「く、臭いっ!!!」と叫ばれて追放されたけど、実は聖女でした。ぬか床で世界を救います。
若い頃は、とにかく肉だった。
ステーキ! とんかつ! 焼肉! 脂の滴る料理を見るだけで胸が高鳴った。
ナイフを入れた瞬間に肉汁が溢れ出し、鉄板の上でじゅうじゅうと音を立てる。その香ばしい香りだけで幸せを感じていた。
ハンバーガーもピザも大好物だった。
チーズが糸を引くピザを頬張り、カリッと焼けたバンズの間からソースが滴るハンバーガーをほおばる。ポテトも食べるし、コーラも飲んじゃう! ジャンクフード、万歳!
いくら食べても胃もたれなんて知らない。夜中にラーメンをすすっても、へっちゃらだった。
あの頃の自分は、食べたいものを食べたいだけ食べて、それが当たり前のことだと思っていたのだ。体はいつまでも動くし、多少無理をしても平気だと――そんな根拠のない自信を持っていた。
けれど、いつの間にか変わっていた。
ステーキの脂が重たく感じ、ピザのチーズが胸に残るようになった。いつからか、大好きなお肉を食べなくなり、油っぽいものも受け付けなくなった……。
アラサーになり、胃腸が衰えていくのを実感している。
「今日は焼き魚と味噌汁、それに漬物でいいか」
そんな言葉を自分の口から聞く日が来るなんて、かつての自分なら信じなかっただろう。
最近は、香ばしく焼いた鮭の切り身や、だしの染みた煮物が恋しい。熱い味噌汁をひと口すすれば、それだけでほっとする。
そして、漬物。ぽりりと噛めば、塩気の奥からほんのりとした酸味が広がり、疲れた心までほぐしてくれる。
若い頃の「刺激」よりも、今は「安らぎ」を求めるようになった。
漬物はなんと自家製! 気づけば、ぬか床をかき混ぜるのが日課になっていた。しっとりとしたぬかの感触。発酵の香り。
そこには派手さも華やかさもないけれど、不思議と心が落ち着く。時間をかけて育てるその手間が、今の自分には心地よかった。
***
その日――キッチンに差し込む朝の光は、ぬか床の表面をやわらかく照らしていた。
壺のふちに手をかけると、ぬかの中から立ちのぼる酸味と穀物の匂いが鼻をくすぐる。どこか懐かしく、胸の奥をほどくような香りだ。
指を沈めると、ぬか床はしっとりと温かく、指の間をすり抜けていく。昨日より少しだけ水気が増している気がする。
底からすくい上げるように混ぜ返し、空気を含ませる。木べらが壺の底に当たるたび、かすかな音が響いた。
そのあとで、小ぶりの胡瓜を一本、丁寧に拭ってぬか床に沈める。指先が野菜の冷たさを覚えているうちに、表面にぬかをまんべんなくまとわせた。
「これで、明日の朝が楽しみね」
独り言のように呟きながら、私は壺の蓋を締めた。
その瞬間――、床の下がふっと沈んだ気がした。
「え?」
視界がぐにゃりと歪む。
光が反転し、世界が音を立てて崩れていく。
「……ここ、ど、こ?」
気づけば、私は見知らぬ大理石の広間に立っていた。天井は高く、ステンドグラスから差し込む光が、虹色の模様を床に落としている。
「おおお!!! 聖女が召喚されたぞ!」
まわりを取り囲むのは、金と白の装飾をまとった兵士たち。そして、その正面には――ひときわ目を引く青年。
金糸のような髪に、宝石をはめたような青い瞳。
まるで絵画の中から抜け出してきたような王子が、私をまっすぐに見つめていた。
「異界の聖女よ。よくぞ、来られた。我が国を救うため、どうか――」
