case.10 竜と騎士の国
あいえー!あいあいえー!
「帰ってきたな」
俺たちは一瞬にして魔界へと移動してきた。
が、毎度の事ながら転移先は魔王城(?)の外の庭なので、大して景観の変化も無く、いつも通りの光景と化していた。
「さて、リガーテたちは……」
早速リガーテたちを探すが、どうやら目の見える範囲には居ないようだ。
と、いうことは……
「探さなきゃか」
ちょっと面倒くさい。結構、想像より魔界って広いんだよな。
(……俺も通信魔法を覚えようかな)
どうしてか、スキル『魔道』では通信魔法は使えないのだ。
「おっけーよ。―――今すぐ行くって。通信魔法で聞いてみたよ〜!」
突然、アスモフィがそう俺に言った。
(通信魔法で聞いた……って、俺の考えてる事が分かったって言うのかよ……?)
「え、あ、ああ。じゃあ探しに行く必要は無いな」
とりあえず細かいことは気にせずに、俺はそう答えた。
(それにしてもすげぇ仕事が早いな。まるで、超優秀な秘書みたいだ)
でも……やっぱり便利そうだな。その魔法。俺も今度覚えてみよう。
方法は分からないけど。
と、そんなことを考えていると
―――ダダダダダダダダダッ!バタン!
と騒がしい足音と勢い良く開かれた扉の音がした。
もちろん、その音の主はリガーテたちだ。
「お、遅れました!」
「あぁ、いや、特に待ってもいなかったから」
「あ、そうなんですか。ん? では、何の用で?」
「少し話が聞きたかったんだよ。竜と騎士の国……《護王国シュデン》について」
俺は早速、本題を切り出すことにした。
話を聞いたら、すぐサタールのところへ向かわないといけないからな。
今のアイツ……ちょっと危なっかしい感じがするし。もしかしたら今この時にも、ベルゼリオに攻撃を仕掛けているかもしれない。
まあ、要するに心配なんだよな。
「シュデン……ですか。あまり詳しい内容は、話せないのですが、それでも良いですか?」
「ああ、それでもいい。何か少しでも情報が欲しい。特に、国の上層部についてだ」
ベルゼリオを雇うことができるとすれば、恐らく権力を持つ者だろう。
「分かりました」
そうして俺たちはいつもの椅子に座ることにした。
ルインとアスモフィはしっかりと両サイドをキープしている。これもいつも通りだ。
「あ、あはは」
「……何も言うな」
俺の服を引っ張りながら、目のつばぜり合いをしている二人を横目に、俺は話を進めることにした。
「それで、何でもいいのだが、シュデンについて教えてくれ」
「……分かりました」
そう言って語り始めたのは息子のリガーテの方だ。
「では、しばらく閉じ込められてた父に代わって私が。まず、私たちはとある理由からシュデンを離れ、長らく聖皇国ラーゼに居たのはご存じですよね?」
「ああ、確か母親を探すとかなんとかで」
「そうです。なので、あまり最近のシュデンの詳しい事情は分からないので、そこはご容赦下さい」
「了解だ」
「では。まず護王国シュデンは、竜人族が治める地で、曲がったことが嫌いな、正義の国なのです。ラーゼの国民の大半が僧侶であったのに対して、シュデンの国民の大半は、騎士の職についています」
それで、竜と騎士の国なのか。
と、いうかその地その国の特徴がはっきりし過ぎだよな。毎度思うが。
「シュデンは、国王アーサーとその参謀マーリンの実質独裁国家で、彼ら以外に権力を有する者は居ません」
「独裁国家?」
「はい。生まれてきた国民は、男女問わず幼少期から騎士になるための特訓をさせられ、隣国との戦争が起きれば、それに駆り出されます。それに、これは私たちが国を出る前の話ですが、税は大幅に跳ね上がり、国民からのデモが起きてました」
増税に、戦争強制……。
……酷いな。……というか戦争ってあったんだな。
「そして、そんな国で私は国家直属の聖騎士として、父は最強の守護竜王として国に命を捧げていました。ですが、ある日恐ろしく強い竜騎士が現れて……」
それが、ベルゼリオだろうな。多分。
「その日から、シュデンは負け知らずの王国になりました……。これが、僕の話せるシュデンの情報になりますね」
「なるほど……。とにかく、気をつけなきゃいけないのは、アーサーとマーリンなんだな?」
「そうですね……。彼らは何かの儀式を行おうとしていましたし」
「儀式?」
「はい。……えっと……確か……しゅ、しゅ……?」
思い出せないのか、リガーテは頭を傾けながら悩んでいる。そんな様子を見兼ねて、父のリガルテが代わりに話し始めた。
「―――主神の儀。主神ゼウス様を降臨させる為に、国民の大半を生贄にする儀式の名前です」
「国民の……大半を生贄に?」
「……既に、何人もの竜人が捕らえられています。そして、この儀式を行う為に、必要な存在。それこそが、魔族なのですよ」
「魔族が、儀式に必要だと?」
どういうことだ。また嫌な予感がするぞ。この流れは、多分……
「はい……。魔族の死体が。天使降臨の為の触媒となるのです」
……と、いうことはまた……。
また、魔族が痛い目を見てるということか。いつもいつも……どうしてこう魔族は。
「詳しいことは分かりませんが、覚えている伝承の内容では、“偉大なる存在”が5つ必要だとか」
「偉大なる存在……?」
「確か、転生者とかなんとかって……」
―――ッ! 転生者……レオンたちか!
それをベルゼリオが回収したということは……
「ベルゼリオは、アーサー王のもとで動いている。恐らくそれで確定だ」
「それで……主様。もう、シュデンに向かわれるのですか?」
そうルインに聞かれる。
……どうしようか。まだ確定こそしてないものの、大方敵は決まったようなものだ。今すぐ行っても、いいのだが。
「ふむ……。サタールのこともあるし、早めに向かうとするか?」
「それがいいかと。サタール様もそうですし、その儀式のこともありますから」
「そうだな。じゃあ早めに向かうとしよう。リガーテたちは来るか?」
俺は、2人に一応確認してみる。
何か、因縁とかあるかもしれないし。
「私たちは……」
「遠慮しておきます」
少し、俯きながらそう言う2人。
「そうか、分かった。なら魔界は任せた。俺たちはすぐ行くことにする」
「はい。お任せください」
そうして、再びルインは“魔界之扉”を開く。
「では行くぞ」
「あっ、お待ちください」
転移しようとした時、リガルテに静止される。
「どうした?」
「“盾”には気をつけてください」
「盾……?」
「あの国の盾は、色々とヤバいですので」
(盾が、ヤバい……?)
俺たちはその言葉の真意を知らぬまま、ルインによって、護王国シュデンへと転移するのであった。
ピグレット!かわいい子豚さん!




