case.3 戦帝国の侵攻
―――あれから一ヶ月が経った。
そう、時が経つのが早すぎるかもしれないが、それはツッコまないでくれ。
一ヶ月、だ。
まず、経過報告をしよう。
・一つ、魔王城が完成しました!
黒を基調とした、巨大な城。西洋の城をイメージした城だ。
ルインの幻影魔法……と、いうか『変幻』のスキルで城の上部……空に黒雲を写している。
その雲からは紫色の雷も発生させている。
所詮は幻影だが。
そして話していた俺のロマンだが、もう詰め詰めに詰めた!
まずは大砲!
普通に実弾……鉄の塊をブチ込むタイプの大砲と、魔力光線……つまりレーザーを発射するタイプの大砲を用意した。
それに、サタールの『剣鬼』のスキルを使った剣を無限に発射する装置も作った。
城壁は完璧に強固にして、そして触れるだけで俺の魔法、“壁雷”が発動するようにした。
これにアスモフィの『守護』をかけたら完璧になる。
壊れない、登れない壁の完成だ。
さらにその城壁の周りには、溝を掘り、水を流す。水堀……というのだろうか。それを用意した。
その中には簡単に水の中から脱出できない様に、ルインの『死霊』のスキルで、スケルトン……いや、骨魚か。……を大量に召喚して、泳がせている。
調べたところ共食いの心配はなく、人肉のみを喰らうようだ。
なので、水に落ちたら一貫の終わり。確実に死ぬだろう。
ちなみにそう簡単に死ぬ防御力では無いらしい。
さらにその水堀の上空部と、隣接する陸地に、敵意を持った相手がやって来ると、俺の魔法、“招王雷”が発動するようにした。
この魔法には、ほぼ確定で痺れを起こす効果があるので、魔法などで抵抗されない限り、ここで多くの敵はふるいにかけられるだろう。
さて、まず城の周りはこの位だろうか。
城内には、俺が作った西洋の甲冑を着たルシファルナの配下、人型虫が徘徊している。文字通りの“守護者”だ。
それらはサタールの生み出した刀を装備していて、その数はおよそ100体超え。
ルシファルナによると、ほぼ完全に自律しているようで、こちら側から命令出来ることは無いみたいだ。(最初に組み込んだ命令以外は)
甲冑虫兵には“職業”が割り振られているみたいで、“戦士”と“騎士”の二つに分かれているらしい。
“戦士”は『身体強化』が、“騎士”は『挑発』のスキルが使える。つまり、それぞれ一体ずつ組めば、騎士がヘイトを稼ぎ、その間に戦士が攻撃するという、完璧な布陣が完成するのだ。
それに、基本的に城内にはルシファルナとマノンがいる。2人とも、城内に作った《魔法大図書館》と《魔法練習場》に入り浸っているのでな。
もちろん敵侵入時の警報システムも作った。
この世界では魔法が使えるから、色々便利でな。こういう諸々のシステムはレオンにやってもらった。
一言も喋らせず、黙々と作業させました。
さて……とりあえず俺達の魔王城に関してはこの辺りか。これからこの城が、俺の世界支配の象徴となるのだ。派手にドカンと花火でも打ち上げたい物だ。
・続きまして二つ目! たった今戦帝国フラウが侵攻してきました!
マズイ。これは想定外だった。
城が完成して約一日。少しぐーたらしていたところ、外を監視していた甲冑虫兵が報告に来た。
が、俺達には虫の言葉が分からないので、ルシファルナに翻訳してもらい、ようやく判明した。
「敵襲、だと? おい……何処の国がそんな事をッ!」
俺は焦った。流石に早すぎる。こんな早く襲われるなんて。
(何だ、この中央海は海王の影響でどの国も手出しできないはずなんじゃなかったのか!)
「あの旗は……戦帝国フラウのモノ、ですね」
遠視魔法で確認したらしいルシファルナが、俺に報告してきた。
戦帝国……フラウ、か。
そう言えば、サタールと始めて出会ったあの日に、あの国を滅ぼそうとか言っていたっけ。
もしかしたら、チャンスなのか?
