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11/12 コミックス3巻発売です! よろしくお願いしまああああす°˖✧◝(⁰▿⁰)◜✧˖°
結局アルダールとは食堂ではなく、メッタボンに料理を作ってもらって私の部屋で夕食を食べることにしました。
メッタボンが気を利かせてくれて全部作ってくれた上に運んできてくれたので私はすることがない……! いえ、食後のお茶は淹れます!!
それはともかく。
食事をしながら、私はアルダールに事前に話す内容を決めていた通りの説明をして、休みが合わなくなったことを謝罪しました。
アルダールは想像通り、仕事なら仕方がないと納得してくれたのでほっと一安心です。
「王太后さまから実は手紙をいただいてね、おおよそは聞いているよ」
「そうだったんですか」
「残念ではあるけど……でも公務の日程がまた改めて公表された後に休みを合わせられるよう、手配をしてくれたそうだから」
「それは知りませんでした」
王太后さま……?
どこまでも手厚いフォローなのですが、どうしましょう、デートのお膳立てをしてもらっているようで心苦しい……!!
いやむしろデートの予定がばれててそれがダメになったからって休みを合わせるために上の人たちが労を執ってくれるってとんでもない事態だな?
一応役職持ちとはいえ、そこまでしてもらっていいもんなのか。
っていうか、プライベート把握されすぎじゃない!?
「それじゃあまた日程を合わせるのは今度にしよう。しばらくはユリアも忙しいんだろう?」
「ええ、まあ……」
主にキャンセル関係の事後処理ですね。
一応最初の発注だけでなく、変更があったときも速やかにできるようにしてあったとはいえ……それでもキャンセル関係はトラブルもつきものですから。
今のところデザイナーさんの問題以外起きてませんが、他にもなにかあるかもしれないと心構えしておくことが大事です。
私は責任者ですからね。
なにかあったらちゃんと謝罪をしに行かないといけません。
……そこは気鬱であるので、できればなにも起きないでほしいです……。
「王太子殿下のご婚約者も来られるってことで、護衛騎士団が張り切っていたよ」
「まあ」
「訓練にも気合いが入っているから、近衛騎士隊も負けていられないってうちの隊長が張り切っていてね……困ったものだ」
苦笑するアルダールに、それで疲れているのかと私は納得しました。
触発されて切磋琢磨するならば良いこととは思いますが、それでも訓練する側は通常の勤務に加え訓練が激化したなら疲れるでしょうね。
少し心配ですが、アルダールがなにか愚痴を言いたい様子でもないので私も流すことにしました。
ちなみにレジーナさん達もプリメラさまの初公務ということで、メッタボン情報によるととても気合いが入って毎日すごく訓練しているらしいです。なんでも生傷が絶えないとか。
メッタボンは心配するっていうよりも、レジーナさんが生き生きしているのが楽しそうでなによりだって感じで……あれ、ナチュラルに惚気られたんだな? 私。
「そういえば私は王太子殿下のご婚約者さまにお目にかかったことがないけれど、どのような方なのかしら」
そう、婚約が決定したパーティーに南国の姫君がお越しだったのはあの生誕祭の時です。私とアルダールは観劇に出ていたので話を耳にしただけですね!
その後は上の方々による協議の結果、王太子殿下のご婚約者にはあの方以外おられないと満場一致で決まったとか決まってないとかそんな話を聞いただけです。
今回のご公務でプリメラさまとのお時間を希望されているとのことでしたから、私としては専属侍女としてしっかりきっちり準備をしたいと思っております。
詳しい情報は統括侍女さまが後日教えてくださるらしいのですが、なにやらお忙しいらしくてなかなかお時間取っていただけないのですよねえ。
噂だと、娘の初公務についていきたいと国王陛下が駄々をこねていてそれを統括侍女さまが叱っているんだとか。
なんてね、さすがにないでしょ親馬鹿だからって。
……ないよね?
(王太子殿下もご参加なさるかもしれない上に陛下がこっそりついてきているとかなにそれカオスすぎる……)
自由すぎる王室だと誤解されちゃう!!
もし本当のことだったとしても、統括侍女さまがナントカしてくださると信じています。信じていますよ統括侍女さま!
