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第十三話 海戦デーモンと荷運び

 船の状態を確認する。人間から逃げるときに受けた船体へ傷はギフトの『船体修理』のおかげで修復されていた。船の状態が万全でも、安心はできない。嵐の規模が予測できない。


 ボンブが不安な顔で訊いてくる。

「船長、嵐を乗り切った経験はあるか?」


「漁船で一度だけな」


 ボンブは不安気な顔でぼやく。

「そいつは、心強いぜ」


 嵐が襲ってきた。船が上へ下へと大きく揺れる。キルアは命綱をしっかりと巻いて、操舵輪を握る。


 帆が風を受けマストがぎしぎしと揺れる。波が来るたびに舵を操り、波に対して船を直角に向ける。風はいままでに経験したことがないほどに強い。


 三十五mある帆船でも、ちょっとのミスですぐに沈む。とにかく必死に舵を切った。


 何かが船体に衝突して、船が右側に傾く。慌てて船と意識を同調させる。帆の向きを変えて態勢を立て直す。


 シモンズが大声で叫ぶ。

「船長、鯨だ! 鯨が縄張りを荒らされたと思って、体当たりしてきている」


 漁船の時は大破したが、帆船はすぐにはバラバラにならなかった。だが、何度も体当たりを繰り返されれば、船は転覆する。


 魔法を使えるモンスターが命綱をして出てきた。鯨に魔法で攻撃を試みる。あまりにも船が大きく上下するので、魔法を当てられない。


 ドンと音がして、船が傾く。再度、帆に意識を同調させた。向きを調整して、沈まないように工夫する。


 船は嵐と鯨の体当たりで傷ついていく。だが、『船体修理』のギフトが発動しているので、壊れたそばから徐々に直っていく。


 船は壊れながら、修理されを、繰り返して進んでいく。

「魔法の船じゃなかったら、沈んだな」


 幸運にも三時間で嵐を抜けた。鯨も縄張りから船を追い出せて満足したのか去った。


 船はミシミシと音を立てながら、ゆっくりと修理されて行く。

「お疲れ、船長」とボンブが安堵した顔で声を掛けて、見張り台に上ってゆく。


「あと、三日か。中々に辛い儲け話だな」

 他のモンスターは船酔いしたのか、ぐったりしている者が多かった。


 風がぴたりと止んだ。

「今度は凪か。全く容赦ない海だぜ」


 操舵を替わってもらおうとすると、見張り台のボンブから大きな声がした。

「船だ。船が見えたぞ、先に出た仲間の船だ」


 助かったと安堵した。アーゴが大きな翼を広げて、空を飛ぶ。一直線に仲間の船に行く。

 仲間の船は待ってくれたので、合流できた。先に出た船から水と食糧が運び込まれた。


「これで、何とかベセルデスに帰れそうだ」

「全くだ」と、ボンブが笑顔で告げる。


 帆の状態を調整して前の船に従いて行く。無事にベセルデスに到着した。


 港ではマスクエルが三台の荷馬車と大きな(はかり)を用意しており、船から荷揚げされる奇跡の石を買い取っていく。


 キルアはサモン・シップで船を異空間に戻しておく。

 最後に残ったキルアの買い取りの番になる。


 マスクエルが奇跡の石を計量して、気の良い顔で応じる。

「奇跡の石が金貨八十枚。プラス、ボーナスで、金貨二十枚、切りよく、金貨百枚で、どうだ?」


「ボーナスの金貨二十枚ってのは、船で十四人を運んだからか?」

「そうだ。おかげで量が確保できた」


 奇跡の石を渡して、マスクエルから金貨百枚を貰った。


 数日、宿で過ごしてから、船の装備品を扱う店に行った。今度は魔道砲があるのに弾がない、といった事態を避ける。弾を装填するカートリッジを買った。


 カートリッジは縦一m二十㎝、横十五㎝厚さが五㎝。魔道砲に装填すると十二発の魔法の砲弾が撃てる。価格は一本で金貨二枚。六門に装備すると金貨が十二枚。予備にもう一セットを買ったので金貨二十四枚を使った。


