case.12 【共闘】Manon
ででどん(絶望)
「神の身体なら、神技に使用回数の制限など無いッ!」
ハヌマーンは高く飛び上がった。
……いよいよ本物の神との戦闘となるか。
結局前回戦ったゼウス神は、レオンたちによる偽装の物だったから……今回の戦いが初めての物となる。
「“猿神之加護”ッ!」
あの技は……確か加護の力を付与する技だったか。
そしてそんなハヌマーンは、そのまま攻撃する態勢に入った。
「“猿神之絶雷”ッ!」
「“雷鎧”ッ!」
ハヌマーンによる攻撃を、俺は咄嗟にサタンにおしえてもらった“鎧”シリーズの魔法で防ぐ。
しかし……
「グッ……グァッ!」
それを防ぎ切る事は出来ず、貫通したダメージを喰らってしまう。
「神の裁きを防げるとでも思ったか! フン、愚かな!」
「魔王! しっかりしろよなァ! オラ、オレもいくぜェェェッ! “爆炎天”ッ!」
マノンがお得意の爆発魔法を放つ。
流星のように一筋の隕石が流れ落ちていく。
「無駄だッ! 我にダメージを与える事など不可能であるぞッ!」
隕石はハヌマーンに直撃した。
だが、その言葉通りハヌマーンにダメージは与えられていないようだった。
「チッ……固えな……」
「次は俺がやる……! “五色魔天”ッ!」
(まずは何とかして突破口を見つけないと……ッ!)
空から、俺の放った魔法がハヌマーンを襲う。
「フハハハハハッ! 効かぬ! 効かぬわァ! 先程までの老害の身体であれば、受けきれなかっただろうが、今の状態であればこんな魔法程度受け止めきれるわ!」
これもダメか。
魔法が効かない相手は居ない……。その言葉が脳内に浮かび上がるも、一瞬にしてその思考は消え去る。
なぜなら神と俺らとでは格が違いすぎるからだ。
その証拠に、俺たちの攻撃は一つも効いている様子がない。それだけで分かる強さ。
「ええい、我はアダムに活躍した所を見せなければならない! だから魔王を殺せばッ! 魔王をッ! オッ! オ……オオ……グオオオオオオオオッ! コロスコロスコロスッ! 魔王、殺せば俺のこの顔はァァァァァァァァァァァァッ!」
情緒不安定に叫び出したハヌマーン。
俺はハヌマーンの放った言葉……その内の“アダム”という言葉に、やはり引っかかってしまっていた。
アダム、というのは言うまでもなくアダム神の事であろう。
アダム=ディベリアート神。創造を司る光の神。
ハヌマーンが先程から何度もその名前を口にしている……ということは。
少しだけ嫌な予感が脳をよぎるも、俺はそれをすぐに消し去った。
「早く死ねッ! “猿神之轟雷”ッ!」
俺たちの頭上に黒雲が現れ……そこから辺り構わず雷が落ちてきた。
いわゆる、先程までの“なんとかギレイズ”とかいう奴より、範囲性に特化した技だ。
って……そんな事考えてる場合じゃないか!
「“雷鎧”ッ!」
「“無魔の境地”……!」
対雷魔法用魔法で何とか防ごうとするも、やはり威力が高過ぎて防ぎ切れない。
隣ではマノンが何とか踏ん張っているようだったが、少しずつ、少しずつ押されているようだった。
(魔帝八皇屈指の魔法使いが押されるレベルかよ……。これじゃ足りないというのか……ッ!? それなら……!)
「“王壁雷”ッ!」
“壁雷”の進化系、“王壁雷”で俺とマノンの周囲に雷の膜を張る。
これで多少は……ッ!
「無駄だッ! 我の裁きは防げないッ!」
さらに雷の勢いは強くなる。
(クッ……! もう手が無い! 何か……何かないか!?)
