case.6 事後処理と進化
てへぺろ
全て終わった後、俺たちは外へ出て海辺に止まっていた船に向けて言い放った。
「おい、居るんだろう? 帝王ゼリドとやら。
貴様らは俺たち魔王軍を敵に回した。今日は逃してやるが……これから、いつも通りの平和な日常が過ごせると思うなよ?
お前ら貴族や一般市民……全員が魔王軍の脅威に怯えながら生活することになるだろう。
だがいいか? それで俺たちを恨むなよ? 先に仕掛けてきたのは戦帝国の方だ。こうなるのは当然の報い、当然の摂理だ。だから―――」
心の中の鬱憤を言葉に出し切る前に、奴らの船は逃げるように動き出した。
数は僅か1隻。9隻もの大型船を置き去りにしたのだ。これは有効活用せねばな。
そしてその帝王を乗せていると思われる船には、あの最後の生き残りの戦士……名をクサナギと言うらしいが、ソイツを乗せてきた。
話を聞いたところ、彼は最初から国に対する不信感があったらしい。
が、帝王ゼリドが洗脳魔法を使い、逆らうと自殺するような暗示をかけたらしく、今まで逆らうに逆らえなかった、と。
それに同じ志を持つ同志が一人も見つからず、結局今のまま帝王の駒となって動くことしか出来なかったらしい。
それにどうやら、幼少期の頃からサタールの事は知っているようで、サタールに憧れて戦士を目指すことにしたらしい。
だから、レオンに頼んで洗脳系魔法を解除してもらい、俺がその上で『支配』をかけた。
レオンのような完全支配ではなく、魔帝八皇にかけているような、簡易な支配を。
それで十分だと考えたからだ。
そして、サタールの提案でクサナギを俺たちの仲間に引き入れる事にした。
その真意はサタールが弟子を取りたかったということなのだが、まあ特に不都合は無いだろうと判断したから良しとした。
恐らくこのクサナギは、リガルテやリガーテのような感じのポジションだろう。
多分アイツらも、いずれはベルゼリオの弟子になりそうだな。
……話を戻そう。
クサナギを乗せた船は、戦帝国へと逃げ帰って行く。
俺はクサナギに、新しく覚えた通信魔法“伝言”で指示を送ると言い、送り出した。
これでクサナギを通して、戦帝国の情報を内側から得ることが出来る。
(スキル『大魔道』、様々だな……)
「これで全て終わったな」
俺はこの広間と、そして城内外に散らばった死体の事を考えながらそう言った。
……周りを見ると死体。広間を出ると死体。城の外に出ると死体。
流石に……これは多過ぎる。
(どうする? 燃やすか? どうせ利用価値は無いしな)
「にしても、この城もまだまだだなァ」
「ええ、そうですね。まだ城の外の設備が完璧ではないですし」
サタールとルシファルナがそう言った。
確かにな……。二人の言う通り、少し甘すぎたかもしれない。
魔法抵抗、物理抵抗の2つの術がある事を完全に考慮してなかった。
だから実力のある奴は、誰かの力を借りたりしてこの広間まで突破してきたんだ。
しかも今回のは、恐らく雑魚の部類だろうから……。
もう少し高レベルの防衛設備を、城内外問わず設置しなければな。
「それじゃあ皆、ひとまず休憩としよう。その間に誰か、この大量に散らばった死体を片付けておいてくれ」
「「了解」」
俺の一言で皆は散開する。
そして俺は、城の外に造る設備や町の構想に妄想を膨らませながら広間を出た。
……次は城下町でも造ってやるか。それも、町民全員が戦闘能力の高い人にして、狂気の町とかいう名前をつけて……。
……それに、監視塔や守護塔を建てよう。
今度は今よりもさらに強固な守りにして、誰一人この城内へと入れないようにしよう。
フフ……面白くなってきたぞ。
よし、まずは設計からだ。ルシファルナたちと一緒に造ろう……!