国王陛下のプリメラさまへの溺愛っぷりを知っている身としては、本当の話なんじゃないかと実はドキドキしています。
「私も同僚から聞いた話だけど、随分気さくなお方らしい。なんでも南の国は“開かれた王室”と呼ばれていて、国内の視察などを多く行い直接民と言葉を交わすことを尊んでいるそうなんだ」
「へえ……随分、国民と距離の近いお国柄なのですね」
「うん。まるごと国が家族であるというように仰っているらしくてね、あまり大きな国ではないけれど、団結力が強いという話だ」
「なるほど……ではアットホームなお出迎えをした方が喜ばれるかもしれませんね」
婚約者とその家族に会いたいからと遠路を来てくださるのですし、本心からプリメラさまと仲良くなりたいというならば大歓迎です。
プリメラさまも将来の義姉になる方と仲良くなりたいと仰ってましたしね!
これは俄然やる気が出てきましたよ……!
(お茶やお菓子はあちらのものとこちらのものを両方お出しできるように手配しなくては。リジル商会を経由すれば、公務先に届くようにできるはず……)
頭の中で計算しつつお喋りに興じていると、気がつけば随分遅い時間になってしまいました。
なんでこう、楽しい時間って過ぎ去るのが早いんでしょうね。
明日はまたキャンセルのトラブルがないか祈るようですよ……とほほ。
「それじゃ、また明日」
「あっ、待って。これ……あの、休憩の時にでもつまんで」
「ありがとう」
アルダールは嬉しそうに中を覗いて目を丸くしました。
私の『とっておきの』お菓子です。彼のその表情を見て私はやりきった気持ちになりました。
それは琥珀糖なんですが、苦労したんですよ、この色出すの!
「……わあ、すごいな」
「アルダールからもらったブルーガーネットをイメージしてみたの。上手くできたと思うんだけど……」
深みのある青い色ってなかなか難しいのです。
前世だと青い食紅とか色々あったけれど、こちらの世界では難しいかなと苦労した結果……そう、またしてもメッタボンを頼ったところ見つけたのですよ!
バタフライピーみたいな植物があるって教えてもらって早速手に入れてきてもらったんですけど、ちょっとメッタボンほんとすごすぎない?
ちなみに安全面ですが、食品加工系で生み出された品種なんだそうです。
メッタボンによると『ダイエット食品を作るのに人気が出ると思ったら人気が出なかった植物』らしい。
ああ、うん。青って食欲減退色だからね……。
でも、一部の菓子職人達には需要があるのでそちらの知り合いに頼んで分けてもらったと言う話でした。本当メッタボンさまさまです!
まあそれはともかく、おかげで青い色の琥珀糖が作れたんですよ!
この色だけは他の人に食べさせておりません。
「ありがとう」
嬉しそうにそう言ってくれるアルダールに、私も嬉しくなりました。
それじゃと出て行こうとする彼をドアまで見送って気をつけてと言おうと思ったのに、私は気がつかないうちに彼のマントの裾を捕まえているではありませんか。
「……ユリア?」
「あっ、いえ、これは。その……」
アルダールが驚いた顔してますけど、自分でもびっくりですよ!!
ぱっと手を離したものの、上手い言い訳が見つかるはずもなく。なんせ私自身、無意識だったので……。
「その、名残、惜しかった……もの、で……」
アルダールの寝顔を堪能できたのは嬉しいですけど、やっぱりちょっと寂しかったっていうかね。私が待たせたのが悪いんですけど。
だからなんというか、そんなことを言われてもアルダールは困るだろうなと思って謝罪しようと顔を上げた私に彼はキスを落として抱きしめてくれました。
「うん、名残惜しい。だから、明日も夕飯を一緒に食べよう。今度は寝たりしないから、どうせだったら外にでも食べに行こう」
「え、あの、でも忙しいでしょう」
「だからこそ、きみとの時間は大事にしないといけないからね」
今度こそそれじゃと言って去って行くアルダールに、私はドアが閉まってからへたり込みました。
なんなんでしょう、なんでああいうことがさらっとできるのか……!
悔しいなあと思いながら、嬉しいと思う私はきっと重症なんでしょうね。




