case.17 【共闘】Ruin
世界に打ち勝つ
「―――主様、私は何処までも貴方を信じます。ですから、主様も私を……」
ルインは、そう言ってきた。
こんなの、それ以上言わせるわけにはいかない。
―――男として。そして主として。
「ああ。もちろんだ。俺とお前は一心同体。ずっと、ずっと一緒だ」
俺は、思ってた事を素直に、そのまま言葉にして伝えた。
本当に無意識だった。
「えっ……それって……」
するとルインは、顔を真っ赤にして、俯きながらこう返してきた。
「そ、それって……私の事が……す、す、す―――」
やめろ……。
これ以上は死亡フラグになる。
それに、それに―――
「―――ルイン」
俺はルインの口に、人差し指を当ててこれ以上の言葉を望まないことを示した。
「―――ッ」
俺は、“双月”の片割れを右手に握り直し、ハヌマーンの方に向き直る。
それを見て、ルインの方も“双月”と以前に作った“烏”を両手に握り、ハヌマーンの方に向き直った。
「行くぞ……ハヌマーン」
「フン、来るがいい」
その言葉を合図に、まずは俺が駆け出した。
短剣の技は、ルインの指導のもと特訓が済んでいる。
それをさらに自己流に改造した。
(その結果が……これだっ!)
「―――“闇”」
一閃。
空高く飛んだ俺は、そのままハヌマーンを縦に割るように斬りかかる。
しかし、ハヌマーンも無抵抗ではない。
「―――『神威』」
ハヌマーンは再び全能力を解放して、俺の攻撃を防いだ。
ハヌマーンの身体を眩い光が包んでいく。
俺は一旦ハヌマーンから距離を取るが、ハヌマーンの身体を包んでいた光は一瞬にして消えた。
「チッ……『神威』はもう厳しいか……」
(……今だッ!)
「ルインッ!」
「はいっ!」
俺はその隙を見逃さず、ルインに動き出すよう煽る。
「“影陰”!」
「“潜影”!」
俺も同時に動き出し、俺たちは影に隠れる。
そしてハヌマーンの後方から飛び出し、剣を構えた。
「先に行きますッ! “分身急所突き”ッ!」
ルインは何人にも分身し、その全員が“双月”と“烏”の両剣で襲いかかった。
それに俺は続く形で斬りかかる。
「穿て……“黒”ッ!」
(これで……俺とルインのどちらかが“双月”での攻撃に成功すれば……!)
「―――ッ!!! 背後から―――」
―――反応が……遅いッ!
俺とルイン……その全ての分身が一斉に斬りかかった!
「グルァァァァァァァァァァァァァァッ!」
……解析完了。
ハヌマーンの血は、回収できた。
これで俺たちの“双月”には、神の特効力が付与されたことになる。
「ク……ソ! 思うように身体が動かない……ッ!」
「なあ、ハヌマーン」
「な……んだッ!」
俺は……いや、俺たちはニヤリとした表情でハヌマーンに近づいて、そして言った。
「―――これが最後だ。決着をつけよう」
ダメージは与えられるだけ与えた。
体力と魔力も、削げるだけ削いだ。
そして俺たちの準備も万端だ。
“双月”には“神滅”同様神特効が付与された。
これで、全てが完璧なはずだ。
「面白い……面白いッ! 神に抗う者たちよッ! 我を……我を超えてみろッ!」
何度かの戦闘を終えて、だいぶ好戦的になってきた様子のハヌマーン。
(……なんだよ、ここに来てこういう感じになるなんて。……だが、負けるわけにはいかないんだ)
「行くぞルイン。全力でアイツを討ち滅ぼすッ!」
「はいッ! 何処までも、何処までもお供しますッ!」
―――行こうじゃないか……ッ!
「“分身”……ッ!」
ルインは再び分身をして、ハヌマーンに近づいていく。
「数がいればいいと思うな悪魔の小娘よッ! “猿神之天雷”ッ!」
ハヌマーンは、自身の周囲に落雷を起こし、ルインの分身を確実に仕留めていく。
しかし、ルインはそこにはいなかった。
「―――私は影……影は私ッ! 穿てっ! “氷天”ッ!」
空から氷の魔力弾が降り注ぐ。
俺はそれを見て、ルインに合わせるべく魔法を放つ。
「“炎天”……ッ!」
俺が放った魔法は、空でルインの魔法と重なる。
「主様ッ!」
「ああ! 行くぞ……合魔、“二色魔天”ッ!」
赤と青、二色の魔力弾が空からハヌマーン目がけて降り注いでいく。
「グォォォォォォォォッ……」
まだだ、怯んでる今がチャンスだ!
「“飛影”ッ!」
俺はすぐさまハヌマーンに詰め寄り、短剣を突きつける。
「チイッ……“猿神之加護”!」
が、間一髪でダメージ軽減をかけられてしまう。
だが、まだだ……攻撃できるのは俺だけじゃない!
「“斬影”……ッ!」
背後からルインが飛びかかる。
俺に気を取られていたせいで、ルインに気づかなかったようだ。
対処が出来ず、背中を勢いよく斬られてしまっていた。
「グァァァァァァァァァッ!」
ハヌマーンはルインの斬撃を受けて……神特効のついた“双月”での斬撃を受けたハヌマーンは倒れ込む。どうやらもう死にかけみたいだ。
声はおろか、呼吸もしてないように感じ取れる。
(よし……これでそろそろ……)
―――そう。この時の俺は完全に油断していた。
魔帝八皇の皆と、あれだけダメージを与えて。
一度はコイツを滅ぼしかけて。
首の皮一枚繋がった状態のハヌマーンなんて、簡単に殺せると思って。
ルインの一撃で、もう終わったと……そう思ってたんだ。
「ハヌマーン……これで、ようやく……お前との戦いも終わりだ―――」
俺は“双月”を構えて、倒れているハヌマーンに突き刺そうとした。
―――その時だった。
「まだ終わりでは無いぞ……ッ! ―――“猿神之焉雷”ッ!!」
不覚だった。
―――グシュッ……
「……ガハッ……!」
「ッ………!」
やばい……視界が……暗く―――
不意打ちとは……ま…さか……!
俺の胸には、光の……雷の柱が突き刺さっていた。
俺の手には、“双月”が握られていた。
(マズイ……マズイマズイマズイマズイマズイ! クソ、俺が死んだらルインが……!)
「ル……イン?」
「ウッ…………あるじ……さ……ま」
(ルインが……ルインがっ! なんで……俺は……また……っ!)
『―――また守れないのか?』
『―――愚かな。魔を統べるとは何だったのだ』
『【憤怒】に身を委ねろ』
『【暴食】の限りを尽くせ』
『【大罪】の力を解き放て―――』
お……れは……ッ!
▶スキル『転生』を使用しますか?
……ッ!
これで……ルインも助かるのか……?
“双月”の“共有”効果は俺のスキルまで対応されてるのか……?
ああ、ダメだ……これしか……思いつかない……
何か……何かないのか……ッ!
「誰か……ッ!」
無我夢中で、手を伸ばした。
魔帝八皇の三人は、手前の部屋で寝てるはずだ。
俺とルインは瀕死状態……。
もう、本当に死なの―――
「―――まだよっ! まだ諦めちゃだめ!! おねえちゃんが助けにきたんだからっ!」
そう、言いながら。
混沌とした空間に、突如として現れたのは。
「アス……モ……フィ……?」
「はい! おねえちゃんが颯爽と駆けつけました! それじゃルミナス様! 今からおねえちゃんに殺されて下さい!」
……は?
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