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転生しまして、現在は侍女でございます。  作者: 玉響なつめ


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 現れたニコラスさんが、室内に入ってきて後ろ手にドアを閉める。

 そして優雅にお辞儀をする姿は大変悔しいことに様になっている。


 ……黙ってればこの人、美形なんだよな。やっぱり。

 この国の美人率ってどうなってんだろうね? ほんと右を見ても左を見ても美形ばっかりとはけしからん!


「何か御用ですか、ニコラス殿」


「いえいえ、少々騒ぎがあったと耳にいたしまして。ユリアさまの御身がご無事であることを確認しにまいった次第ですよ」


「……そうですか」


 わざとらしい!

 わざとらしすぎる!!


 どう考えたってタイミングが良すぎるっていうか見てたのかって問い詰めたくなるほどのタイミングでの来訪ですよね! しかもこの笑顔。胡散臭い。


「そのご様子ですと、まだ統括侍女さまへのご報告前……といったところでしょうか?」


「よくおわかりですこと。……御用向きを伺いましょう」


「さすがに理解が早くていらっしゃる」


 ふっと息を吐き出すようにして笑ったニコラスさんが賛辞の言葉を述べるけど、絶対それ心の底から思ってるとかじゃないって私知ってるからな? そういうとこだぞ?

 彼はゆっくりとした足取りで私の方に歩いてきた。

 机をはさんでいるその距離の分が私の安心の距離ってことですかね、まあ必要以上に近寄ってくる理由もないし、ここは私の執務室でニコラスさんが締め切ったおかげで誰かが来るとすればノックが聞こえるはずだから、普通の声音なら外に音が漏れることもない。


「それで?」


「そうですねえ、端的に申し上げましょうか。タルボット商会はこちらの味方ですよ。今はね」


「……含みのある言い方ですこと」


 なるほど、わざわざ説明に来てくれたってことは……私に、このことを誰かに報告されたくない、と。名前を出していたから統括侍女さまかしら?

 いやもうね、そういうなんか……裏のやり取りとか駆け引きとか、プリメラさま絡みじゃなかったらノーセンキューなんでお引き取り願いたいんだけどきっと聞いてもらえない。知ってた。


 とはいえ、私も筆頭侍女ですから知っていた方が良いかも(・・)レベルの情報ならば一応知っておいて情報の取捨選択をするべきなのでしょう。後でセバスチャンさんに相談です。私は独断で何でもやるタイプではありませんからね!


「タルボット商会は貴女に恩があるんですよ」


「……」


 またそれか!

 いやさっき似たようなことを本人に言われましたよ、とは告げずに私はただ視線でその先を促せば、ニコラスさんは私の反応が思っていたものではなかったのだろう。つまらなそうに肩を軽く竦めてみせた。……わざとらしく。


「以前、シャグランの手のものが我が国に入り込み、闇賭博を開いていた事件。シャグラン側の宝石取引の関係に伴い金を貸す業務を手伝った(・・・・)タルボット商会はそれ相応に国に対して罪を償うこととなり事業を縮小した……というところまではご存知でしょう?」


「ええ。そしてそれを盾にメインで取り扱っている宝石関係の取引でシャグランに対し随分有利になったんだとか?」


「その通り。事業縮小は確かに痛い話ではありましたが、タルボット商会としては自分たちが得意分野としている宝飾関係に一点集中して経営を立て直すことができたのは良い機会だったと思っているようです」


「……そうですか」


 いやだからね、それを勝手に私のおかげみたいな扱いにするのやめてほしい。ほんと止めてほしい。恩ってなんだ!!

 だってあれ、結局のところ私がしたのはお父さまが闇賭博に顔出して大公妃殿下と会って借金しただけ(・・)ってのを証明したものだもの。陰謀とかは暴いてませんから! 残念!!

