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永遠の戦士  作者: ブラック無党
神の国
81/125

ミルバニアにて―処遇―

遅くなりました


工事は土地問題のせいで一月にずれ込みそうです


 傭兵達の始末が終わると、傷ついた少数の者達に手当てを施すよう命じた。

 そして男達とエルフの一部を死体の処理に回し、唯一生き残ったベリリュースを取り囲むように人員を配す。

 地面に手をついてしくしくと泣いていたベリリュースは、問われるがままに質問に答えた。

 何故ここにきたのか。この後どうするつもりだったのか。隊商が消滅したことによって起こるであろう影響には何があるのか。

 周囲を取り巻くエルフ達は話が進むにつれ視線を険しくしていったので、ベリリュースはさぞかし生きた心地がしなかったであろう。

 シドはオークが二人がかりで運んできた大きな切り株に腰を下ろし、用意させた卓の上に商人達の荷馬車から見つけた秤を置いた。

 支点と左右に皿がある単純なものだ。作られたばかりの時は輝いていたであろう表面は、長年使われたせいでくすみ、黒ずんでいる。

 同じく商人達の財産である貨幣を用意し、持ってこさせた短剣を音を立てて卓に突き立てると、ベリリュースは肩を跳ね上げた。

 硬貨を弄びながら目の前で跪いている裸同然の男に話しかける。


「――さて、ベリリュースよ。目の前に秤が見えるな。これはお前の運命を決める秤だ。これからこれを使ってお前の処遇を決める」


 ベリリュースは顔をあげ、憔悴した顔で秤を凝めた。


「まず、俺はお前達を一人残らず殺すつもりであった」


 シドはそう云って茶色の硬貨を右の皿に載せる。

 右の皿が下に落ちた。


「敵の命を奪うのは当然のことだからな。だが――」


 もう一枚同じ色の硬貨を手に取り、


「お前はほぼ無傷だ。俺の元で働くなら最低でも一人分の戦力とはなる」


 左の皿に載せると、秤はほぼ中立に戻る。


「これにはお前の知識や知恵は入っておらん。単純な労働力のとしての一枚だ」


 言葉だけを理解したベリリュースの目に、期待の色が浮かんだのがわかった。

 シドはもう一枚、右の皿に載せる。


「お前の身体はゴブリン達の食料とすることができる」

「………」


 さらにもう一枚、右へ。


「お前はエルフから憎まれている。エルフ達はお前の死を望んでいるだろう」


 おそるおそるエルフ達を窺うベリリュース。諦めたように息を吐く。

 

「お前は個体として有能だった。誰よりも早く状況を見抜き、最も最後まで生き残った。致死の一撃を予測して躱し、足掻き続けた」


 シドは左の皿に一枚載せた。

 まだ右の皿が一枚分多い。秤は右を下に傾いたままだ。


「わかるか、ベリリュース。これが今のお前の運命だ。残念ながら右は――」

「お、俺は指揮官だ! 兵の指揮を取ることができる!」


 シドは一枚を左の皿に載せようとし、寸前で動きを止めた。

 ベリリュースを見ながら、


「お前の団は百以下だった。大軍の指揮は取ったことがあるまい。しかし現在の俺は大軍の指揮を取る者を緊急に必要としている訳でもない。とりあえずは百の規模でも十分だ」


 硬貨を落とす。

 秤はふらふらと揺れながら釣り合った。  

 ベリリュースは秤を食い入るように見ている。意味するところを理解している顔だった。


「俺の実家は農家だった! 俺は作物を育てることができる!」


 声を大にして云う。

 シドが動かないのを見ると、


「お、俺は王都周辺の地理に詳しい! 毎年商人の護衛で各村を回っていた! 村の規模、作っている作物、防備の状況を知っている!」


 シドは左に一枚足した。

 ベリリュースは激しく考え込んでいる。どのような情報がシドの利益となるか、経過から導き出そうとしているようだ。


「お、俺は、団の後ろ盾となっている貴族の情報を与えることができる。手兵の規模、警戒の様子を。そして侵入の手引きをすることもできる」


 シドは左に一枚載せる。


「俺は傭兵の情報も持っている! 大きな傭兵団の規模と、頂点(トップ)の方針! 好む戦術を!」


 左に一枚。

 

