case.13 【暴食】の大罪ベルゼリオ(3)
―――暗い。
―――寒い。
(ここは何処だ……? ―――あれ……いや、待てよ。この感じ。前にも確か……)
『サタンか……久しいな』
(この……声は……?)
『おい、魔王。アイツは俺に用があるみたいだ。ちょっと外に出してくれ』
俺の中で、サタンがそう言う。
俺はその言葉通りサタンを喚ぼうとしたが、俺が喚ぶより早く、サタンは俺の中から勝手に出てきた。
『フン。やはりか』
『ああ。俺だ。久しぶりだな、“ベルゼブブ”』
(……ッ! ベルゼブブって確か……! それじゃあやっぱりここは……)
『《大罪の間》。
我はそう呼んでいる。しかし珍しい物だな。人間……いや、貴様……神か? しかし、そんな者が我ら七つの大罪のメンバーを一人、それもあの我儘リーダーのサタンを連れてくるなんてな』
……情報量が多い。まず何処から聞けばいいのか。
えっと……まずは……
「《大罪の間》……って何だ?」
『フン……最近の若いモンは、名乗りすらしないのか』
「あ、ああ。すまない。俺の名前はルミナス……一応、魔王をやってる」
申し訳程度に自己紹介をしておく。
『魔王……そういうことか。いいだろう。
―――我の名はベルゼブブ。【暴食】を司る七つの大罪の一人だ』
やっぱりそうだよな。七つの大罪……この前サタンと出会ったのも、こういう場所だった。だから、何となく予想は出来た。
「それで、大罪の間って……?」
『我が勝手にそう呼んでいるだけだが……フム。姿が見えないのは不便か。しばし待て』
そうベルゼブブが言うと、目の前に小さな光が生まれる。
少し、目がくらむがすぐに視界は回復する。
改めて前を見ると、そこには荘厳な雰囲気を漂わせたイカツい格好のおじいちゃんが居た。
「貴方が、ベルゼブブ?」
『いかにも。話を戻すぞ。我ら七つの大罪は、死後このような場所に封印されておるはずなのだ。サタンの時もそうだっただろう?』
「あ、ああ」
『うむ。だから我はこの場所を、七つの大罪が封印された地、大罪の間と呼ぶことにしたのだ』
(そういうことか。まあ、特に重要でもない情報だよな?)
早く次に行こう。
「次なんだが、何で俺が神って分かったんだ? まあ、実際当ってるし、半神って種族なんだが」
『フン。そんな事か。貴様気づいてないのか?』
「な、何に?」
『そうか。貴様、オーラが隠しきれてないぞ』
(お、オーラ?? あの、サタールたちにも見えたアレか?)
『むぅ……世話の焼ける……。致し方無い。我も貴様の中に入れさせろ』
「えっ、ええ? でも、今はサタンが……」
『問答無用だ。それにサタンなど、後からいくらでも黙らせられるわい』
『アアン!? 何だと!? このクソジジイ!』
おいおい、こんなところで喧嘩している場合じゃないんだが。
「分かった。じゃあ、早いとこ済ませてくれ。それにサタンも早く戻ってくれ」
『了解した』
『あいよ』
そう言って2人は、俺の中へと消えていく。
そんなにすんなりと……
『ふむ、中々悪くないな』
『だろ? カカッ、クソジジイ。テメェも魔王の役に立てよォ?』
『もとより。と、いうかこの抑えられてない神のオーラを抑える為に、我が来たのだからな?』
何だ、存外仲良さそうじゃないか。
それに、ベルゼブブの方が優秀そうだし。
これで、前回同様かなり強くなったはずだ。
―――そう思い、ステータス画面を開こうとした時だった。
『消えろ……』『殺す』『立ち去れ……』『殺ス』『この泥棒め……』『コロス……』『コロスッ!』
頭の中に響く罵詈雑言。これは……ッ!
