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転生しまして、現在は侍女でございます。  作者: 玉響なつめ


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 よもや恋愛相談をする側になるなんて、過去の私は思っていなかったでしょうね……まあそういう意味では『イケメン彼氏ができる』なんてことも予想外でしたけど。

 でもさすが年上の人妻、ビアンカさまは話を聞いても笑ったりなどせず的確にアドバイスをくれました!

 照れるのは仕方ない、でも恥ずかしいなら恥ずかしいで正直に意見を言うことが大事だと教わりました!

 それでも無理になにかをさせようだとか、いやだと思うことを強要されるのであれば逃げることだと強く、強く念を押されました。


(……ビアンカさま、なにか誤解をしてらっしゃるような気がしないでもありませんが)


 アルダールにいやなことは一度もされてませんし、なにかを強制されたことはないかなと思うんですよ。いやでも私からキスをするとかは無理。まだ、無理です。

 さすがにその辺をぼかして相談したからいけないんですが……ごめんねアルダール!


 ビアンカさまは私の相談を聞いてくれて、少し世間話をした後、帰って行きました。

 何でも今夜はどこかで晩餐会なんですって。面倒だってため息を零すアンニュイ美人でしたが『あそこのドルチェ、まるで美味しくないのよねえ……』って言葉は聞かなかったことにします。

 大好きなドルチェを目当てに行かないと社交界なんて面倒なことはやってられないとかそんな感じなんでしょうが、せめて声に出さずにお願いします!

 私の前だから本音を零してくれたんだろうなって思うと嬉しいんですけどね!!


 ビアンカさまが帰った後の片付けをしていると、ノックの音とともにスカーレットがやってきました。入室して綺麗なお辞儀をする姿は、もう問題児などと言われていた面影がなく立派になったものです。


「失礼いたします、ユリアさま」


「あら、スカーレット。なにかありましたか?」


「先ほど王弟殿下からのお手紙が届きましたのでそれをお持ちしましたわ! 今セバスチャンさんは手が離せないとのことでしたのでワタクシが代わりを任されましたのよ」


「ありがとう」


「どういたしまして!」


 いや、手紙を届けるだけでそんな鼻高々になるとかどういうことなのって思うじゃありませんか、でもこれがまた褒められたい子供みたいで可愛いんですよねえ。

 彼女も理解しているのか、王女宮の中でしかこういう行動はしません。

 内緒ですが、スカーレットはセバスチャンさんを尊敬しているようですので、その代わりって言いたいのでしょう。

 セバスチャンさんは厳しい指導をしますが、大変頼りになる方ですので! 私も勿論尊敬しておりますとも。


「プリメラさまは?」


「まだお戻りになっていませんわ」


「では、スカーレットは元の業務に戻ってちょうだい。私もこちらを片付けたら一度そちらへ行きます」


「かしこまりました」


 スカーレットが去ったのを確認してから、私は手紙を広げました。

 シンプルな封筒に一枚の便箋、その中央に『明日の昼に来い』とだけ。

 どこにだ。

 思わず心の中で突っ込みましたね!

 来いってどこにだよ、軍部棟にある執務室でいいんだよね?

 これで行ってみたら実は中庭でしたとか言われたらただただ恥ずかしいんだけど?


(……まあその際は、この場所指定がない手紙を理由に私は悪くないって言い張ろう)


 ビアンカさまが大体教えてくれたけれど、王弟殿下に聞きたいこともあるのは変わらないし。主にパーバス伯爵家のこととか、近衛騎士隊についてとか。

 なんだったら国王陛下の様子も教えてくださってもいいんですよ!

 陛下がなにかを決めているってんなら私も色々覚悟が必要でしょう。でもまあ、あの溺愛パパなところからプリメラさまがいやがる……つまり、お気に入りの侍女である私を危険な目に遭わせるとか遠ざけるとか、そういったことはしないはず。

 ……だよね?


(まさかと思うけど、陛下がナシャンダ侯爵家に養女として行けとか命令してきたらどうしよう。それならエイリップ・カリアンさまが今回おとなしく引き下がったこともうなずけ……いやいや、そんなに公表されてる話じゃ無いんだから違うな)


 色々炙り出しがあった、で、主導は宰相閣下だった。

 まあそこだけははっきりしたし、そっちはもうほとんどなんとかなってるみたいだから私は基本的に単独行動を避けて生活すればいいってことなのは間違いない。


 次の問題はパーバス伯爵家への弔問だけど、そこはキース・レッスさまがご一緒してくださるってことでバッチリだと思うし。

 王弟殿下には護衛の件でお願いもするつもりだけど。


(本当はメッタボンを連れていきたかったけど、いろんな面倒ごとがあるみたいだからここは上の人を頼ったってバチはあたらないわよね)


 私自身のことも大事ですが、お義母さまになにかあってはいやですからね!!

 しっかしこんなことを思うのも失礼かも知れませんが、あの妖怪みたいなパーバス伯爵さまもやっぱり人間だったんだなあ……。

 見知った人の不幸というのは、相手にいい思い出が無くてもやっぱりちょっといやな気分になりますよね。


(……まあ、それもこれもお義母さまから連絡が来てからのこと。それから考えましょう)


 ちょっと気分が落ち込みそうです。ここのところ楽しいことが少なかったせいですかね……ビアンカさまが来てくれてかなり楽しかったですが、早くこういった面倒ごとを終わらせて楽しい計画を実行したいものです。

 ビアンカさまたちとおでかけとか、お義母さまとお買い物とか、メレクとオルタンス嬢の結婚式とか!

 勿論、アルダールとのデートだって楽しみですよ? 今度はどこに行こうかなあ。

 これだけ迷惑をかけられてるんですから、アルダールも私もちょっとくらい休暇をいただけちゃったりしないですかね。もしくはボーナスでもいいです。


 ビアンカさまが宰相閣下に働きかけてくれるとは言ってましたが、宰相閣下のチョイスがどんなものなのか不安ですね……無難にドルチェ詰め合わせとかでいいですよ……?


「あっ、ユリア!」


「プリメラさま、おかえりなさいませ」


 あれこれ片付けてから私もプリメラさまのお部屋へ行くと、ちょうどプリメラさまがお戻りでした。ぱっと笑顔を見せてくれるその姿、癒やしです。

 ちょっとした憂鬱が吹き飛びます。やっぱりプリメラさま効果は偉大だった。


「ビアンカ先生とのお話はどうだった?」


「はい、楽しゅうございました。ただ、やはりお忙しいお方ですので次のご予定が……」


「そうよね。ビアンカ先生、本当に大変そう。わたしもディーンさまの妻になったら、ビアンカ先生みたいに社交を頑張らないといけないのかしら。……できるかなあ」


「プリメラさまでしたら大丈夫ですとも。ユリアが保証いたします!」


「本当?」


「はい。それにご夫婦になってしばらくは、きっとディーン・デインさまと一緒に社交をすることが多いかと思いますので助け合えば良いのだと思います」


「そっか、そうよね!」


 いやあ、プリメラさまとディーン・デインさまだったら大丈夫だと思いますよ。

 周囲がその初々しいカップルのあまりの微笑ましさに浄化されちゃうかもしれませんけど!!


 ……でも、そういう意味で言えばですよ。

 私とアルダールが結婚したと仮定して、彼が分家当主となったら私はその妻として社交をこなすということがあり得る……?

 本家当主ほどではないとわかっちゃいますが、プリメラさまが不安に思うよりも先に、私はもう少し淑女として社交界に慣れる必要があるのかもしれない、などと今更思い始めるのでした……。


 いや、うん!

 なせばなる!!

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