「俺は訓練をし、戦えるよう鍛えることができる! 農民を兵にできる!」

「………」


 シドは左に載せなかった。長期的な展望はこれには入っていない。


「お、俺は……俺は……」


 ベリリュースは必死に言葉を探している。秤は左が下になっているが不安なのだろう。


「俺は兵を動かすときの維持費――必要とする食料、水――を算出し、行軍速度を考えた計画表を作ることができる!」


 細かい男だ。だがシドは左に一枚加えた。

 これで左に二枚分となった。

 ベリリュースは黙る。他にはもうないようだった。


「――これくらいか」


 シドは秤をじっと凝めた。左の方が四枚分重い。

 手を伸ばして卓に食い込んだ短剣を抜き取り、右の皿に置く。

 秤がガシャリと音を立てた。


「な――!?」


 ベリリュースは信じられないと口を開く。


「そんな馬鹿な!」

「ベリリュースよ、残念ながら右が重かった場合はお前には死んでもらうことになっている」

「あ、あんまりだ! 初めから生かすつもりなんてなかったんだな!?」

「そんなことはない。殺すつもりならとっくに殺している」

「ならばその短剣は!? そんなものを置かれたら硬貨を何枚積もうと同じだ!」

「これか?」


 シドは短剣を指差しながら不敵に笑った。


「これは、お前の裏切りよ」

「………」

「お前は自由に動けるようになれば逃げよう。口約束で仲間になり、機を見て脱す。それか、居残ったまま情報を流すという可能性もある。俺はお前の頭の中は読めぬし、人質とするべき存在も知らぬ。お前には帰る場所がある。そしてそこに帰れば頼もしい味方が何とかしてくれると考えるのは予測できることだ」


 アキムやキリイが逃げ出さないのは死への恐怖からだろうが、ただそれだけなら安全な場所へ逃げれば解決する。シドが普通の人間なら数さえ集めればどうにかなるからだ。

 しかし実際には実地でシドを知り、それを踏まえた上でここに残っている。あの二人はある意味シドを信じているのだ。

 ――国と戦っても勝つと

 ベリリュースにはそれがなかった。

 時期が悪かったとしか云い様が無いだろう。もう少し早いか、さもなければ遅ければアキムやキリイのように自由を与えてもよかった。だが今は駄目だ。まだシドがやっていることを知られるには時期尚早である。


「俺の言葉を信用できないのならどうしようもないじゃないか! こんなのは茶番だ!」

「そうだな。お前には最初から選択肢は二つしかない。ここで死ぬか、この短剣を取り除いて俺の元で働くかだ」

「短剣を?」

「そうだ。裏切らないという保証があれば秤に短剣の置き場はない。はれて左の皿に積まれたお前の価値が日の目を見るというわけだ」

「ど、どうやって保証をすればいいんだ……?」

「どうやって……か」


 シドは立ち上がると目当ての物を持った兵を探し、


「おい、そこのお前」


 と呼んだ。

 

