case.23 呪縛の接吻
最近はちょっとスランプ気味です。
体調も悪いですけど、まだまだ頑張ります。
「俺達の勝ち……だ」
煙が全て晴れ、中から倒れているレオンとダレスが現れた。
(死んだ……か? いや、多分死んだか)
『いいや? そうでもないんじゃねぇか?』
(サタン……? それって、どういう事だ?)
俺が、サタンの言葉の真意を聞く前にソレは動き出した。
「クッ……痛ェ……なッ!」
(ッ!? 何故、立ち上がれる!? と、いうか何故生きている!?)
どういう訳か、レオンは立ち上がったのだ。
まさか、レオンが……立ち上がれるなんて、予想していなかった。
隣では、サタール達も驚いている様子だった。
「おいおい、一体どういう事なんでい……」
「いや……しっかり俺の攻撃は当たってた筈だが……」
そりゃそうなるわな。俺だって不思議なんだから。
当たれば即死級のダメージが4回。オーバーキルにも程があるくらいのダメージ量はあったはずなのだ。
それなのに、現にこうしてレオンは生きている。
ダレスの方は依然として倒れたままだが。
「クックク……職業固有スキル『言霊』が無かったら死んでたぜ……」
職業固有スキル……『言霊』?
そうか……コイツの職業は“言霊師”だったか……。
いわゆる商人のような職業の言霊師は、自らの“言葉”を武器にして戦う職業だ、と聞いたことがある。
スキルの効果までは知らなかったが。
「咄嗟に守護の言霊を吐かなかったら、死んでたな。と、いうか……既に……死にそうなんだがなァ……」
今にも倒れそうなレオン。
コイツは、もしかすると意外に使えるかもな。
「おい……魔王。なんだ……その……薄汚い笑みは……!」
レオンにそんな事を言われた。心外だ。俺は別に、この男を利用しようと考えてただけで……
『おうおう、魔王らしくなってきたじゃねぇの!』
何だよ、サタンまで。
いいし、別に。レオンにトドメを刺して、それでこの話は終わりだ。
俺は、一歩ずつレオンに歩み寄る。
「お、おい……待て……」
「待たねぇよ」
この男……弱いものの、頭はだけはキレるみたいだからな。それに貴重な人族で、しかも転生者だ。
色々と利用価値がある。
だったら、『支配』しない手は無い。
俺は、レオンの目の前で立ち止まる。
そして、その頭に手をかざした。
「お、おい。ヤメロ……ヤメてくれ!」
「やめない。後でたっぷり礼をしてやるよ……」
「な、何の!」
「そりゃ……一連の騒動に関してのと、ルイン達を殺そうとしたのの、二つだ」
そう、忘れちゃならないのは、コイツが根っからのゴミだという事。
もう、今すぐにでも殺したいくらいだ。
と、いうかさっきので殺したつもりだったんだがな。
「わ、悪かった……ッ! それに関してはあやま―――」
「謝って済む話でもないからな。いいからとっとと―――」
俺は、いつも通り、あの言葉を言った。
俺が、俺である証明の、あの言葉を。
「―――俺の傀儡となれ。悪しき転生者よ」
その瞬間、レオンの身体はガクンと崩れ落ち、その場に倒れる。
“完全支配”……スキル『支配』を最大限使った状態の名前だ。
これで、この男はもう二度と俺に逆らう事が出来なくなった。
「大将、全部終わったかい?」
近くて静観していたサタール達が、こちらへやって来た。
「ああ、一応……いや、待て。まだ一つやり残した事がある」
「やり残した事?」
俺はふと思い出し、例の隠し場所へと瞬時に戻り、それを回収し再びサタール達の所へ戻ってくる。
サタールはそれを見て納得した様子で、頷いた。
「あぁ、そういうことかい。そりゃ、確かにどうにかしねェとなァ」
それは、倒れて眠ったままのルインとアスモフィだった。
この二人には、この国……護王国シュデンの情報について調べてもらっていたのだが、途中、アーサー王達に見つかったらしく、そのまま殺されてしまった……らしい。
だが、二人の魔力は生きているし、本当に死んだのかどうかが疑問だった。
少なくともルインは生きている。その根拠は、ルイン本人からの連絡があったことだ。
俺がレオン達の作戦で、魔法陣に貼り付けられている間、同じく魔法陣に貼り付けられている筈のルインから、通信魔法による連絡があった。
自分はスキル『変幻』によって、分身と入れ替わっている、という事や少しの間潜伏している、という事などを聞いた。
「問題は……アスモフィだ。どうだ、皆。アスモフィが生きているかどうか、分かるか?」
ルインの安全が分かっている以上、論点は完全に一点へと絞られる。
アスモフィが生きているかどうか。ただそれのみに。
ルインからは、その点について時間の問題的に聞くことが出来なかった。
「うーん、どうだろうねェ」
「フッ、魔王もまだまだ、という事か」
「そうだなァ! そりゃだって、アスモフィは僧侶なんだぜ?!」
って事は……
「生きてる、んだな?」
「さァ、そりゃどうだかね。王子様のキッスでもありゃ、起きるかもねェ? カカカッ!」
(ッ!? どうしてそういう話になるんだ! 俺は魔王であって、断じて王子様なんかじゃないぞ!)