「オレに任せろ……ッ! 全てを喰らい尽くしてやる……ぜ。スキル発動……『獣神化』ッ!」
マノンが、『獣神化』をし一瞬にしてその姿をより獣の物へと近づけた。
そしてそのまま魔法を放つ。
「オレは獣神……神を喰らう獣だッ!」
そう言いながらマノンは吠えた。
すると雷は少し押されたように引いていく。
「獣神……だとッ!? 何故だ、所詮は紛い物の神だろうがッ! ふざけるな、ふざけるなよッ!」
「“爆炎天・獣神咆哮”!」
さらにマノンはそのまま追撃を入れる。
先程と同じ魔法のようだが、それよりさらに大きい隕石が降ってきている。
「グッ……グァァァァァァァァッ!?」
直撃。
しかもダメージが通っている様子。
(これは……?)
「うへぇ、オレ……の全魔力を注ぎ込んだんだけどよ……もう魔法撃てねぇわ……はは」
(……は? 全魔力を? マジかよ、バカなのか?)
いや、マノンはバカだけど。
マジかよ……右を見ても左を見てもバカしか居ないって。
「ま、冗談だけどよ……少し魔力を使い過ぎたってのは本当だぜ……?」
「あと何発撃てそうなんだ?」
「……アイツにダメージを与えられそうな魔法を撃てるのは、マジで次が最後かもしんねぇ」
次が最後……か。
なら俺も、この杖を使った全力の魔法を放つとするか。
「合技だ……いけるか、マノン?」
「あいよ! ならオレに合わせてくれよ!」
「お前に……ってことは爆発系の?」
俺の問いに、マノンはニヤリとしただけで答えはしなかった。つまり、そういうことなのだろう。
(任せろ、爆発魔法なら炎魔法とほぼ変わらない。撃てるはずだ……よな?)
「おら、じゃあブチかますぜェェ!?」
マノンは飛び上がり、魔力を集めていた。
俺も、流れで合わせるしかないのでとにかく集中していた。
「……“爆発炎魔……・獣神咆哮”ッッッッ!!!!」
(来た……! いつものヤツか! なら俺は……!)
「“二重連鎖・爆発炎魔ッ!”」
逆に同じ魔法を放った。
同じ魔法が2回放たれた状態……これが“二重連鎖”状態だ。
通常の魔法より威力が高くなるため、できるならこの状態にしておく事が、戦闘を進める際優位に立てるようになる。
「合魔……“二重爆発炎魔”ッ!」
俺たちから放たれた魔力弾が、ハヌマーンに着弾し、そこから大爆発が起こる。
「ァ……グルァァァァァァァァァァァァァァッ!」
よし、ダメージは通っている!
これなら……
「チッ……さすがにもう限界が……。あとは託したぜ、魔王……バタッ」
(クッ……そうか、もう限界が……)
てか絶対面白がってるだろ、コイツ。
バタッ、って……。
あーもう仕方無いか。
ここは早めに切り上げてさっさと後退するとしますかね……。
まずは隙を作って……そこからか……。
「フハハ! 魔王! お前のお仲間はもう動けないみたいだが大丈夫か? ククク……愚かな。神に逆らうからこうなるのだ!」
「―――んじゃあその神に逆らう愚かな人間がもう一人、増える事になるな」
「ほう……? それはどういう―――」
「―――こういうこったァ! “鬼龍流奥義・滅閃”ッ!」
刹那、閃光と共にハヌマーンの身体を切り刻む斬撃音。
上空から突然現れ、そして風のように一瞬にして刀をふるい、そしてそのまま俺の隣へ降り立ったその人物。
「サタールッ!」
そう、サタールだ。
後ろの広間に居たサタールが、駆けつけて来ていたのだ。
「おう! 今の内に下がるぜ! 走れ大将!」
「了解だ!」
俺はサタールに言われるがまま走り出す。
途中、しっかりと倒れて眠っているマノンを回収した。
「グオオオオオオオオッ! 魔王……魔王魔王ッ! ふざけるなッ! ふざけるなよッ! クソガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!」
一瞬の隙を突かれ、俺たちに逃げられたハヌマーンは叫ぶ。
誰も居なくなった“爆炎の間”には、ハヌマーンただ一体のみが残されるのだった。
ブックマークぅぅ??!!




