case.21 大罪解放
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「『掌握』」
「グ、ルァ……ッ! 『甘毒脳殺』ッ!」
レオンとダレスは戦闘準備に入った。
レオンに関しては全く警戒しなくていいだろう。それよりも警戒しなくちゃいけないのは、ダレスの『甘毒脳殺』だ。
一体どんな効果の匂いを撒き散らしているのか……。
そう考えなければならない。
(あれ……ってか、“匂い”……?)
「待てよ……これもしかして……」
あっ。俺ってバカなのかね。
全然気が付かなかったぞ。
俺は、ふと思い、懐に入っていた洗濯バサミを3つ取り出した。
それを一つずつ、マノンとベルゼリオに渡す。
「おい、お前らそれを早く鼻につけろ!」
「えっ? あ、ああ分かった!」
「お、おう!」
俺も急いで鼻に付け、匂いを嗅がない……いや、嗅げないようにした。
(これで、何も怖がる必要はないな!)
「いや、まあ、意図は分かるが……何故こんな物を持っているのだ……?」
知らねぇやい。
気づいた時にゃポケットに入ってたんでい。
「チッ……そんな小道具で我らの対策を……! なら、実力でどうにかするまでだ!」
叫びながら、レオンは走ってくる。
正直、遅い。
恐らく、大半はダレスの力だったのだろう。
戦ったことのない、素人のような動きだ。
これなら、一撃で―――
仕留められる。そう思った矢先だった。
「ッ!?」
消えた。
何処だ……一体何処にッ!
「後ろだッ!」
ベルゼリオが叫ぶ。
後ろ……?
俺は疑問に思いながらも、刀を後ろへ振った。
すると、
「クッ……やはり数の不利がデカイか……?」
俺の牽制に驚いて後退するレオンの姿があった。
「姿が見えてるなら、こっちのモンだぜ……ッ!」
俺たちは、合図無しで駆け出す。
ベルゼリオはダレスの方へ、マノンはそのまま宙へ。
そして俺がレオンの方へ行った。
「……渦巻け……ッ! “螺旋”ッ!」
まずは俺が。
レオンを螺旋上に斬るイメージの剣技。
もちろん、力を弱く……なんてことは一切考えず、思いっきり斬りつける。
「グァァァァァァァァッ!」
俺のスピードにレオン単体がついてこれる訳もなく、胴体を抉るように刀が血を纏っていく。
そこに、さらに追撃が。
「“隕石”ッ!」
空から振る一つの巨石。
これは、マノンの魔法だ。
「ウギャァァァァァァァァッ!」
レオンに相当なダメージが入っているようだ。まあ、あんな隕石を喰らったらそりゃそうだわな。
それに、ベルゼリオの方を見ると、そちらも激しくやっているようだった。
「轟け……“龍砲”ッ!」
剣先から放たれる、一筋の魔力光線。
狙いは……ダレスの右腕だ。
攻撃をもろに喰らったダレスの右腕には、大きく穴が空いていた。
「グルァァァァァァァァッ!」
痛みを耐えきれず、叫び声を上げるダレス。
まだ、こちらは誰一人として本気を出していないのに。呆気ないものだな。
「クソ……クソ……! 何故勝てないッ! 俺は転生者だぞっ! もっとチートできるじゃなかったのかッ!」
ちーと? 一体何を言ってるのか……。
分かんねぇが、そろそろ終わらせるとするかね。
「クソ……クソ! こうなったら、魔王の死体を俺に取り込んで、それで強くなってやる! おいダレス! 死体を出せ!」
そうレオンが叫ぶと、ダレスはどこからともなく、人の形をした何かを取り出し、それを勢いよく離れた所に居たレオンの前に投げた。
それは、見たことのある服装。
感じたことのある魔力。
「たい……しょう……?」
魔王ルミナスの死体だった。
いや、この感じ……死体、なのか?
いやでもまさかそんな……。
そうだったら嬉しいっつぅ、俺の願望が混ざりすぎたか?
「へっ……これで俺も魔族になれば……!」
そう言って、レオンが大将の死体を手にかけた時だった。
「―――一体、誰が死体だって?」
突然、声が響いた。
この声は……やっぱり!
「そ、そんなッ! 嘘だ……嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だッ!」
「嘘じゃないさ……こうして今俺は、生きているんだから―――」
死体……いや。
大将は、立ち上がる。
生きて……いた!
「待たせたな。ここからは、俺の独壇場だ」
◆ ◇ ◆
あー、決まったァァァァァァッ!
絶対最高のタイミングで出てこれた!
な!
『いや、俺たちに聞かれても』
『う、うむ……』
なんだよ、サタンもベルゼブブも。
絶対カッコよかったもん。
ちなみに、ずっと起きていた。マーリンによって魔法陣に接続されてから、ずっと。
ルインとアスモフィは、依然として起きないままだが。
まあ、サタン達に聞いたところ、アスモデウスに会えれば、死人も蘇生できるようになると言っていたから、俺はそれだけを考えていた。
もし、本当に死んでいれば、だが。
そして、溜まってきた怒りは全部転生者達にぶつける。その為に最高の瞬間を狙って出てきた。
「大将! やっぱ生きてたのか!」
「フッ、魔王もしぶといものだな」
「おぉ! 魔王! 久しぶりだな!」
サタールにベルゼリオに……マノン!!??!
(確かアイツには城の防衛とかを任せたはずなんだけど……?)
「何故……殺せていなかった……!?」
っと……そんなことを考えてる場合じゃないか。
まずはレオン達を殺す!
『爽やかに殺害予告するなよ!』
『う、うむ……』
なんだよ……サタンもベルゼブブも!
ちょっと、カッコよく登場できたから気分が上がってたんだよ!
俺は、俺の中にいるサタン達にツッコミながら、サタール達に言った。
「ずっと、生きているさ。それに、俺はルインが居る限り死なねぇ。安心しな」
「へッ、ちょっとくれぇ心配させろや……」
サタールは、後ろを向いてしまう。
(なんだ? 泣いているのか?)
「クソッ! 全員殺してやる! コロシテヤルッ!」
フッ、それはどっちの台詞か、その身体に教えてやるよ。
「おい、3人共。本気を見せてみろ―――」
俺はサタール達に言った。
「任せな……ァ?」
「余裕だ。言われるまでも無い」
「オレもいけるぜッ!」
全員、気合が入ってていいことだな。
じゃあ俺も、待機中にサタン達と考えた新しいモードを使うとしますかね。
「―――『鬼神化』ッ!」
「―――『龍神化』ッ!」
「―――『獣神化』ッ!」
3人とも、各々自身の強化モードに入る。
見たことない姿になってて、すげぇ強そうなんだが……。
俺もやるとするか……。
サタン、ベルゼブブ。いけるな?
『任せろ』
『うむ』
よし、行くぞ……!
そうして俺は、新しく覚えた力を解き放つ。
「『大罪解放―――【憤怒】』ッ!」
【次回】―――憤怒の力、思い知るといい。
case.22 焉魔解放
お楽しみに。