「アホ、俺をからかうのも大概にしておけよ! ほら、いいから本当の事を教えろよ!」
「嫌だねぇ〜。俺っちからは何も言わねぇでおくぜ〜」
(クッ、この野郎。サタール、テメェだけは許さねぇからなッ! こうなったら『支配』で―――)
「まあ待て、そう怒るな魔王」
ドスドスと効果音が付きそうな感じで歩き、サタールにスキルの重ねがけをしようとした矢先、ベルゼリオに呼び止められた。
「何だ!」
「サタールの言っていることは、あながち間違いでもないかもしれない」
(は……??? 一体、どういう事なんだ)
「つまり……?」
「本当に接吻が必要かもしれないのだよ」
わぁい。いよいよ分からなくなって来たぞ。ベルゼリオがこの状況下で冗談を言うような奴には、とてもじゃないが見えない。なら、まさかまさか、本当に……?
「ど、どういう事か、説明してもらおうか」
―――ゴクリ。
―――ゴクリ。
俺と誰かが、唾を飲み込む音が響いた。
「久々に会ったから、すこし曖昧だが……。アスモフィの魔力とは違う魔力を感じる。これは、大賢者マーリンのモノと、そこにいる転生者レオンのモノだ」
「ほう」
「そして結論から言おう。アスモフィは死んでなどいない」
「なるほど?」
それが一体、どうキスする流れに繋がるのか、聞かせてもらおうじゃないか。
「では、この昏睡状態は一体何なのか。そういう話になってくる」
「そうだな」
「これも結論から言おう。アスモフィの所有スキル、『呪縛』が暴走したに違いない」
(スキル『呪縛』……?)
『そりゃ、あれだよな』
『うむ、“死”が関わると所有者の意思に関わらず暴走したりしなかったりする、気まぐれなスキルだ。ベルフェゴールの奴が、同じスキルを持っていたからな。よく分かるぞ』
俺の中に居るベルゼブブが解説してくれた。
気まぐれな、スキル……。
「なるほど」
「その効果だが、」
「それは今分かった。説明は省いてくれて構わない」
「い、今? うむ、了解した」
「それで、キスが必要かもって言うのは?」
「ああ。スキル『呪縛』は、所有者の最も強い願いを叶えようと、発動するのだ。『その願いが叶うまで、この呪いは解けない』、という呪いを所有者にかける為にな」
なんて迷惑なスキルなんだ。
死の間際に。
「だが、それによって所有者は“死の運命”から逃れる事が出来る。いわば守護神のようなスキルでもあるのだよ」
なるほどな。そのスキルをアスモフィが持っていたから、死なずに助かった、という訳か。
「そこで、次に浮かび上がるのは、アスモフィの“願い”だ。それを叶えない限り、アスモフィは眠ったままになってしまうからな」
あぁ、そういうことか。
そこでキスの話が出てく―――
「って何でだよ! 何故俺がキスをする流れになる!」
「あぁ……もうそういう次元なのか。普通、ここまでくればアスモフィの願い……本当の気持ちなど気づいてもいいくらいなのだがな」
「ケケッ、大将は恋愛オンチだからよ」
「オレでも分かるぜ? バカな魔王だなぁ」
(ぐっ、ぬぬぬぬ。何だ、何故俺が罵倒される? サタールならともかく、マノンにまで……! それに、恋愛だって……?)
「まあ、つまりはそういう事だ。魔王なら、漢を見せてみろ」
「ケケッ、覚悟決めな大将!」
(クソ、やるしかないのか……?)
ハァ……まあ、仕方ない。不本意だが、別に初めてじゃないしな。もういい、俺が折れる。
「それが出来たら、俺も魔王軍へと加入することを誓おう」
ゲッ、マジかよ。
そんな事言われちゃ、やるしかないじゃねえか……。
「じゃあ……行くぞ……」
俺は、眠っているアスモフィの綺麗な顔に……近づき。
そして、そのプルンとした、綺麗な唇に……
―――そっと自分の唇を重ねるのだった。
次回case.24 愛の花は絢爛と咲き誇る
章完結します。口づけの結末とは―――




