第181回 水雷 世界初の水中攻撃
水雷
水底雷
現代でこそ、水中・水上で爆発を起こして攻撃する機雷・魚雷などの兵器は一般でも知られているようになっています。
ですが、火薬が登場してきたばかりの頃は、それは不可能だったのです。
火薬の天敵は水分、しかも水とかじゃなくて湿気程度で効果が無くなります。
現在の手持ち花火も火をつける前に水に沈めてあげると火薬としての効果が無くなりますので、安全な廃棄方法として伝わってます。
だけれども、火をつけたまま水にぶち込んだ場合は水中でキレイな光を出しながら燃え続けてくれます。
うーん、不思議です。
不思議ちゃんの火薬をどうにかこうにかして、水中で点火して攻撃をできるようにしたのが、今回ご紹介する水雷です。
今の水雷は爆発して攻撃しますが、今回取り上げる水雷は大砲による攻撃です。
中国は明の時代に文学者・思想家であった唐順之により書かれた多くの図書の中にその記述が残っているとされています。
いくつかの資料をみたところ、1549年に作られた書物の中にある記載だそうで、実際に使われたり研究されたのはそれよりも前の時代になるようです。
さて、それでは世界初の水中攻撃を見ていきましょう!
◇◇◇
~画像が出てこない~
インターネットで検索すると、現代で使われている機雷や魚雷の画像が出てきますね。
まぁ、水雷というのが、機雷・魚雷・爆雷などの水中・水上で使う兵器の総称になってますから、そっちの画像が優先されるのは当然なんですよね。
例え画像が出てきても、外見はただの木箱だから見栄えもしないんですがね……
構造は結構単純で、この木箱を防水加工して内部に火のついた発火装置と弾薬を充填した火砲をセットしておきます。
あ、火砲というのは大砲のことだと思って下さいね。
大砲としては小型の物でないとセッティングはやりにくかったことでしょうから、割と小さめだったんじゃないかと思う筆者ピーターです。
発火装置と火薬部分の間は誤爆しないように細工されて、紐がとりつけられておりました。
この紐が引き金になっており、これを引っ張る事で発火装置が火薬にくっついて火砲を発射する仕組みになっていました。
使い方はとっても簡単、この紐をひっぱるだけです。
では、準備してみましょう!
火砲の発射向きを調整して箱にセット。
火縄や線香などの燃焼に時間がかかる火種を用意。
紐を引っ張ると点火できるように細工して、紐を箱の外にまで出す。
蓋をして防水処理。
敵が通りそうな場所に箱を沈めておく。
紐を握って、近くに隠れて監視スタート。
敵が水雷の上を通るタイミングをみて紐を引っ張る。
点火されて攻撃できる。
という、とっても分かりやすい手順です。
手早くやらないと敵が来ちゃうかもしれませんし、防水処理も失敗したら即粗大ごみになってしまうので丁寧にやらないといけません。
敵がくるのも、事前に情報を収集しておかないと「遅れた」となっただけで火種が燃え尽きてしまうかもしれません。
あ、船が通れるくらいの水深があるところに沈めておかないといけないから、使う場所も要検討ですし、流されないように固定にも気を使います。
正直だいぶ、面倒じゃない?
まぁ、いきなり船底に穴があくような攻撃をくらうわけですから、不意打ちとしては強烈ではあります。当たればね。
タイミングがちょっとずれても、箱がちょっとでも向きを変えただけでも、湿気がちょっと入っても、外れたり不発になってしまうので、精度にかなりの心配が残ります。
もしかしたら威嚇という意味合いもあったのかもしれませんが、正直ここまでして水中で攻撃するかと思ってしまいます。
結局近くに隠れているなら、敵の船が来たところで火薬付き火矢でも射かけてやるほうが、確実で低コストです。
実際、この水雷が効果的であったとしたら、もっとあちこちの書物に書かれていたことでしょうから、正直実験程度に収まっていたという印象をもっています。
17世紀頃には、こうした水中・水上での火薬攻撃を「馬鹿げた物」として一蹴する低評価になっていたそうです。
それでも、水中火薬攻撃は現代でも使われている訳ですから、当時の開発者は数百年ほど時代を先取りしすぎてしまったのでしょう。
天才ってそういうものなのかもしれません。
新技術!
1549年の書物にあるということは、もっともっと前から発想があったと言う事。意外と歴史が深そうですね。
唐順之の書物をみたんですが、ガッツリ中国語でして、どこにどの程度書かれているか、筆者ピーターでは読み切れませんでした。
電子公開されていますので、興味ある方は検索してみてください。




