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転生しまして、現在は侍女でございます。  作者: 玉響なつめ


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8/10に発売される2巻の情報を活動報告にも載せさせていただきましたー!

今回の巻はスカーレットがいっぱいですよ!(・∀・)

 新年祭の後、私の心中は複雑です……いえ、幸いというかなんというか、アルダールの方はお仕事が忙しいらしく今はお互いの時間が合わなくて今のところ私の心がなんとか平和です。

 いえ、避けたいわけじゃないし会いたい気持ちはあるけどどんな顔して会えば良いのかわからないっていうか……だからってこのまますれ違いっぱなしっていうのもよくないんでしょうね。

 ほら、前世だと『一緒にいる時間が減ってすれ違いが増えると良くない』って雑誌とかにでかでか載ってたりしたじゃないですか。

 ゲームとか小説とかでもそういうシチュエーションで「どうせ浮気してたんでしょ……!?」とか疑心暗鬼になるパターンとか読んだことがある気がする!!


 いや、まあそういうことにはならないと思いますが。

 思ってますが。信じてますが。でもそうなったら嫌だし? 実際アルダールには綺麗な人とかが選り取り見取りで寄っていく可能性があるわけだし?


(でもだからって、うん……ほら、あれはさあ)


 恋人としてステップアップを、と望んでいたわけですが……なんか何段階も飛び越えてしまった気がするんですよ、まあ殆ど自分のせいっていうかなんていうか。

 あそこでセバスチャンさんの制止が入らなかったらどうなってたんでしょう?

 というか、アルダールのあれは本気だったのか、あの場の勢いというやつだったのか、いやそういうのを確認する術はないっていうかああーもうこれなんだどうしたらいいの、どう処理してるんですかね世の中の女性陣!!

 さすがにこれは誰かに相談ってわけにはいかないし、物語とか本とかでわかる話でもないし!?


 ちなみに、この国では婚前交渉……というのも割と寛容っていうか、だからまあアルダールがあの場でああいうセリフを言ったところで恋人なんだからおかしい話じゃないっていうか……。

 なにせ貴族としての習わしでは婚約を一年以上。これが前提で結婚できるっていう感じなのでほら、一応気をつけてる? っていうか?


 うん、私も令嬢としてそういうのは一応家庭教師に知識として教わりましたから知ってますけどね。まさか自分の身に降りかかるとなるとこうして結局混乱を極めているのでなんともかんともしがたいです。

 とはいえ次に会った時には普通に会話できるよう、極力挙動不審にならないように努めなくては……!!


「ユリアさま? 今よろしいかしら?」


「ええ大丈夫よスカーレット」


「何か大事な考え事ですの? 随分と考え込まれておられるようでしたから」


「個人的な事ですから大丈夫。貴女が戻って来て書類を分担してくれるので、考え事をする余裕ができたからなんだけれど……心配してくれたの? ありがとう」


「そっ、そんなことはない……わけではないですけども」


 どっちだ!

 思わず突っ込みそうになったけど微笑ましかったので黙っておくことにしました。

 

 そう、私がこんな風にのんびり悩んでいられるのも、というか暇を持て余してついつい考え事をしちゃうっていうか……いやそれは自分のダメなところですね。

 スカーレットがね、戻って来てくれて早速書類をやるって言ってくれたからなんですよ。

 まあ新年祭が終わったとはいえまだまだ国内はお祭りモード、さほどお仕事があるわけでもなく書類のほとんどを彼女に任せて私は最後の確認とサインだけなものですから。

 いやあ、お仕事のできる後輩を持つと先輩としてはありがたいものですね……、いやでもこんなことばっかり考えている自分がちょっぴりいやなので、お仕事残してくれると嬉しいんですけどね?