■
さて唐突で申し訳ないが、また一ヶ月が経った。
戦帝国フラウの突然の襲撃から、一ヶ月だ。
この一ヶ月で、特に変わったことは起きず、ただただ俺たちが魔王軍の土地を次々と魔改造しただけだった。
さて、前回のようにまずは改造したポイントや新たな設備を紹介していこう。
まず一つ目は、魔王城周りについてだ。
最初に、設備は関係ないのだが、この魔王城に名前をつけた。
《Rulers of Nightless Castle》……“支配者達の不夜城”……これがその名前だ。
まあ、肩書きみたいな物だから、正式な名前はまだ決まってないんだけどな。
さあそしてここからが本編だ。
まず防衛システム関係について。
第一のシステム、“招王雷ゾーン”は大幅な変更を施した。
まず発動させる魔法を“五色魔天”に変え、設定属性を【炎】【水】【雷】【光】【闇】の五属性にした。
ちなみに“五色魔天”は、文字通り五属性の魔法の“○天”を組み合わせた魔法だ。
さらに魔法に耐性のある相手が現れることを加味し、サタールのスキル『剣鬼』の効果の一部である、“無限に刀を生み出せる”能力を付与した魔道具、仮に“剣放出機”とでもしておくが、それを5つ程作った。
そしてそれも設置し、“無限之剣雨”……そう名付けたが、魔法と剣が無限に降り注ぐシステムが出来上がった。
これで、城門前のゾーンで一通りの敵対勢力を排除出来るだろう。
これが第一のゾーンだ。
次に城壁だ。
ここは特に変化は無いが、唯一あるとすれば、この壁には前回のまま俺の“壁雷”の魔法をかけてあるままで、さらにその上からある魔法を付与した。
それは、魔帝八皇が皆使える魔法……“転移魔法”だ。それを、皆の協力のもと城壁に付与する事ができた。
この魔法の転移先は、この土地から遠く離れた海上に設定してもらった。
……これによって何が起こるか。
単純な話だ。壁に触れれば電気に痺れながら海上へほっぽり出される。
さらに、それを回避しようと城門を正面突破しようとすると、そこにも同じ魔法が付与されているので、全く同じ結果となるだろう。
というかそもそも門を無くした。
ではどうすれば城内へ侵入出来るのか。
勿論、考えた。
その答えは水堀の中だ。
城門……いや、壁の真下、水堀を通れるように設置した小橋の下の部分に城内へ侵入出来る穴を掘った。人一人がようやく通れるような小さな穴を。
これに気づけばようやく城内へ侵入出来る。だが忘れちゃいけないのは、この水堀の中には人を喰らう死霊兵“骨魚”が大量に居るということだ。
コイツらを処理すれば城内へ侵入出来るが、流石に簡単に通す訳にはいかないので、ルインと協力して、“骨魚”を無限に召喚するスポーン装置を作った。
だからまずはこの装置を破壊して、尚かつ水堀の中の“骨魚”を処理すれば、ようやく城内だ。
これが、第二のゾーン。
次に城内へ侵入した後の所だ。
前回は大砲やら剣放出装置を大量設置していたが、これらを全撤去した。
代わりに、ルシファルナにお願いして強力な虫を何体か召喚してもらう事にした。
喚んでもらったのは、攻撃系魔虫“破壊者”と“翻弄者”の計二体。
この二体はかなりの巨体で、倒すのには一苦労だろう。
これが簡易的かもしれないが、第三のゾーンだ。
最後に城内。
前回はルシファルナの甲冑虫兵の部隊が戦闘するというシステムだったが……。
今回、それを止めた。
代わりに置いたのは、魔帝八皇だ。
そう、魔帝八皇。
正確に説明しよう。
まず、城内を徘徊する甲冑虫兵を全部消した。
そして、代わりに4つの広間を用意した。
通称“四天王の間”……。
ここには魔帝八皇を含めた俺の選抜メンバーが4名、各広間にて戦闘を行う。
恐らく、最も最強で最凶の防衛システムだろうな、これが。
今はサタール・ルシファルナ・マノン・ルインしか居ないので、それぞれの専用のフィールドと共に待機してもらっている状態になる。
なぜもう待機してもらっているか、それはこの後すぐに分かることだからひとまず先に解説を終わらせることにする。
さて、次は城の外……新しく出来た設備の紹介だ。