『聴こえたか。それは、サタンの時にもあったのではないか?』
サタンの時……。あっ……もしかして……
「俺は、もしかして……【暴食】の罪を背負っていかなきゃならないって事か……?」
『然り。その代わり、我を引き入れたんだ。それに罪を背負ってくれるのだ。それ相応の得はあってもいいだろう。我がレベルやスキルまわりを少し弄ってやろう』
そう言って、少しした後、
『完璧である。確認してみるといい』
と、自慢げに告げてきたので、俺は改めてステータスを確認した。
すると、
◆
【ルミナス】
性別 男
種族 半神
職業 魔王
レベル 19→30
スキル 『支配』
『転生』/呪い
『魔道』
『剣技』
『侵蝕』
『吸収』
『弓術』
『液状化』
『変身』
『【憤怒】』
『【暴食】』←New!
技能 ◆魔刃・魔剣・魔鎌
◆縮地
◆魔力変換
◆魔力吸収
◆付与
持ち物 無し
称号 『魔を突き進む者』
『大罪を背負いし者』←New!
攻撃力 1900→2900
防御力 2100→3400
魔力 3000→5200
新スキルを習得可能です。以下より6つ選んでください。
・『再生』
・『毒操作』
・『蠱惑』
・『大魔道』
・『心眼』
・『体術』
・『治療術』
・『影操作』
・『鍛冶』
・『裁縫』
・『調合』
◆
『どうだ。素晴らしいだろう?』
新スキルが6つも習得可能とは……!
これは、本当に戦略の幅が広がりそうだぞ……。
スキル選択は後に回すとしても、レベルの上がり幅は本当に大きいな。
これも、大罪の恩恵―――
――『立ち去れッ!』 ―――『消えろッ!』 ―――『顔を見せるなッ!』 ―――『泥棒めッ!』 ―――『人まで食べるとはッ!』
「アガッ……! ッグ……アアアアアアアアァァァァァァッ!!!」
突如として俺の頭を襲った激痛。
ようやく、お出ましか……!
『む、だ、大丈夫か!?』
「ああッ……問題、無い……ッ!! これでアイツを倒せるなら……ッ!」
(さぁ、再戦の時も近いぞベルゼリオ。貴様の祖先の力……とくと味わうがいいさ)
俺は自らの舌を噛み切ることで、意識を飛ばないようにし、痛みを忘れることにした。
(痛え……けど、これくらいの痛みなら……ッ!)
そうやって俺が痛みに堪えている間に、俺は転移していた。
サタールやベルゼリオの待つ世界へと。
■
▶焉魔法『弐/焉雷』―――解放しました。
■
◆ ◇ ◆
「チッ、大将の野郎……何で負けて―――いや……待てよ? まさか……」
「おいサタール。何をブツブツ言っている。貴様の主はもう死んだ。後は我らの決着を着けるのみだ」
声が、聞こえる。
「へっ……そいつぁどうかな?」
「何を強がっている。貴様も分かるだろう? アイツはもう死んだのだ」
この声は……
『おい魔王。起きろよ、俺の子孫が待ってるぜ?』
『フン、情けない。我が子孫に殺されていたとはな』
(うるさいな……。今から、勝ちに行くんだろ……?)
『ああ、逆転の時だ―――』
『大罪の力を見せてやれ―――』
(任せろ。後は俺の独壇場だ!)
完全に意識が覚醒した俺は、勢い良く飛び上がり、腹部に刺さる剣を引き抜いた。
「ヘッ、やっぱりなァ……」
「何を言っている?」
どうやら、背を向けているベルゼリオには、サタールの言葉や笑みが分からないみたいだ。
(なら、一発。お礼をしてやるとするか!)
俺は手に持つ剣を、ベルゼリオ目がけて勢い良くぶん投げた。
「ぐふぉぁッ!」
刺さりこそしないものの、頭の鎧にしっかり命中した。
「なっ! き、貴様……何故生きているッ!」
すっかり動揺した様子のベルゼリオに俺は言い放つ。
「そんな事どうでもいいだろう? それよりも始めようぜ。第2ラウンドの開幕だ―――」




