case.24 愛の花は絢爛と咲き誇る
今日は少し早めに。
「んっ……」
その目はゆっくりと開く。
少し周りを見て、それからゆっくりと起き上がった。
目が覚めた私の視界に飛び込んできたのは、顔を真っ赤にしてこちらを見ている自分の主、魔王ルミナスとその隣でニヤニヤしたり豪快に「カカカッ」と笑うサタール・ベルゼリオ・マノンの姿。
それに、その少し後ろの方で倒れてるルイン。
……と、その後ろで親指の爪を噛んでこちらを睨んでいる、もう一人のルイン。
―――私は、混乱した。
それも当然である。何故なら、自分はルインと一緒に王国の調査に行き、そして途中で気を失った。
目が覚めたら、こうなってた。
こんなの、誰だって混乱する。
「えっ……と、どういう状況なの……? これ」
私は、皆に聞いた。
私の質問に答えたのは、「イヒヒヒッ」と気持ち悪く笑うサタールだった。
「あぁ、アスモフィ。寝起きでわりいが、聞いてくんな!」
「バッ、おい、やめろ、恥ずかしいだろ!」
サタールの言葉を封じるように、魔王様が手を出す。
が、サタールはそんな事気にもせず言葉を続ける。
「アハハッ……大将の奴、お前さんにキスしたんだぜェ?!」
え。
「まるで眠ったままの姫さんを起こす、物語の王子様みたいになァ!」
え。え。
「アハハッハハッ! まさか本当にやるなんてな! 冗談で言ったつもりだったんだが!」
「は、ハァ!? 冗談で言ったのか!?」
「フッ……」
「おいベルゼリオ! 今笑ったな! テメェ笑いやがったな!」
「ああいやすまない。冗談……まあ俺は嘘は言っていないが、まさか本当に接吻で起きるとはなッ!」
「おぉぉぉい!」
え。え。え。
嘘でしょ?これ、本当の事なのよね。
(え、えぇ……っ!? 何で私起きてなかったのよ! もう! 私のバカ!)
「えっと、えっ……と。何から言えばいいのか……」
ルミナス様は、気まずそうに話しかけてきた。
それに私は答える。
平然を装って。
「だ、大丈夫よ。おはよう、皆」
「おお、アスモフィ。意外に冷静なのな!」
(そんな訳ないでしょう?! あーもう!)
「一つ、いいかしら?」
「な、何だ?」
「後ろに居るルインちゃんはどうするつもりなの?」
「あ、あぁ、そのことか」
私が聞くと、ルミナス様は後ろを向いて歩き出す。
倒れてるルインちゃん……の方ではなく、建物の陰に隠れていた方のルインちゃんの方へ行った。
どうやら、気づいていたみたいね。
さて……この一瞬で冷静にならないと……。
そう思い、私は目を閉じ、深呼吸を始めた―――
■
さて……ルイン。
何故そこまで殺気を放っていたのか、教えて貰おうか。
「ルイン、そこに居るのだろう?」
俺は、力を感じ取った場所へ向かった。
後方の建物、その陰だ。
「……はい」
そこから、予想通りルインは現れた。
のだが、その表情がとても険しい物だった。非常にムスーっとしている。
「ど、どうしたというのだ」
「……キス」
え?
「……キスですよ」
「あ、ああ。それがどうした?」
「主様がっ! あの女とキスしたんですよ!」
―――大噴火。
ドッカーンと勢いよくブチギレられた。
一体……俺が何をしたと言うのだ……。
「―――にも―――ください」
「え?」
とても小さな声で呟かれた。
ので、上手く聞き取れなかった。
すると、今度は聞こえるように大声でこう叫んだ。
「私にもしてください!」
(えっ……。えぇぇぇぇぇぇっ! 待て待て待て待て! どうしてそうなる! 話が飛びすぎだろう!)
「それは……嫉妬かしら?」
すると、今度はアスモフィが参戦してきた。
「むぅぅぅ……! 貴女ばっかりズルいですよ!? いっつもいっつも!」
「フフン、それが現実なのだから、受け止めなさい!」
「―――キス」
「……。…………。………………。〜ッッッッッ!」
け、喧嘩を始めてしまった。
これは俺が原因、なんだよな……?
うぅ、一体どうすれば……。
「大将」
そう苦悩していると、うりうりとサタールが肘で突っついてきた。
「なんだよ……」
「ルインの嬢ちゃんにもしてやりゃいいんだよ」
(うぅ……やっぱりそれしかないのか?)
「もうキスなんて、慣れっこだろ? 一つや二つするくれぇ、変わんねェって!」
(誰が慣れっこだと? クソ……サタールの奴に良いように遊ばれてる気がしてならねぇ!)
が、そうこうしてる内にも2人の喧嘩はヒートアップしていく。
「だーかーらー! 別に嫉妬じゃないんだよ!」
「なんなの! 嫉妬でしょ!? 認めたら!」
いつの間にか、タメ口になっている。
喧嘩するほど仲がいいと言うが、まさしくそれなんじゃないか? この状況。
だが、こんな事をいつまで続けていても埒が開かない。
こうなったら……仕方ない。
(この騒ぎに乗じて、やるしかない!)
正直、恥ずかしくて燃え死にそうだが。
俺は、ルインに近づき、そしてその顎を上に上げた。
いわゆる、顎クイという奴だ。
「ひゃっ、えっ、えっ、あるじひゃまぁ?」
「え、ちょ! ルミナスさま!」
(ええい煩い。こちとら覚悟を決めたんじゃ!)
「ルイン、今は……これで我慢してくれ」
俺は自分の唇を、そのままルインの唇に―――
―――ではなく、その横の頬につけた。
「ひゃぁぁぁぁぁ!!!」
ボンッ! という効果音と共にへなへなとその場に座り込んでしまうルイン。
クッソ……恥ずかしくて死にそうだ。
「むぅ! ルミナス様!? もう一度私にもしてください!」
「ちょ、おい待て! 何故そこまで俺とのキスに拘る! そういうのは、好きな男とするものだろう!?」
「え……?」
「あ」
「あっ……」
「あちゃー」
(え。俺何かマズイこと言ったか?)
アスモフィが困惑し、サタール・ベルゼリオ・マノンの順番に目に手を当てながら、ため息をついていた。
(え、え……? なんか俺、マズイこと言ったか……? 何も分からないけど……?)
「そうね……そういう人だったわね、貴方」
なんか、アスモフィにまで呆れられてしまった。
え、えぇ……。一体何なんだ。
「いいわ……おねぇちゃんからいく事にする! 貴方の唇、奪わせなさ―――」
アスモフィがペロリと唇を舐めながら、俺の方へ歩み寄ってきた、その瞬間だった。
「―――いい加減にしなさい。魔王、その体たらくは何? ふざけないでくれるかしら。浄化されなさい! “矢雨”ッ!」
アスモフィに、唇を奪われそうになったその瞬間、空から現れた声と共に降り注ぐ矢の雨が俺達を襲った。
「『守護』ッ!」
矢の雨はアスモフィの守護壁によって防がれた。
しかし、一体誰がこんな事を……。
「この声は……まさか、ね」
「ああ、冷酷様のおなーりー、だなァ……」
(冷酷様……? 一体、誰なんだ?俺のことを“魔王”と呼んだ……ということは、まさか……?)
「私の名前は、レヴィーナ。魔帝八皇、【嫉妬】の妖精よ―――」
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次回から5章。




