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転生したら悪魔になったんですが、僕と契約しませんか?  作者: らる鳥
幕間の章2『派遣と、レプトの仲間達』

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40 錬金術師と派遣の悪魔5



「この星の湖は大昔に隕石が落下したと言われる場所で、水や周辺の砂が若干の魔力を帯び、加工する事で錬金素材となる事で有名です」

 チカチカと点滅しながら、解説するヴィラ。

 僕的にはへーって感じの解説なのだが、残念ながら多分僕以外は誰も聞いてない。

 ミットはザーラスと一緒に、到着するや否や歓声を上げて水辺に突撃して行ったし、

「ちょっと、一体これはどういう事なの! 星の湖に行くって言うからてっきり採取かと思ったら、これじゃまるで遊びに来たみたいじゃない。それにこの衣装は何なのよ!」

 パラスは顔を真っ赤にして、……怒ってるのか恥ずかしがってるのかわからない状態だ。

 でもその割にはちゃんと着てくれているのだが、ちなみに彼女がこの衣装と言ってるのは、水着である。

 僕がミットに作らせたのだけれど、デザインはちゃんとヴィラがしたので大丈夫。

 可愛らしい、或いは機能美あるデザインになっていた。

 僕がザーラスに助けを求められ、パラスと出会ってから二ヶ月ほどが過ぎている。

 約束の二週間が終わった後も、僕は何度となくパラスの所へ顔を出し、ヴィラも彼女への助言を惜しんで居ない。


 更にミットとパラス、元々クラスメイトと言う事で顔見知りではあった二人を、改めて引き合わせもした。

 パラスは、クラスメイトとして過ごしていた頃と比べ、格段にミットが成長している事を知り、改めて彼女をライバルだと認識したそうだ。

 まあ別に関係性は何でも良い。

 でも二人には、同じ道を歩いてる同い年の相手の存在を、もっとちゃんと身近に知って欲しかった。

 そうやって引き合わせ、今日は第二回目の遠出である。

「水着って言うんだよ。この世界にあるのかは知らないけど、ああミットが作ったから今はあるね。水に入っても、水の抵抗なく活動出来る衣装だよ。普通の服は纏わり付いて動けなくなるから」

 真面目な顔をして解説しておく。

 勿論ヴィラにはちゃんと現代風の水着をデザインさせたので、僕の目の保養も兼ねてるのだが、それは言うべきじゃないだろう。

 それにしても、競泳用っぽい機能的なデザインの水着を着たパラスだが、彼女はスレンダーと言うか……、年頃の女の子にしては薄い。

 ……最近はちゃんと食べる様になったと言うが、まだまだ標準に近くなるには時間が掛かりそうである。

 ちなみにミットの肉付きはそれなりだ。

 女らしい身体つきにはなってるのだが、身長の問題でどうしても可愛らしい印象になってしまう。

 水着もワンピースの、可愛い物を選んで身に着けていた。

「そんな事を言ってるんじゃないんだけど……、もう良いわ。休養は大事。貴方に教わったものね。でも水着、面白いわ。水を弾く、透けない、伸びる。ミット、あの子こんなのも作れるのね……」

 そう言いながら自分の水着の胸元を引っ張るパラスだが、実に危うい。

 研究室に籠って研究ばかりしてるこの少女に、常識を教えてあげられる人が必要だと思う。



 水遊びに疲れた少女達が木陰で休んでいるのを遠目に見守っていると、スッとザーラスが僕の横に立つ。

「レプト様、ミットさん、良い子ですね」

 そう言うザーラスに僕は頷く。

 それはもう疑いようの余地はない。

 欠点も多々あるが、それを補って余りある良さを彼女は持ってる。

「そうだね。パラスも良い子だよ」

 そしてパラスもそれは同じだ。

 僕はそう言いながら、地に落ちた小石を拾い、思い切り投げる。

 宙を裂いて飛んだ小石は、パァンと水辺に寄っていた水棲魔物の身体に当たって弾け、砕けた。

 大慌てで逃げて行く魔物の姿に、僕は思わず笑ってしまう。

「本当にそうですね。ありがとうございます、レプト様。パラスさんもすっかり調子を戻し、いえ、前以上に調子を良くしています。そこで提案なのですが……」

 少し思い悩む様に、ザーラスは言葉を選んでる。

 多分言いたい事はわかるのだけど、でも、先ずはザーラスの言葉を待つとしよう。


「……彼女達の師であるヴァーミッションさんに、勝敗に伴う私達の賞品は無しにして貰いませんか?」

 ザーラスが意を決して口にしたのは、大体僕の予想した通りの内容だった。

 本当に彼女は、見た目の割りに分かり易い。

「ザーラスはそれで良いの? 可愛い見た目の身体が欲しかったんじゃないかなって思うんだけど」

 僕の言葉に、ザーラスはほんの少し目を見開く。

 向こうで再び、ミットが水辺に向かって駆けだし、やれやれと言った感じのパラスもその後に続く。

 彼女等が向かう付近の水中に、魔物の気配、魔力反応は見当たらない。

「ご存じだったんですか……」

 呻く様に言葉を漏らしたザーラスに、僕は頷いた。

 何と言っても、僕はザーラスにはそれなりに友誼を感じているのだ。

「うん、ザーラスの他人を見る時の視線とか色々からね。何より、ザーラスは君自身が思うより、ずっと女の子してるから」

 驚きに口をパクパクとさせてるザーラスを見、思わず笑う。


 ちょっと珍しい顔も見れたけど、少し真面目な話もしておこうか。

「ん、でもね。僕等が賞品を受け取らなくても何も変わらない。彼女達は学園に評価を受けて、優劣を付けられる。そして二人はお互いに、仲良くなりつつありながらも、それでも相手を上回ろうと努力してるよ」

 いや、僕等が賞品を受け取らないと決めても何も変わらないのではなく、多分悪影響は出るのだ。

 何故ならミットは、僕の願う賞品がヴィラの身体だと知っている。或いはそう思ってる。

 だから賞品を無しにしてしまえば、きっと残念そうにするだろう。

「ミットは、僕が望む賞品はヴィラの身体だと思って頑張ってる。だからザーラスもそうしたら良いんじゃないかな。パラスは、ザーラスが彼女の為を考えて動いてる事、わかってるよ」

 それに少しばかり、僕には考えてる事もあった。

 我に秘策在り、という奴なのだ。

「えっと、レプト様、思って頑張ってるって表現の仕方って事は、本当は違うんですか?」

 ……秘策は秘密の策なのだ。




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