第四話 死の奴隷と採取活動
状況は段々とわかってきた。モンブラン島に閉じ込められて出られない。浜辺には同格と思われる水夫スケルトンが四十以上に、大型シオマネキが複数。
島の火山は生きており、噴火してもおかしくない。はっきりいって、このままでは遅かれ早かれ死が訪れる。キルアは絶望しない。
「どうすればいいかは、見えてきた。金があればレベル・アップができる。レベルが上がれば悪魔として成長できる。上手く強くなれば、空だって飛べるかもしれない」
背中の羽に意識を持って行くと、羽ばたけた。空は飛べなかった。今後に期待というところだろうと、諦めた。
「俺には金が必要だ。金は難破船の中にある。難破船の中に入るには、強くならなければならい。強くなるには金が必要だ――と、こんなところろか」
理論の迷路に入りそうだが、現状は勝てないゲームではない。金が手に入れば、迷路は好循環に変わる。そうすれば、モンブラン島からはおさらばできる。
拾った黄金のメダルのようなお宝が他にはないか? キルアは海に潜った調査を開始した。
難破船に近づくと、水夫スケルトンに発見される。騒ぎになりそうなので、ギリギリの距離で探す。砂底に貝類はいれど、宝は見当たらなかった。
密林の側から、シオマネキたちがいる場所を窺う。キラキラと光る物が見えた。ガラスの破片かもしれない。でも、島に流れ着いた遺体の所持品の可能性もあった。
名案は出ないが、無理に行動を起こさなかった。
ナツメヤシの実で命を繋ぎながら、何か手はないかと考える。だが、解決策は浮かばない。
「とりあえずは、生活の質を上げるか」
浜辺で戦ったスケルトンが持っていた短剣を持って来て、石を使って研いだ。
丸一日たっぷり掛かったものの、短剣は切れ味を取り戻した。あとは、何かに使えるかもしれないので、流木を拾ってくる。流木は乾かしてとっておく。
食事がナツメヤシだけだと飽きてきた。とはいっても、魚を獲るのは難しそうだった。妥協して、掌サイズの貝を採取してくる。生で食べてもよかったが、焼いた貝が食べたい。
火が欲しくなった。石で火を熾そうとしたが、無駄だった。
「あまり、いい気はしないが、火口に取りに行くか」
貝を準備した後に、浜辺で長さ二mほどの棒状の乾いた木を拾う。
棒を持って山を登る。中腹から二十分ほどで山頂に着く。山頂は暑く、直径二十mの大きな窪みがあった。
窪みの中に真っ赤に燃える熔岩が見える。窪みの中に足を一歩そーっと踏み入れる。火傷しそうなほどに熱かった。すぐに足を引っ込める。
「熔岩溜まりに近づくと、足を火傷するぞ。とすると、ロープに木辺を括りつけて投げて火を頂くしかないか」
ぼこっと、熔岩溜まりから気泡が上がる。次に、熔岩溜まりの中から、直径一mの真っ赤なトカゲの顔が現れた。
「ゲッ。ここにもモンスターがいるのかよ」
トカゲと目が合った。トカゲが口を開ける。
危険を感じて頭を下げると、頭上を熱線が通り抜ける。見れば、棒が真っ赤に燃えていた。
トカゲは目を細めて、キルアを見た。
「完全に格上だ。ボヤボヤしていたら、まずい。殺される」
急いで火の着いた棒を持って、山道を転がるように逃げた。
幸いトカゲは追ってこなかったので逃げ切れた。火が手に入ったので洞窟の前で、焼き貝を作ろうとする。貝を火にくべた。
貝は焼けると、いい匂いがして口を開けた。
「いただきます」と焼けた貝の身を棒で刺して食べていく。
八個目の貝を食べた時だった。ガリっと何かが、歯に当たった。異物を吐き出して手に取る。
遺物は、丸く白い物体だった。
「まさか、真珠か?」
短剣を使って、残っている貝を開ける。でも、真珠は見つからなかった。
海で採ってきた貝は二十個。そのうち、真珠が入っていた貝が一個。もっと海を調べれば、真珠貝があるかもしれな。
真珠が銀貨の代わりになるのか、わからない。だが、無価値とは思えなかった。真珠が出てきた貝の形状を記憶し海に潜る。
