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そしてそんなこんなで迎えた婚約式。
日取りさえ決まっちゃえば後はあっという間のことでした。
周囲は今か今かと待っていた……みたいな空気でしたので、いざ『婚約式の日取りが決まったから前後でトータル五日間お休みください!』って言ったら一週間いただけました。
ええ……うん、喜ぶべき……?
五日間も何をするのかっていうとですね、移動距離があったからなんですよ!
それぞれまず実家に帰るのが一日、家族と共に目的地への移動が一日、式を執り行うのに一日、食事会をしてそれぞれ領地や王城に戻るってな感じです。
基本的に婚約式というのは両家が婚約をしましたと教会で報告して祝福を受けつつ貴族院に確かに両家で結ばれましたよ、そこから一年くらいで結婚するので不義理なことが発生したら訴えることが可能ですよという証明書に両家の当主が記入して提出します。
まあ基本的に必要なのは後者の書類なので、教会は余裕があったら結婚式を挙げるところの下見程度に行っておくといいよって感じですかね。
熱心な信徒さんばかりじゃありませんので……。ええ、はい……。
ちなみに私たちの結婚式を挙げる予定である教会は例の大司教さまがお若い頃に修行したという教会です。
婚約式についても勿論オッケーいただいております!!
ちなみに貴族家は大体そうした形式的なことを終えるとパーティーなどを開いて婚約した夫婦を祝いつつ、婚約指輪のお披露目……なんてことをいたします。
今回の私たちは身内だけを招いてなので、そんな格式張ったことはしません。
レストランで和気あいあいとお食事するだけですね!!
お金持ちだとパーティーを、高位貴族ともなると夜会を開いちゃうこともあるんですよ。
いやあ、無縁だとばっかり思っていましたが……今後は私たちもお招きされる側の立場になるので、しっかりと流行にはアンテナを張っておきたいと思っております。
いつだってプリメラさまのお役にも立つでしょうし!!
「……それにしても驚かされたね」
「そうね、まさか大司教さまが偶然にもいらっしゃって、これも縁だからと私たちの見届け人になってくださるだなんてね……」
ふふ、と乾いた笑いが出たことは許していただきたいところ。
まさか婚約式行うと思ってそれなりのドレス着てドキドキしながら教会に足を踏み入れたら大司教さまがいらっしゃるとは思わないじゃないですかー、ヤダー。
それもとっても素晴らしい笑顔で『なんと! 今日が婚約式だとは……そのようなおめでたい日に出会えたのも何かのご縁、この神の僕が見届け人となりましょうぞ』とか言い出しちゃって。
この国でも聖人として名高い大司教様にそんな風に仰っていただけて誰が断れるでしょうか?
(ああ……善意だとはわかっているけど、これで余計にまたなんか変に思われちゃうな……)
国王自らが認めたカップルってだけでも貴族たちからあれこれ思われているのにそこに今度は『大司教が祝福した』が加わったんですよ。
まあ一般的に見てもとてもありがたいことですので、良い門出の一つとして思い出にいたしましょう。
余談ですが、オルタンス嬢とメレクの婚約式はまだ執り行っておりません。
オルタンス嬢が卒業するちょっと前に行う予定で今は来客の調整をしているんだそうです。
まあ姉の結婚が突如として入ったので、今となってはむしろよかったと思います。
姉弟の順番で婚約式が行えるということで、両親も周囲からたくさんお祝いされたそうで二人とも『びっくりしたけどとても嬉しかった』と仰ってました。
「婚約指輪もみんなに褒めてもらえて、嬉しかった」
「……そうだね」
この国では婚約指輪は二人の結びつきを示すものとして、男女ともに交換する形で渡しあって誓います。
結婚式でも同じようなことをするのでなんで二回も? って思われるかもしれませんが、魔法の力がうんたらかんたらでより強固な契約を結ぶのが結婚で婚約はその土台を作っているとかなんとか聞いたことがあります。
今よりももっと魔法が重要視されていた昔、貴族といえば魔力を……みたいなところがあったといいますが、まあ割愛!!
とにかく、これでアルダールと私は晴れて婚約者となったわけです。
いや、最初から婚約者なんですけども。
ああややこしい!!
それとは別に婚約指輪を堂々とつけられるようになるのは嬉しいですけどね。
デザイナーさんの計らいで、結婚指輪と連ねてつけると華やぐデザインにしてもらったのです。
侍女のお仕事中はネックレスにすることを前提にしておりますが、結婚式の日にこの指に重ねてつけるのだと思うと今からワクワクしちゃいますよ。
(しかし、実感がないわあ)
すでに半同棲ですもんね……今更感が半端ないっていうか。
嬉しいんですけどね? 当然ながら周囲に祝われて式も執り行って、書類もしっかりサインして提出の運びとなったわけですから誰にももう文句も……元々言えないだろうし言わせないけど!!
「次は手早く結婚式の準備ね……」
「はは、なんとも忙しない話だ」
今は両家の親たちが楽しげにお酒を飲んでいるところで、私たち二人は泊まっている宿の中庭で少し酔い覚まし。
アルダールは一切酔っていないんですけど、ついつい勧められて私が飲んでしまいましたから。
「準備期間をもっと取りたかったという気持ちもあるし、早く結婚してユリアのことを妻と呼びたい気持ちもある。複雑だ」
「……そうね、でも今ももうそれっぽいけれど」
「なら、もう我慢をしなくてもいい?」
「それは……」
何が、なんてさすがに私も聞いたりなんかしませんけどね?
そんなどストレートに聞かれても私としては目を逸らしてしまうというか何というか。
「……だめ、じゃ、ない? ような、その……でもまだ覚悟が」
「ふっ」
「! か、揶揄ったわね!?」
「はは、ごめん。真剣に悩んでくれるところがとても可愛くて、つい」
堪えきれないといった感じで吹き出したアルダールをつい睨み付けてしまう私は、悪くありません。
まったくもう、人が真剣に答えているというのに!!
「……大丈夫、もうユリアが私のだってわかっているから我慢できるって前にも言ったろう? 結婚する日が待ち遠しいなと思うだけだよ」
「アルダール……」
優しく笑うこの人と、生涯を共に歩くということが。
どれほど幸いなことなのでしょう。
私は改めて、幸せを噛みしめるのでした。
あんまり婚約式までの話を書いていても飽きちゃう人もいるかなということでサクサクと。
いつかこの辺は書籍になるなら大司教様も出してあげたいよね!
「転生侍女」書籍第11巻は3月発売予定です!
とうとうプロポーズ巻……!!