荘厳な声が響いたその時、私は気づいた。
――手が、ぬかまみれのままだ。
指の間には、あの独特の香りがしっかりと残っている。
光沢のある床に、ぬかの粒がぽとり、ぽとりと落ちた。
「……え、あの、すみません。ちょっと手が――」
慌てて隠そうとしたが、遅かった。
王子の顔がみるみる引きつっていく。
「く、臭いっ!!!!!!!!」
広間に響き渡る悲鳴。騎士たちの表情が凍りつく。
あたりには、ぬか床の芳醇な香りが、じわりと広がっていった。
こうして私は――召喚された最初の瞬間から、国の王子に「臭い」と叫ばれるという、前代未聞の異世界デビューを果たしたのだった。
しかも、どうやら、聖女というのは――
若くて、可憐で、可愛らしい少女が召喚されるものらしい。
ぬかの香りをまとったアラサーのおばさんは、お呼びではなかった。
光の中から現れた瞬間は期待に目を輝かせてたくせに、私の年齢と姿が確認された途端、空気が一気に冷えたのを感じた。
「おい、どうなってる。歴代の聖女は美少女だったと言うぞ。だから、聖女を召喚を許したと言うのに……」
「はあ。しかし、召喚した聖女を王族が娶らなければならない、という習わしでして……」
「はあ!? 王太子の私がこんな……変な臭いのするおばさんと結婚しなければいけないのか!?」
王子は顔に青筋を浮かべ、家臣たちは視線をそらす。誰もが言葉を選びあぐねているのが伝わってくる。
そしてついに、神官が申し訳なさそうに口を開いた。
「……どうやら、召喚の儀式に誤差が生じたようです」
誤差ってねえ、あんた……こっちは召喚されてるのよ。まるで印刷ズレみたいに軽く言うんじゃない。
結局、私は「聖女ではない」と判断され、ろくな説明もないまま、着の身着のままで城を追い出された。
王都の門前に立った私を、冷たい風が吹き抜けていく。
「ちょっと、私を元の世界に戻しなさいよーー!!!!」
怒鳴り声もむなしく、衛兵たちは目を合わせずに門を閉じた。
重たい扉が音を立てて閉まると、残されたのは私と、両腕で抱えた壺ひとつ。
私は追いやられるように、ふらふらと歩き出した。
行くあてもない。門の外は、見たこともない風景が広がっていた。地平線まで広がった草原。空の色は少し灰がかっていて、草の匂いが懐かしいようで、それでもどこか異国めいている。
どうしてこんなことに――。
ほんの数時間前まで、私は自分の台所でぬか床を混ぜていただけなのに。
まさか、次の瞬間には異世界で「臭い!」と叫ばれて追放されるとは、誰が想像できただろう。
涙が止まらなくなっていた。
前も見えないまま、とにかく歩く。
どこへ行くのかもわからない。けれど、立ち止まってしまったら、心が壊れてしまいそうで、ただ前へ。
どれぐらい歩いたのだろう。やがて、道の先に畑が見えてきた。
土の色は深く、稲の穂が風に揺れている。人の気配がして、胸の奥が少しだけ安堵した。
近くには、小さな木の柵と、煙を上げる屋根。どうやら人が住む場所まで来たようだった。足取りがわずかに軽くなる、その時だった。
「おやまあ、どうしたんだい嬢ちゃん。そんなにしょんぼりした顔して」
畑の脇から、腰を曲げたおばあちゃんが現れた。
傍らには、陽に焼けた肌に穏やかな笑みを浮かべたおじいさん。
二人とも、柔らかな目をしていて、それだけで胸がじんとした。
「あっ、その、私……」