「ぶっ」

「こっちにこい」


 呼ばれたオークは何故か忍び足で近寄ってきた。


「武器を貸せ」


 手を出すと手斧がそっと載せられる。

 シドはそれを眺めて、


「もう少し手入れをしたほうがいいぞ」

「ぶっ」

「だがまあ、使えるだろう」


 手斧を持ったシドが近づくと、ベリリュースは哀れなほど狼狽えた。


「な、何をする気だ!?」

「云っただろう。保証を作るのだ」

「何故斧がいるんだ!」

「お前が裏切らないという保証は作ることが不可能だ。だから裏切らない、ではなく、裏切れないようにする」


 押さえろ――と云うと、輪の中から複数のエルフが出てきて逃げようとするベリリュースを押さえつけた。


「脚を出せ。切り落とす」

「止めろ! お願いだ! 俺は裏切らない!」

「お前の言葉には裏打ちがない。説得力が足りん」

「俺を信じてくれ!」

「信じる材料がないのだ。心配はいらん。脚を切り落とした分左の皿から一枚抜くが、短剣を取り除けばまだ左の方が重い」


 シドが手斧を振りかぶると、ベリリュースはひっくり返った亀のように首を持ち上げて、


「か、か、か、家族だ! 俺には家族がいる!」

「勿論いるだろう。お前が木の股から生まれたのではない限りは」

「あ、案内する! それでどうだ!? 人質になるだろう!?」

「――ふむ」

「親だけじゃなく弟や妹もいるぞ!?」

「命の価値とは相対的なものだ。我が身可愛さに親を売るということは、お前にとって家族は大した価値ではないということになる。それでは人質にならんな」

「馬鹿なことを! 俺は親孝行で有名な傭兵だぞ! 親孝行な傭兵といえば俺のことを指す! 親孝行こそ俺の代名詞だ!」

「………」

「俺が脚を失うこと! これほどの親不孝があるだろうか!? いや、ない!」

「……ターシャ、商人達の使用していた地図を持ってこい」

「おお! わ、わかってくれたか!」


 ターシャが地図を持ってくるとそれを卓に広げ、ベリリュースを横に立たせる。

 シドは見えるがベリリュースにとっては暗いかもしれないので灯りも持ってこさせ、


「お前の親の居る場所を云え」

「あ、ああ! ここだ!」


 指された箇所にはルオスと書かれていた。国の中央、南東よりの場所だ。


「距離があるな」

「そ、そそ、そんなことはない! 馬を飛ばせばすぐだ! あっという間に着く!」

「………」

「団の後見人の貴族が治める領地でもある!」

「都市か?」

「いや、町だ。人口は多くない。住民の半数は農夫だし、ギルドの支部もない」

「兵の数は?」

「たぶん警備兵が交代要員合わせて百前後いると思うが……」

「人の流れはどうだ? 都市部と頻繁に行き来があるのか?」


 問いに、ベリリュースは首を横に振った。


「頻繁なのは近くの村からだ。都市からも来るが、所詮扱っているのは作物だ。頻繁にきても掘り出し物には出会えないさ。村同士が物々交換のために大きくしたような集落だよ」

「食料の集まる町か」


 これは使える――と、シドは思った。そこにいれば盗賊や旅人、商人を探して襲う必要がなくなる。待っているだけで周りから食べ物を持って人がやってくるのだ。

 それに王都の様子を調べるための協力者も必要だ。いつどれだけの規模の兵が出発したかわからねば先手を取れない。

 制圧しないで町に入り込み、そこで地位を得る。作物を買い上げ、支払った金を回収する。その金でまた作物を買い、それをまた回収する。


(いや……待てよ)


 シドの頭に閃くものがあった。

 当初の計画ではゴブリン達を使い村を滅して敵戦力を小出しにさせる予定だったが、食料の調達にそれを組み込めれば云うことはない。


(つまり――)


 取引が終わったらやってきた村人達は殺してしまおう。そしてそれを隠すためにゴブリン達を使って彼等の村を滅ぼすのだ。そうすれば町は疑われないのではないか――

 襲う村を制御(コントロール)すればやってくる討伐隊を誘導できる。

 襲う村を制御すれば他の村の住人は懲りずに作物を持ってやってくる。

 今のように裏にいるシドや人間が直接手をかける場合は生き残りがでないよう常に気をつけねばならないし、だからといって魔物達に根こそぎ奪わせればそれもまた余計な警戒心を煽る。