 とはいえ、前々から調査していて国がそれを暴いたっていうのを大々的には公表しないものなのよね、これが外交的なやりとりを含んでいるってことはうっすらと聞かされているし、それ以上は聞かないように言い含められているし。

 私としても危ないことに首を突っ込むほど好奇心旺盛なタイプでもないんで、それで良かったんだけど……まさかここにきてそれを蒸し返されると大変座り心地が悪いって言うか。


 そういう細やかなところもこの男、知っていてわざと言っているよね……性格悪い!


「タルボット商会としては国に対して叛意なし、ということで心証をよくしたいがために何か行動をしたかった。貴女のおかげで事業が縮小しても損は少なく済みましたしね、そこであの娘のお目付け役を買って出てくれたというわけですよ」


「……お目付け役……」


「そう、市井のことにも通じており、ある程度好き勝手させつつ他の貴族たちへ失礼にならない程度の品をそろえさせたり格というものを教えたり、そういう世話人ですね。ウィナー家は寄親が残念ながら今も見つかっておりませんから」


 つまり、国として、というのは憚られるけど……上の方々はそろそろウィナー家に対して公式には支援を打ち切る方向で動いているってことなのかしら。

 英雄は確かに爵位を与えられ、邸宅を与えられ、何年間かまでは知らないけれど毎年報奨金が与えられるほかに騎士として取り立てられているのだし、その娘に対しても礼儀作法の教師をつけた上で学園への入学も約束しているのだから十分といえば十分なのだけれど。

 寄親が見つからないままに放置というのはさすがに外聞が悪いし、ミュリエッタさんの暴走っていうのか、あれも叱責だけで今の所は済ませるようだし……。


(国に取り入りたい商人との裏取引としては、妥当……なのか?)


 ただそれは一体どこの誰までが知っている話なのかでだいぶ違ってくると思うんだけどね。

 私が何も言わずにニコラスさんを見つめると、彼はわかっていますよと言わんばかりの笑顔を私に向けた。


「このことは王太子殿下と王弟殿下はすでにご存知です。ですのでそちらに報告の必要はございませんよ。……ああ、でもパーバス伯爵家の青年についてはご報告申し上げてもよろしいかもしれませんね」


「そちらもご存知でしたのね……?」


「ユリアさまがお望みとあればボクが対処いたしますが?」


「いえ、必要は……そうだわ、もしご存知ならば今パーバス伯爵さまが健康を害していらっしゃるって話をニコラス殿は聞いたことがあるかしら?」


 っていうかむしろ知っているんだろう。

 そういう風に目で訴えると彼は糸目を更に細めてにんまりと笑った。

 わぁ、悪役っぽい……味方、味方だよね!?


「ええ、ええ。存じておりますとも。ボクを頼っていただけたこと、大変光栄に思います」


「そ、そうですか……ではお願いいたします」


 頼りになるんだろう。

 実際能力は高いし、王太子殿下みたいな実力主義者の専属執事なんだから間違いない。


 だけど、こう……こうね、なんかね!?

 私とは相いれないタイプだよね……!!


 しかし聞いてみればなかなかちょっと一悶着ありそうな気がしてならない。

 パーバス伯爵さま、あんまり具合がよろしくない。ってことは当然次期領主となっている、お義母さまの兄が跡目を継ぐわけだけど……そうなると繰上り式にエイリップ・カリアンさまも次期領主になるわけで。

 騎士団に所属したばかりだし、代替わりが発生してすぐ辞めて戻るとは思えない。

 その上代替わりっていうのは正直お金もかかる話なのだからあちらとしては資金繰りが始まるってことは、ファンディッド家にも親戚なんだから祝い金をたんまりよこせとか言い出しそうだなあ。

 ちなみにファンディッド家はセレッセ家という後ろ盾がいるのでお金もかかるけどそれ相応に……ね? そういう感じらしい。ほら、結婚したらすぐ代替わりですから。

 持参金とか、色々。色々あるんです!!


 パーバス家にはそれがない。

 となると分家や親戚連中から……となるのが妥当でしょうね。


(タルボット商会も、パーバス家と繋がりがあるようだし)


 ……今のお義母さまなら、大丈夫だと思うし問題はないと思うけど。

 やっぱり、メレクにも念のため一筆入れておきましょうかね。

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