 水や食糧もあったほうがいいと、思い知った。少し高いが小型の海水の濾過装置があったので、買う。


 保存が効くビスケットも百二十食を積んでおく。また、釣り具の重要性を理解したので、釣り竿と魚網も買っておいた。食料と漁具の合計で金貨九枚ほどした。


 所持金は約金貨七十枚とレベル・アップには、金貨が足りなかった。

「しかたない。荷運びをやるか」


《漁火亭》にいるエルモアのところに、顔を出した。


 エルモアはキルアの顔を覚えていて愛想よく応じる。

「少しはいい顔になったじゃない。荷運びをする気になった?」


「死相が出掛けたけどね。金が必要なんだ。仕事をくれ」

 エルモアは機嫌よく、仕事を紹介してくれた。


「ちょうどいいタイミングね。人間の中立都市サルバドデスに品物を運ぶ仕事があるわ。報酬は、行きで金貨十五枚。帰りで金貨十五枚よ。ただし、出発は二日後よ」


「中立都市に行くのは初めてなんだが、俺が一人で行くのか?」


 エルモアが柔和な顔で説明する。

「いいえ、今回は荷主が同行するわ。荷主はデーモン・ゴブリンのゴブルさん」


「荷物は何を運ぶ? 割れ物とかは不得意だ。割れたから弁償しろと要求されても困る」

「行きに干しブルーベリーを積んで、帰りに羽毛を積んで帰ってくればいい。それだけよ」


 生鮮食品でないから急がない。壊れ物でもない。難しい仕事ではないように思えた。

「話だけ聞くと簡単だな。だが、輸送費にしては高いな」


 エルモアが素っ気ない顔で付け加える。

「船があれば簡単だと思うわよ。ただし、海賊に遭わなければね」


 高い理由は危険手当が入っているためだった。必要な情報なので、訊いておく。

「相手が海賊かどうかって、どう見分ければいい?」


 エルモアが微笑んで、冗談ぽく発言する。

「襲ってくる船が海賊よ」


「襲われてからじゃ遅いだろう。もっと、遠くから見分ける方法はないのか?」


 エルモアがまたしても、ジョークを口にする。

「なら、近づいて来た船を全て攻撃すれば?」


「それだと、海の無法者ではなく、単なる馬鹿者だな」

 エルモアが「手の掛かる奴ね」と言いたげな調子で提案する。


「海戦デーモンらしからぬ言葉ね。経験がないなら、副船長を雇えばいいわ。往復で金貨四枚も出せば、経験のある人材が雇えるわよ」


「なら、副船長も紹介してもらっても、いいか?」

 エルモアが酒場を見渡して、水夫の服を着た真っ赤な骸骨のデーモン・スケルトンを指差す。


「なら、バリトンに声を掛けるのね。彼が一緒なら、心強いわ」

「デーモン・スケルトンは、レベル四だったな。戦力にもなる」


 キルアは酒場でスケルトン用の霊魂酒を飲んでいるバリトンに声を掛ける。


「俺の名はキルア。中立都市のサルバドデスまで行きたい。俺の船に乗って、サポートしてくれ。報酬は往復で金貨四枚だ」


 バリトンはじっとキルアを見た、

「俺はバリトン。サルバドデス行きね。いいぜ、船に乗っても。他には誰が乗る?」


「俺と依頼人のゴブルだ」


 バリトンはむっとした顔をする。

「三人でサルバドデス行きはきついぜ。せめて、水夫スケルトンが十人は要る」


「船は魔法の船で、俺が一人で操縦できるぜ」


 バリトンが冴えない顔で指示する。

「ダメだ。操縦はできても、三人では海賊に遭ったら対処できない。あと十人はどうしても集めてくれ」


「わかった。なら、人集めも頼む」


 バリトンは腕組みして提案する。

「なら、水夫十人で金貨六枚を見てくれ。あと、明日に船を見に行くがいいか?」


「いいだろう。それで頼む。出発は二日後だ」


 人間の中立都市行きが決まった。翌日、サモン・シップで船を出す。バリトンが船の装備を見て足りないものを買って来る。多少の出費になったが目を瞑った。

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