なんと説明すれば良いものか、言葉に詰まる。けれど、おばあちゃんは無理に問いただすことなく、ゆっくりと頷いて寄り添うように言った。
「うんうん。なにか辛いことがあったんだね?」
「う……ううっ……わあああん!」
おばあちゃんの優しい声が落ちた瞬間、胸の内側の堤防が音もなく崩れた。
堰を切ったように、声が漏れた。
アラサーにもなって情けない、みっともない、でも止められなかった。
心の中の糸が、ほどけていく。
「あらあら。ほら、こっちにおいで」
「ひっ、ぐ……うええん……」
おばあちゃんは笑いながら、私の腕をそっと引いた。
その手は土の匂いがして、驚くほどあたたかかった。
「腹が減ってるんだろう。まずは飯にしな」
小さな農家の台所で、湯気の立つスープとおにぎりを差し出された。
炊きたての米の香りに、鼻の奥がつんとした。
「……ありがとうございます」
――見知らぬ世界にも、優しさはあるんだ。
そう思ったら、ぬか床の壺をぎゅっと抱きしめていた。
なんだか、少しだけ、生きていける気がした。
「遠慮しないでええよぉ」
おにぎりを両手で持って、かぶりついた。
安心が胸に染みわたっていくようで、気がつけば頬の力がゆるんでいた。こんな素朴な味が、どうしてこんなに優しいのだろう。
食べ終えるころには、胸の奥の冷たさが少しだけ溶けていた。
おじいさんとおばあさんに感謝の思いを伝えたくて、何かお礼ができないかと必死に考える。
「お礼に、何か……できることはないでしょうか」
「いいのいいの。腹が満ちりゃ、それで元気になる」
おばあちゃんが笑う。けれど、私はどうしても何か返したかった。
少し考えてから、思いついた。
「あの……よかったら、ぬか漬けを食べませんか?」
「ぬか漬け?」
「ええ、ぬか漬けです。……ちょっと変な匂いしますけど、味は保証します!」
そう言って壺の蓋を開けると、ふわりと立ちのぼる懐かしい香り。
糠と塩と野菜が混じり合った、あの――日本の台所の匂いだった。
「おお……こりゃあ、なかなかの香りじゃのう」
おじいさんが顔をしかめながらも興味深そうに覗き込む。
おばあちゃんは少し戸惑いながらも、笑っていた。
「嬢ちゃん、面白いもの持ってるねぇ。じゃあ、ちょっと味見してみようかね」
その時だった。低く通る声が戸口から響く。
「おい、じいさん。用があるから畑に来いって言ってたのに、どうして家に……」
振り向くと、日焼けした肌に無精ひげを生やした男が立っていた。
年の頃は四十前後、がっしりした体つきで、額にはうっすら汗が滲んでいる。
腕まくりした袖口から覗く前腕には、土がこびりつき、いかにも畑の男という風情だった。
「ああ、カインか。悪いねぇ、この子が泣いててな。ほっとけんかったんじゃ」
おじいさんが照れくさそうに言うと、カインと呼ばれた男は眉をひそめた。
「泣いてた? ……あんた、見ねえ顔だな」
「す、すみません……!」
私は思わず立ち上がって頭を下げた。
カインはしばらく黙って私を見つめていたが、やがてため息をついた。
「ま、悪い人間じゃなさそうだが……何者なんだ?」
「えっと、その……事情がありまして」
「事情、ねえ。厄介ごとはごめんだぞ」
そう言って、彼は頭をがしがしとかいた。
「カイン、この子な、腹をすかせとったんだよ。だから今ご飯を食べさせてるとこ」
おばあちゃんが割って入ると、カインは鼻を鳴らした。
「相変わらずあんたらはお人よしだな。……って、その壺はなんだ?」