 だがこの方法なら今よりも大きな規模で物資を集めつつ、村を殲滅し魔物の存在を匂わせ、なおかつ裏にいるシドの存在を知られない。

 完璧な計画である。


「ベリリュースよ」


 シドは男の肩に手を置いた。


「お前の協力が必要だ」

「ほ、本当に……?」

「うむ。俺をその町の町長に会わせてくれ」

「ち、町長に? なんで?」

「重要な話があるからだ」

「……それは可能だが、エルフや魔物をこれだけ連れてたら――」

「そんなことはお前が考えることではない。――ターシャ」


 シドはターシャを呼び、


「俺の荷物からワイヤを持ってこい」

「ワイヤ……ですか」

「金属製の紐のようなものだ。この男はとりあえず縛っておく」

「それならいいものがありますけど」


 ターシャが黒い輪を手に近づく。その顔には笑みが浮かんでいた。


「これです」

「首輪か」

「はい。これは奴隷用の拘束具です。大抵はエルフ相手に使用されますが」

「エルフに?」

「魔法に対する効用があるからです。しかし頑丈なので首輪としても一流品です」

「なるほど」


 手渡された首輪を矯めつ眇めつする。そして――


「ああっ!?」


 驚くベリリュースの首にかけた。

 それを確認してターシャの笑みが深くなる。


「鍵は魔力を使うので私が――」


 ターシャが最後まで云う前に、シドは首輪の両端をかけの字に重ねて捻った。


「これでいいだろう」

「……そうですね」

「ワイヤも持ってこい。結んでおけば融通が効く」

「はい」


 ターシャがワイヤを取りに行くと、シドはわなわなと震えているベリリュースに云う。


「町までの経路を書き込め」


 そう云って地図を手渡す。


「……わかりました」


 これでベリリュースの処置は終わりだ。シドは秤を片付けさせた。そして、


「ドリス」


 呼んでしばらくすると掌より少し大きいくらいの人影が空から降りてきた。

 掌くらいの身長に、布に穴を開けただけの貫頭衣をかぶり、背中から生えた四枚の羽を震わせホバリングする。

 気の強そうな切れ長の目が今は嗤っていた。 


「なんでしょうか」

「ヴェガス達に伝令だ」   


 ドリスを公の存在として人目に晒すことはデメリットもあったが、隠した場合のデメリットとは比べようもなかったのでベリリュース以外の者には既に周知のものとなっている。


「地図を持てるか?」

「勿論ですとも!」


 返事を聞き、地図を小さく折り畳む。

 ドリスに渡しながら、


「ルオスの町の手前まで行くように伝えろ。町の手前でこちらと合流する」

「襲う予定になっている村はどうしますか?」

「そちらは変わらん。ルオスまでの途上にある村は全て襲うように云え。後発のこちらで生き残りは始末する」


 計画では生き残りをわざと出すようになっている。なので襲撃直後ではなく時間を置けば問題ないだろう。知らせは出来る限り早く出発する筈であり、シド達がやってきた時にまだ残っているのは村の再建を考えて留まっている者達の筈だ。彼等は殺しても構わない。


