってさすがにそんなことはないかあ。
「スカーレットに結婚の申し込みをしに来た人がいて!」
「ええ!? 告白でなくいきなり結婚の申し込み!?」
「それでスカーレットがその人を殴り飛ばしちゃったんですー!!」
「えええええ!?」
なにが! どうして!
そうなった!!
これは確かに大変です!!