「ぬか床です!」
私が勢いよく答えると、彼は目を瞬かせた。
「ぬかどこ?」
「ええ、野菜を漬けるんです。時間をかけて、発酵させて」
「発酵?」
カインは顎に手をやり、興味半分、不審半分といった表情で壺を覗き込む。
その顔が近づいた瞬間、ふわりと漂うぬかの香りに、彼は思い切りむせた。
「げほっ……! な、なんだこの匂い!?」
「こらカイン、失礼なこと言うんじゃないよ!」
おばあちゃんがぴしゃりと叱る。
「いや、だってこの匂い……! それ、食えるのか!?」
「食べられます。むしろ美味しいです!」
私は胸を張って答えた。おばあちゃんが笑って頷く。
「そうさ、この嬢ちゃんが作ったんだってよ。せっかくだから、みんなで食べようじゃないか」
「いやいやいや! そんな、得体のしれないもんを口にすんなよ!」
カインの制止を無視して、私は壺に手を入れる。
指先がひんやりと沈み、糠の中から取り出した胡瓜は、艶やかに光っていた。
掌で糠をぬぐうと、土と穀物の香りがまじりあい、心の奥が静かに落ち着いていく。
包丁を借りて胡瓜を切ると、ぱりり、と小気味よい音が台所に響いた。
おばあちゃんがその一片を指先でつまみ、そっと口に運ぶ。
「……うん、いい味だよ。塩梅がちょうどいい。はじめて食べるのに、なぜだか懐かしいねぇ」
しばし噛みしめたあと、ふんわりと笑った。――次の刹那、部屋の空気がぴたりと止まる。
「……あら?」
おばあちゃんが小首をかしげると、背中のあたりで「こきっ」と音がした。
そのまま、ゆっくりと腰が伸びていく。曲がっていた背が、まるで若木が陽を求めて真っ直ぐになるように、すらりと伸びきった。
「まあ……なんだいこれ、背中が軽いよ!」
おばあちゃんは驚いたように胸を張り、すたすたと歩き回る。
頬には血色が戻り、肌はつやつや、まるで朝露をまとった若菜のようだ。
その様子を見ていたおじいさんが、目を丸くした。
「お、おいおい、ばあさん!? 本当に歩けてるのか!?」
「ほんとさ! ほら、しゃがんでも――痛くない!」
「うそだろ……ちょっと俺にもよこせ!」
おじいさんは慌てて胡瓜をつまみ上げ、ためらいもなくかじりついた。
噛んだ瞬間、目を見開き――
「ぬおっ!? 体が、体が軽ぇ!」
みるみるうちに背筋が伸び、顔の皺がふっと和らぐ。
気づけば二人とも、まるで若返ったかのようにぴんとした姿勢で立っていた。
「……まるで奇跡じゃな」
おじいさんが腕を回して感心すると、おばあちゃんは笑いながら言った。
「奇跡でもなんでもいいよ。これ、ほんとに美味しいねぇ!」
ぱりぱりと胡瓜をかじる音が重なり、家の中に明るい笑い声が弾んだ。
その光景を呆然と見つめていたカインは、額の汗をぬぐいながら、ぽつりとつぶやく。
「……な、なんだ、この食べ物は。まさか幻のエリクサーとでもいうのか?」
カインの目が丸くなり、信じられないものでも見たようにぬか漬けを凝視していた。私は慌てて両手を振った。
「い、いえ、そんな大それたものじゃなくて! ただの、ぬか漬けです! こんな、魔法みたいな効果――」
そこまで言いかけて、言葉が喉に詰まった。
胸の奥がどくん、と跳ねる。
……そういえば、私――聖女として召喚されたはずだった。
けれど「お前みたいな臭い奴が聖女のはずがない!」と断じられ、追放されてしまった。
なら、このぬか漬けの力は……まさか――
本当は……私、聖女だったの……!??