 セバスチャンさんとメッタボン、あの二人とも顔を合わせづらくてですね……。


(でも逃げてばっかりもいられないしなあ)


「……ワタクシで良ければ相談にのりましてよ?」


「ありがとう、スカーレット。……そうですね、スカーレットは上のご兄姉がいらっしゃるのでしたね。顔合わせの会、というのはどのようでした?」


「え? ああ……そうでしたわね、ユリアさまの弟君(おとうとぎみ)が正式にご婚約するのでしたわね! おめでとうございます」


「ありがとう。顔合わせの会についての話を、帰省した時に話し合うのだと聞いてはいるのだけど……やっぱり事前に知りたくて」


「そういうことでしたらお任せくださいまし」


 ふふん、と胸を張ったスカーレットはやっぱりちょっと変わったよね、初めて会った頃に比べたら。

 あの頃に比べると化粧は落ち着いているし、高飛車な態度も落ち着いて、こうして仕事もして……元々ちょっとわかりづらかった優しさも、態度が落ち着いたからかずっとわかりやすくもなって。


 はあ……もう最初はこれでもかってくらい心配したけど、今では可愛い私の後輩ですよ!

 すっかりメイナとも仲良くなってその姿を見るだけで癒されますからねー。

 スカーレットも戻って来てメイナの姿がないのがちょっと寂しそうだった、なんていうのは私の心の中にだけしまっときます。

 

「やはり主役は婚約をする人間ですわ。相手方を持ち上げないと話自体無くなってしまうこともあるというのは当然ご存知かと思いますから、家族にできることはせいぜい当人が変なことを言い出したりしないように注意してテーブルの下で時に足蹴にするくらいのことですわね」


「え、いえ……足蹴?」


「ワタクシの兄上はちょっとだけ、物を考えるのが苦手なのですわ!」


「そ、そう……私の弟はそういうことはないと思うけれど……」


「そうですわね、ユリアさまの弟君(おとうとぎみ)でしたら問題ないのでしょうね。お会いしたことはございませんけれど」


「いつかは紹介したいわ」


「ありがとうございます。それで、お相手は?」


「セレッセ伯爵さまの妹君、オルタンス嬢よ」


 そう、ゲームとはどうも違うらしい人物像。

 だからこそ、顔合わせがちょっと不安っていうか……いや、そもそもゲームと混同する方がおかしいんじゃないかって最近思い始めたわけだけど。

 でも基本的なことは同じ、でも違う……ってなるとゲームが元なのか、この世界が元なのか……それは誰にも証明できない気がする。となると考えても無駄なのか……?


(あ、色んなことあり過ぎて知恵熱出そう)


 やっぱり一つずつ問題を片付けていくしかないよねえ。そうなると。

 でもスカーレットの言う通り、今回の顔合わせ自体はメレクが主役だものね。私はただ落ち着いて、メレクの姉だって挨拶すれば良いだけの話。

 

 それに……そもそも考えればミュリエッタさんが『ヒロイン』そのものじゃないっていう段階でゲームとは違う……私という存在も、プリメラさまの成長も、そう、これはゲームなんかじゃない。

 私たちは私たちの感情や、生き様があって、経験や行動がこうして形になって。

 でも私はどこかで相変わらずゲームの影に怯えてる。


「名門家から格下の家に嫁ぐとは珍しいことですが、ユリアさまのお立場という背景でしたら当然ですわね!」


「え?」


「王女殿下の信があり、実績もある。その若さで筆頭侍女をお務めというだけですごいですわよ?」


「そ、そう……?」


「そりゃまあ普段は地味な装いですけれど、それは仕事の上で必要だとワタクシもよく理解できました。ユリアさまは内面に優れていらっしゃるからこそ、あの堅物男が熱を上げられるんですものね」


「堅物男? ……もしかして、アルダールの、ことかしら?」


「ええ、そうですわ!」


 くすくす笑うスカーレットが、あんまりにも楽しそうなので。

 私は少しだけ「仕事中だよ」とお説教しようと思ったのに、思わず一緒に笑ってしまったのでした。


 うん……うん、でもアルダールの名前が出て、ついついまた思い出した私を、スカーレットが不思議そうな顔をしていたけど知らんぷり、です!!

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