似たような貝はなかなか見つからなかった。それでも、海の中を探していると、似た貝を、どうにか見つけた。
「やった、あった」と思ったところで、何者かの視線を感じた。
顔を上げれば、五mの距離までにシオマネキたちが迫って来ていた。
「まずい。貝に気を取られて、シオマネキの縄張りに入った」
慌てて泳いで逃げて、浜辺に上がる。そのまま、全力で密林に逃げ込んだ。
三分ほど走って後ろを振り返るが、シオマネキは追ってきてはいなかった。
真珠貝はあった。だが、シオマネキの縄張りの中だった。
シオマネキの殻は固そうだった。棍棒や短剣ではまともにダメージが入らない。
それに、シオマネキは常に数体で行動している。
「簡単には採らせくれないな」
難破船の財宝を手に入れるためには、水夫スケルトンと戦わねばならず。真珠を採るには、シオマネキと戦わなければならない。
どちらも、同格かそれ以上の強さのうえ、数がいる。
「よし、ここは『スケルトンの創造』の使い時だ」
キルアは、シオマネキの縄張りから真珠貝を採る方法を選んだ。ゆっくりと海中を進んでシオマネキの縄張り近くまで進む。
浜辺にある骸骨に『スケルトンの創造』を発動させる。浜辺にあった骸骨が組み上がり、浜辺にスケルトンが現れた。スケルトンがシオマネキと戦っている間に、真珠貝を採取する作戦を試みた。
スケルトンができあがると予想通りの展開になった、シオマネキがスケルトンを襲う。その間に真珠貝を採ろうとした。
スケルトンの二体を浜辺に作っても、海中に潜って顔を出す。スケルトンは既に破壊されていた。すぐに、もう二体を作って海中に潜る。が、やはり海面に顔を出したときには、スケルトンは破壊されていた。
「俺があれだけ苦労して倒したスケルトンが、シオマネキ相手だと、三十秒ぐらいしか保たないな」
疲労感から、六体目を作るのは無理だと感じた。スケルトンの作成には結構な気力を使う。
シオマネキがキルアに気付くと、逃げるしかない。全力で泳いで浜に上がり、密林に逃げ込む。
洞窟に帰ってどうにか、採取した真珠貝を開ける。一個は真珠が入ってなかった。もう一個には入っていたので、真珠が一個だけ取れた。
筵の上に、ぐったりとして横たわる。
「苦労して疲れきった挙句に、取れたのが真珠一個かよ」
真珠の価値がどれほどかは、わからない。シオマネキに捕まれば、その時点で死が確定する。
一回の失敗で死ぬのなら、シオマネキの縄張りでの真珠採りは割に合わない。キルアは疲れて眠った。どれほど、眠ったかわからない。起きた時には夜だった。
トイレに行きたかったので、洞窟を適当に出て、小便をする。小便を終えると、地面に何かきらきらと光るものを見つけた。
「何だ?」と思って、顔を近づけ見ると、銀の欠片だった。何で銀の欠片が? と不思議に思った。
眠いので、その夜は、もう一度、眠る。
朝に海水を汲んでくる。昨日の小便をした場所に掛ける。土の中から銀の粒が出てきた。希望が湧いてきた。
「ひょっとして、この山の土や岩は、銀を含んでいるのか?」
洞窟は単なる住居ではなかった。洞窟はかつて誰かが銀を掘るために掘った穴だと知った。
キルアは流木と石と蔦で石斧を作って、洞窟の中の岩を割った。中々に進まない作業だが、徐々に岩が割れていく。砕けた岩を海辺で拾った魚網に入れる。
海水を掛ける。銀の粒が流れ落ちる。
キルアは、気分を良くした。
「行けるね、これ岩を砕いて海水を掛ければ、銀が採れるね」
キルアは頑張って銀の粒を集めた。銀の粒は日に日に溜まって行く。
「時間が掛かるけど、銀が手に入るよ」
希望が持てた時に山が揺れた。洞窟は崩落しなかったが、危険なものを感じた。
外に出て山の頂上を見ると、噴煙がいつになく多く上がっていた。
「これ。余り時間が掛けられないぞ。噴火するかもしれん」
心配の種はまだあった。島にあるナツメヤシの実がそろそろ心細くなってきていた。