思考がそこまでたどり着いた瞬間、現実の声が割り込んできた。
「やっぱ、あんた訳アリみてえだな。」
カインが腕を組み、じろりと私を見た。その目には、疑いと興味、そしてほんの少しの警戒が混じっている。
「どうやら、ただの腹をすかせた嬢ちゃんってわけじゃなさそうだ」
私は口を開きかけて、けれど何も言えず、ぬか床の壺をぎゅっと抱きしめた。
ぬかの温もりが、まるで現実を確かめるように掌に沁みていく。
沈黙が落ちた。
おばあちゃんは皿を手にしたまま目を瞬かせ、おじいさんは腰を伸ばしたままぽかんと口を開けている。
その姿がなんだか可笑しくて、泣きそうなのに、思わず笑ってしまいそうだった。
「訳アリって言われても……私、自分でも何がなんだか分からないんです」
声が震えた。ぬか床の壺を抱えた腕に、じんわりと力がこもる。
「気がついたら、この世界にいて。召喚の儀式に巻き込まれて……でも、聖女じゃないって言われて追い出されて……。私、この先どうしたらいいのか――」
言いながら、喉の奥がつまる。
自分の口から出た言葉が、あまりにも情けなく響いて。
カインは黙って聞いていたが、やがてふう、と短く息を吐いた。
「なるほどな。……ま、事情はわかった」
「え?」
彼は椅子を引いて腰を下ろすと、切ったぬか漬けをひときれ手に取った。
「今後どうしたいかは、あんた次第だ。俺には分からねえけど――」
ぱくり。口に含んで噛みしめる。
「しゃきしゃきした歯ごたえ。それに、後からくる深い旨み……。匂いを嗅いだ時は意外だったが……うん、なかなかイケるな」
もう一切れを指先でつまんで、口の中に放り入れる。
「やっぱりな。俺は鑑定を持っていないから詳しい事は分からねえけど、確かに魔力……いや、神力を感じるな。この食べ物には」
そう言い切って、彼は視線を真っ直ぐに向けてきた。その静かな眼差しに、逃げ場はない。
「……さて、あんたはどうしたい?」
カインの低い声が、静かな部屋に落ちた。
「もし本当に聖女なら、国が放っておかねぇ。城に戻れば保護してもらえるだろうが……城に戻るか?」
私は、首を横に振った。
「いえ……あんな自分勝手な人たちのところには、もう戻りたくありません。召喚するだけして、イメージと違うって理由で追い出したくせに……やっぱり聖女だったから戻れと言われても勝手すぎます」
喉の奥がきゅっと締めつけられる。そこまで言って、息を吸い込む。胸の奥の悔しさと寂しさが、ようやく言葉になった。
カインは少しだけ目を細めたあと、立ち上がった。
「……なら、一緒に来るか?」
「え……?」
「ここにいりゃ、聖女だってことがいつかバレる。そうなりゃ、すぐに兵が来る。嫌なら、今のうちにこの村を離れた方がいい」
その言葉に、鼓動が一気に早まった。
どうしよう――この人を信じていいの?
どこまで本当なの? 何もかも分からない。
その時、傍らから温かい手がそっと肩に置かれた。
「カインはいい奴だよ。安心しなさい」
おばあちゃんの声は穏やかで、まるで長い冬を越えた春風のようだった。振り向くと、皺の間からのぞく瞳が、優しく笑っていた。
その瞬間、張りつめていた心の糸が、ふっと緩んだ。
このカインという人物が信頼できるかは分からないけど、見ず知らずの私に親切にしてくれたこの人の言う事なら信じられる――。
私は力強く頷いた。
「お願いします! 私を連れて行ってください!」
ついさっきまで、私はただぬか床をかき混ぜて、胡瓜や大根の匂いにうんうん唸っていた、どこにでもいる一般人だった。
異世界だ? 聖女? そんなの、漫画の読みすぎと言われても反論できない夢物語のような話で、現実感なんてゼロだけど。
……それでも、誰かを助けられるなら。少しでも、この力が人の役に立つのなら――
この世界でも、美味しい漬物を作ってやろうじゃないの!
ぬか床の壺を胸に抱いて、私は一歩踏み出した。
胡瓜のひんやりした感触、発酵の香り、手に残るぬかの温もり――すべてが、これからの異世界生活の戦友だ。
ぬか漬けと一緒なら、この世界だって乗り越えられる――そんな気がした。
……後から知った事だけど。どうやらこの国の王家は聖女を利用して、他国を侵略しようとしていたらしい。
けど、本物の聖女だった私を追放してしまったせいで計画は頓挫。それどころかこの一件がバレて信用を失ってしまうのだけど、また別の話。
冒険者のカインと各地を転々し、発酵した食べ物で人々を健康にして救っていく。
そして、いつしか――ぬか漬けで世界を救う、“ぬか漬けの聖女”と呼ばれるようになるのだった。
出オチ。
別作品のために発酵食品を調べているうちに、「ぬか床の聖女なんていたら、速攻で追放されるだろうな……」という思いつきが降ってきて、その勢いのまま書きました。
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