「おい、サタール」
「あぁ、大将。こりゃ、絶好のチャンスじゃねェかァ!」
サタールは喜々とした様子で刀を取り出した。
その刀は、俺が『鍛冶』スキルで試しに作って、“付与”で色々調整した、魔力を帯びた刀―――“魔刀”と名付けた物だ。
さて、話を戻そう。
戦帝国フラウの事だが―――
「ルミナス様、何か……言っているみたいです」
おっと、何だろうか。
何か言っている? ……と言われても俺には聞こえないので、恐らく遠聴魔法とかなのだろう。
分からないが。
「それで、何て言っているんだ?」
「えっと、『そこは我々の領地だ。薄汚い魔族共よ。そこに居るのは魔力で分かるのだ。今すぐその土地を我らに渡すといい。死にたくなければな』、だそうです」
(ん……えっと、バカなのか?)
「ヘェ、帝王様自らご登場ってワケですか」
「帝王?」
「アァ、王様だ王様。魔族を大量虐殺するワケの分からない王。俺ァな、鬼がそんな事をするのが許せなくてねェ。それでフラウに忍んでいたんだがァ、まさか向こうからノコノコやって来るなんて、こんなに嬉しいこたァねェってもんだぜ」
あぁ、なるほど。それで……。
それに、また魔族虐殺……か。
それが確実なら、もうアイツの命は無い。遠慮する必要も無い。
「ルシファルナ、敵の数と、おおよその到着時間を教えてくれ」
「はい……。見たところ、敵の数は大型船10隻。かなりの数ですね……人換算で、約5000から6000といった所でしょうか」
「ヘェ、そこまで用意してるなんてなァ。結構ビビりなんじゃねぇか」
「ですが、流石の繁栄国ですね。偵察に来ただけの数とは思えない」
確かにな。偵察に来ただけだったら、わざわざ帝王を連れて来ないだろうし、それに驚くべきはその数だ。5・6000って結構ヤバい数だろ。もう戦争じゃん。
「種族は鬼族ですので、基本的に戦士職が多いでしょう。魔法で対抗すれば、こちらの戦力でも何とかなるかと」
「あの、皆様。一つ宜しいですか?」
今まで黙っていたルインが、一つ質問をした。
「あの、やっぱり不思議なのですが、ムル様は、何をしていらっしゃるのでしょうか? 噂通りなら、ここに辿り着く前に全て撃ち倒せると思うのですが……」
ああ、確かに。海王の噂があったな。
海王の呪いとやらで海で狩りが出来ないから、誰も海には近づかないっていう、アレだ。
「確かに、不思議だなァ」
「疲れて眠ってるんじゃねぇのかよ?」
あー、それはありそうだ。だが一ヶ月だぞ?流石に回復しててほしいが……。
それかもしかしたら、だが。俺達を試しているのかもしれない。
この土地を守れるか、っていう。
「まあ、やるだけやってみるしかないだろう。それでルシファルナ、到着時間は?」
「はい。今からおよそ10分……くらいだと思います」
10分か。それだけあれば余裕だな。
「よし皆、俺達は城内待機だ。まずはこの城の防衛設備がちゃんと対人で起動するか確かめてみたい」
そうして、全ての防衛設備を乗り越えてきた奴だけを俺達が対処すればいい。
簡単な話だ。
一体、どれだけの数の敵戦力をふるいにかけられるか、楽しみだ。
「もしかすると、ここまで辿り着けるやつァ一人も居ねェんじゃねェかァ?」
確かに……。
“招王雷”ゾーンを抜けて、剣発射ゾーン・大砲ゾーンを抜ける。城壁の“壁雷”や、水堀の骨兵達にも気をつけないといけない。
そして城内に入れば甲冑虫兵が待ち構えている。どれもレベル50相当の化け物だ。
それも抜ければ、ようやく俺達とのご対面。
魔王の俺に、魔帝八皇のサタール・ルシファルナ・マノン・ルインが居る。一応、レオンも居るが。
それにこの遥か下、海底にはそれはそれは恐ろしい海王様がいらっしゃる。
果たして、勝てるのだろうか。戦帝国如きに。
「ククク……クアハハハハハ! さあ、かかってこい戦帝国。我らの軍の開幕戦に付き合ってもらうぞ!」




