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第二十八話 彷徨える海賊デーモンと新たな副船長

 翌日、帰りの船を出そうと待っていた。なかなかアスミナが現れない。もう、アスミナを置いて帰ろうかと思った。その時になってやっとアスミナが現れた。


「遅いぞ、アスミナ。俺もお前を置いて帰るところだったぞ」

「キルア船長、おそくなって御免。でも儲け話を持ってきたわ」


 アスミナが直径八㎝、長さ三十㎝ほどの金属の筒を差し出した。

「船長に上げるわ。エルモアの許に持っていけば高く売れる。ただし、急いでね」


「なんだこりゃ」と筒を開けようとするとアスミナが慌てて止めた。

「中は開けたらダメ。中を開けちゃうと価値が二十分の一に下がるわ」


「わかったから、ほら行くぞ。長居は無用だ。サルバドデスからベセルデスへの荷は探してもなさそうだ」


 アスミナが早口に告げる。

「その件なんだけど、用事ができたから、私は別の船に乗るわ。金属の筒は違約金代わりよ。ばいばい船長」


「おい、待てよ」と引き止める。

 アスミナは言いたいことだけど言うと羽を出す。凄い速さで空を飛んで街のほうに消えた。


「なんだったんだ、あいつは」


 アスミナがいなくなると金属の筒が気になった。開けると価値が下がると釘を刺されている。金貨二枚が銀貨十枚に下がるとなれば、開けるのが躊躇われる。アスミナが揶揄っていないのならば、だが。


「中を見て厄介事に巻き込まれるのも御免だ。さっさと、こいつをエルモアに売りつけちまおう」


 副船長がいない状況は好ましくないが、帰りは荷物もお客もいない。イザとなれば船を捨てて空を飛んでもいい。水夫スケルトンを召喚して船を出した。出航二日目、サルバドデスとバルモアデスの中間地点にくる。


「ここが一番やっかいなんだよな。嫌な記憶しかねえ」


 操舵輪を握っていると、見張り台の水夫スケルトンが騒ぎだす。水夫スケルトンが指差す方向を見ると、四十五m級の帆船が正面から向かってきた。


「また出たよ」と愚痴って速度を上げて、やり過ごそうとする。水夫スケルトンが反対方向を指差して騒ぐ。反対を見ると遠くにもう一隻四十五m級の帆船が前から迫っていた。


「今度は挟み撃ちにする気か。懲りないね」


 二隻はキルアの船との距離を徐々に詰めて来ていた。だが、キルアの船のほうが速いので左右を挟まれる前に間を通り抜けられる。キルアは船の速度をあげる。


 右側との船の距離は二百m、左側の船の距離も二百m。どちらも四インチ魔道砲の射程外。

 キルアの船が二隻の間を通り抜けようととする。右の船から左の船に光線が走った。


 二隻の船が光で繋がった。光りは太いロープに変わりキルアの船の船首にひっかかる。ロープに引っかかり、船の速度が落ちた。二隻の船はそのままキルアの船を中心に旋回する。キルアの船にロープを巻きつけようとした。


「次から次へと、よく、考えるねえ。海賊を止めて手品師にでもなったら」


 キルアは幽霊化の能力を使う。『幽霊船』のギフトも同時に発動した。船体が限りなく透明に近くなる。淡く青く光る幽霊船はロープをすり抜けて進む。


 四十五m級の二隻をやり過ごす。二隻の船を引き離す。キルアの船は悠々と前を進む。時間による幽霊化が切れた。


 二隻の船が反転して追い駆けてきても無駄だ。キルアの船には追い付けそうにない。逃げ切れると思った。


 ブオオオーと音がする。横を見る。船の右横七十mに緑の輪が出現し空間から三十五m級の帆船が出現するところだった。


「海中に隠れていた海賊がサモン・シップで船を呼びやがった。逃げるか、戦うか」

 同じ三十五m級どうしなら、速度で逃げ切れる保証はない。奥の手の幽霊化もしばらくは使えない。


「砲撃用意」と水夫スケルトンに指示を出す。サモン・シップで出た直後なら、相手は満足に砲撃できない。先制攻撃を仕掛けるならいまだ。相手の船が輪から完全に出たところで、キルアの船は砲撃を開始する。


 キルア側からの先制攻撃が決まる。相手の船に砲弾が二発命中する。出現した敵の海賊船はすぐに打ち返してきた。敵の砲弾が当たり、木片と水夫スケルトンが弾け飛ぶ。


 併走をしながらの砲撃戦になった。砲弾が相手の船に次々と当たるが、向こうの船もこっちに砲撃を浴びせてくる。お互いの船を破壊しながらの海戦になった。


 海賊は後方に仲間の四十五m級の帆船がいる。海賊船は沈没覚悟で撃っていた。キルアは船を沈められるわけにもいかない。マストが折れて速度が落ちても、後方の海賊船に捕まる。


「撃ち合いは不利だったか」


 海賊船の魔道砲が弾け飛ぶ。キルアの船の帆に穴が空く。他にもお互い撃ち合っている側面の木材は次々と木片に変わって海に落ちてゆく。


 どっちの船が先に沈むかの戦いになっていた。バンと音がして相手の船が船首を上にして転覆した。キルアが先制攻撃を加えていた点とキルアに『船体修理』のギフトがあった点が勝敗を分けた。


 敵を航行不能にしたが、油断はできない。後方からは無傷の四十五m級が迫っている。


 帆に穴が空いているために『追い風』のギフトを使っても思うように速度がでない。『船体修理』のギフトで帆を優先的に修復しているが間に合わない。


 すぐ後ろまで四十五m級が迫っていた。敵の船に並走されそうになった。体に力が戻る感覚がある。最初の幽霊化から十四分が経過したと理解した。


 再度の幽霊化を試みる。『幽霊船』のギフトにより、キルアの船は物質を透過するようになる。海賊がフックをかけて飛び乗ろうとしてきたが、無駄だった。銛を打ち込んで船を固定しようにも、全てすり抜ける。


 幽霊化している間にも船の修理が進む。帆が直るとキルアの船は海賊船を引き離していく。キルアの船が再び実体化した時には海賊船から離れて安全な位置にいた。


 夜通し全速で逃げた。なんとか、バルモアデスに着いた。船をサモン・シップで異空間に戻し。今回の襲撃は妙だった。明らかにキルアの船を狙い撃ちしていた。しかも、三隻体制とは異常だ。


 どうして待ち伏せできたのかは予想が付く。アスミナが渡した金属の筒に理由がある。中身を見ていないが、やはり碌な品ではない。


「こういう厄介な代物はすぐに手放したほうがいい。下手に持ち歩くと背後からブスリがある」

 エルモアに渡して終わりなら、さっさと手放したい。大きな陰謀に巻き込まれるのは御免だ。

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