「終わったら戻ってこい。ルオスまでは発見されたくない。上空から監視し、近づく全ての者を報告するのだ」

「了解しました!」


 ドリスはビシッと敬礼し、地図を持って飛び立った。


「さて――」


 襲う予定の村までは空を飛べば往復一日くらいか。二日経ってもドリスが戻ってこなければ撃墜されたと考えてもいいだろう。


「村を出る準備をしろ。水と食料を載せ、傭兵達の装備はこれまで通り分配だ」

「お、おい……今のは……?」


 周囲に号令をかけるシドにベリリュースが、


「今のはまさか、妖精では……」


 その瞳は信じられないものを目にした驚愕に見開かれ、口元は喜びに弧を描いていた。


「……知っているのか?」

「み、見たことはないが、その、本とかで……」

「本だと? どのような本だ?」

「え、英雄譚とか……。主人公が森の中でよく出会ったりする。てっきり架空の存在だとばかり思っていたんだが……」

「………」


 シドは鷹揚に頷き、さも当然であるかのように振る舞いながら、


「それはそうだろうな。遥か昔に行われた乱獲のせいで絶滅寸前なのだ。森の中で偶然俺と出会い、それから行動を共にしている」

「なんだって!? それじゃああんたは――」

「彼女とは、一族を繁栄させる約束をしている」

「馬鹿な……。あんたが英雄だっていうのか……」


 ベリリュースはショックを受けたようでぶつぶつと小声で呟く。


「――ふむ」


 どうやらベリリュースには神よりも英雄のほうが効果がありそうである。この男からはドリスと同じ匂いがする。大方読んだ本というのは子供向けの架空小説の類だろう。


「妖精を乱獲したのがどの種族であるかは云うまでもないな」

「………」

「いいか。お前は知らないだろうから教えてやるが、物語の中で描かれる英雄像とは歪められたものなのだ。お前は不思議に感じなかったのか? 誰にでも優しく、誰にでも厳しい英雄が人間のためだけに働くことを」

「確かに……云われてみれば……」

「本当に公平な人物ならば、魔物を退治するように人間だって退治していなければおかしいだろう?」


 話しながら馬鹿なことを云っているな、と思う。例え物語の英雄が実在の人物をモチーフに多少の脚色を加えて描かれたものだったしても、人間の英雄が人間を第一に考えるのは当然のことである。


「あの妖精が俺を選んだのは、俺がそれをできる人物だからだろうな」

「し、しかし、だからといって人間を殺すのは……」

「お前ももういい年齢だろう。子供のように真実から目を逸らしたままで物語に書かれていることを信じるのは止せ。今、妖精が必要としているのは子供向けの英雄ではなく、大人向けの英雄なのだ」

「だ、だが、それだと本になる時に――」

「心配は要らん。本になる時は妖精を助けるために人間の悪党を始末した英雄として書かれる筈だ。お前が望めば英雄の仲間として物語に登場することができる」

「いや……ち、ちょっと待ってくれ! あんたはあの妖精に騙されているんじゃないのか? あれが邪悪な妖精でないとは云い切れない!」

「邪悪な筈がないではないか。妖精を助けるために具体的にどうするかを決めるのは俺なのだから。あの妖精はただ現状を訴えただけよ」

「………」

「そして邪悪でない妖精が助けを求めた俺もまた邪悪ではない。――そうだな?」

「……す、済まないが訳がわからなくなってきた。少し考えさせてくれないか」

「時間ならある。好きなだけ悩むといい」


 シドは許した。いくら悩んだところで妖精に先入観を持っている限り真実には辿り着けない。それに時間があっても余裕があるとは限らない。

 傍で話が終わるのを待っていたターシャからワイヤを受け取り、堅く結びつけて適当なエルフに渡す。

 

「なんか、聞いていたら頭が混乱してきましたが」


 ターシャは首を捻っている。

 シドはベリリュースに聞こえない声で、


「妄想と現実の垣根を取り払おうとしている男を理解しようとするのは止めておけ」

「それで役に立つのですか?」

「立つさ。肉体的に強くするのが無理なら精神的に強くするしかない」


 折れぬ精神とは信念であり、強き信念は背中を少し押してやるだけで狂気へと昇華される。そうなれば後は簡単だ。狂気とは何かを徹底的に信じること。その基盤が崩されそうになれば迷うことなく排除しようとする。

 ――例えそれが己の良心であったとしても


「ベリリュースは後でドリスに説得させよう。それで問題は解決する」


 それで種が蒔かれるだろう。

 その種は時とともに成長し、最終的に妖精のためならば何であろうと躊躇なく行うという狂気の花を咲かせるのだ。――いや、咲かせてみせる。


「あの男は素晴らしい狂人に仕上がるぞ。アキムやキリイにも劣らぬ、な」


  

  

ミルバニアは村の名前ではなく戦う国の名前です。一応

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