第184回 カットラス 切りやすいのよ
カットラス
船乗り、海賊が腰に差している片手剣というと大体の人がピンときますね。
多分あなたの頭には、バンダナを巻いて、眼帯をした髭面の小太りおっさんが、船の上で右手に肉厚の片手剣をもっている姿が見えた事でしょう。
腰には布を巻いて、ボーダーの服装って感じでしょうか。
はい! その肉厚片手剣がカットラスです!
主に18~19世紀に使われていたとされますが、15世紀にはすでに存在していたという説もあります。
ナイフから変化してきたとか、幅広剣のブロードソードと年代的に重なるとか、色んなルーツがあるようで、もしかしたら、すごい古くから原型となる武器が存在していたのかもしれません。
カットラスは主に船の上という不安定な場所で使う事を前提とした作りで、全長は60センチ程度と剣としてはかなり小ぶりです。
握りが10センチ程度で、鍔とナックルガードを持ち、弧を描く刃は50センチ程度、厚みは鉈を思わせるほど肉厚となっています。
歩兵用のショート・ソードの全長は短い物で全長70センチ程度なので、どれだけ短いかイメージが付くでしょうか。
ホームセンターで売っている大型のバールより短いんだぜ?
重量は1.2キログラム~1.4キログラム程度、片刃の剣ですが尖端はとがらせてあり、作りによっては背の部分は擬似刃になっているので、曲刀なのに刺突もできるようになっています。
握りの短さ、形状、重さ、片手で使う事を前提で突き詰めて作られていることは確実です。
「海の男と言えばこれ!」
そんなキャッチコピーがピッタリなカットラスをみていきましょう!
◇◇◇
~なんで船の上?~
カットラスは船乗りというイメージがぴったりです。
それを裏付ける形状と性能をもっているという事をチェックしていきましょう。
船の上は足場も常に揺れており、様々な荷物や設備があるので狭いものです。
長い武器などは振り回せずあっちこっちに引っ掛かるどころか、持ち運ぶだけでも邪魔で仕方ありません。
なので、身に着けて置くものは比較的小さいものに限られます。
実際、現在での海軍での敬礼も肘を張り出さないコンパクトな物になっているので、限られたスペースを如何に使うかということが徹底されています。
すれ違う時に仲間とはいえ武器が体に当たるのは不快ですし、事故の元ですからね。
狭い場所で身に着けられるサイズ形状としてはカットラス程度の大きさが限界だったと言えるでしょう。
曲刀であることも、直刀よりも引っかかりにくかったはずです。
敵味方が入り混じる混戦になりやすい船上となると、あちこちに引っ掛からない短めの武器が役に立つとされています。
まぁ、長剣は振り回せば味方を切りますし、短剣だとそもそもリーチが足りませんから、否定する要素はないですね。
この曲刀という形状も船の上では有効です。
地上と違って、足場が不安定なので踏み込みなど体重や速度を刃に乗せる事が難しいため、どうしても強烈な一撃を繰り出すことが困難な環境のため、曲刀という断ち切りやすい形状があることで威力があがりやすくなります。
曲刀であれば、対象物との接点が曲面の先端一か所だけとなるので、直刀と比べて狭くなります。
ここに、力が集中するため、十分な加速が重さが無くても対象の切断が比較的簡単です。
肉厚でもあるため、手だけで振ってしまうこととなっても、十分に肉を切り裂くことができます。
船の上でフルプレートアーマーなんて着込んでませんから、威力としては申し分ありません。
刺突も一見使いにくそうですが、カットラスは肉厚で重心は手元に近く、長さも短いため意外とコントロールしやすいので、刺突も用意に繰り出せます。
船の中でも特に狭い場所に相手を誘い込めば、突きと振り下ろしだけでも十分な立ち回りが可能です。
激しい打ち合いになったとしても、力任せに振り回しても壊れませんし、丈夫な鍔とナックルガードが盾としても機能しますので、遠慮なく攻め込めます。
超接近戦になったとしたら、ナックルガードで殴り飛ばしてやることすら可能です。
◇◇◇
いかがでしたか?
びっくりするくらいに船の上に特化してますよね。
陸の上ではリーチに劣る分、威力が低下しますが、狭い場所や足場が悪い場所となると急に強くなるのがカットラスです。
持ち歩いていれば「船乗りでっす」と証明しているような物ですから、見せる武器としての側面もありますね。
船上特化のカットラス、見ればみるほど納得の作りになっています。
海の男!
海賊と言えば、眼帯にカットラスと単発ピストルというのがピーターのイメージです。
みなさんのイメージの中にもカットラスは登場していることでしょう。
船上にプレートメイルが向かない理由の1つは「浮かない」という点も大きい問題ですが、ぶっちゃけ動きにくいことと、場所を取る事が最大の理由ですね。
他にも錆びるし、お手入れ出来ないし、視界も狭い、船上であれば軽装のほうが明らかに強いっす。




