case.7 お寝坊さんと演技下手
次話投稿
「うぅ……ん?」
「おっ、やっと起きたか。このねぼすけめ」
俺は、まだ眠たそうなアスモフィを抱きかかえるように起こした。
ちなみに、今の状況を軽く説明しておこう。
俺の中から、現れた大悪魔サタンは「ヤベッ、活動限界が来やがった! すまねぇ、俺はもう戻るぜ!」と言い残して俺の中へと戻っていった。
その後すぐ、洗脳状態を俺の『支配』で打ち消し、さらにその上から『支配』を重ねがけした《魔帝八皇》たち……その内の男性メンバー、サタールとルシファルナがすぐ起きた。
話を聞くと、どうやら何も覚えておらず、俺が「レオンって奴がお前らに何かしたみたいだぞ」と教えると、「やっぱアイツ……。ちょっとボコボコにしてくるわ」とサタールが、「あの時は何も出来なかったですが、今度はそう上手くは行きませんよ……?」とルシファルナが言って、部屋を出ていった。
ルインにもやはり、洗脳状態になる“何か”が施されていたみたいで、俺が『支配』を二重にかけてやる事で、完璧に解除する事ができた。
「あうぅ……すいませんでした。全く攻撃されたことに気づかなかったです……」
と、しょぼくれてしまったので、俺は頭を撫でながら、「お前は何も悪くないぞ」と慰めてやった。
すると、茹でダコの様に真っ赤になってボーッとしてしまったので、少し放置することにした。
残ったアスモフィを、起こそうとして、近づいたところで目が覚めたようだったので、抱きかかえてあげた……
今はそんな感じだ。
「お寝ぼ……? うぅ……まおうひゃま? えへへ〜おはようのキスだぞ〜」
「っぷ!」
突然、アスモフィは俺に抱きつき、そのまま唇を奪われた。
―――不意を……突かれた。
(ッ……!?!?!??!?!??!??!)
どれだけの時間、唇を重ね合っていただろうか。完全な不意打ちだった為、俺に抵抗する余地などなく、寝ぼけたアスモフィにされるがままだった。
「っぷは……!」
ようやく解放される。
落ち着け俺。落ち着くんだ。今起こった事は全部夢。そう夢なんだ。
だから、忘れ……
「ッ……。えっ? あれ、私今何を……?」
ハッ、と我に返ったアスモフィ。
そして、
「あ、あ、あ……あ・る・じ・さ・まァ???」
何か非常に怒っていらっしゃるルインさん。
2人に挟まれる形の俺は、もうどうすればいいのか分からなかった。
(っていうかこんなの忘れられるほうが難しいだろ……!?)
俺の心の叫びが声にならないまま、しばらく時間が過ぎていった。
■
しばらくして、全員の誤解が解け、何とか和解する事ができた。
多少の……いや、超超超、恥ずかしさが残っているが。
さて、気を取り直していこう。
こんな事をしている場合では無い気もするし。
「え、えー。では、早速で申し訳無いのだが、レオン達を殺しに行こうと思う」
「と、と、ととと突然ね!」
アスモフィ……こっちだって恥ずかしいし……むしろ俺被害者なんだからそんなに動揺するなよ……こっちまで話せなくなっちまうだろ……。
それに、ルインさんの目線が怖いし。
「えー、まあ簡単に言おう。全ての元凶はアイツらだ。だから殺す。いや、もっと優しい言い方をしよう。ゴミを捨てに行こう!」
「ど、ど、ど、どどどどど何処に!?」
……もう突っ込まんぞ。冷静になるんだ俺。
「何処って、そりゃあ……ゴミは、ゴミ箱に……だろ?」
「ですが、ゴミ箱に人の死体は入りませんよ? まさかバラバラに切り刻むので?」
おお、それもいいな。今のルインなら本当にやりかねないしな。
だが、違うのだ。
「残念……。もっと簡単でお手頃な奴があるだろ?」
「簡単で、お手頃……? あっ、もしかして」
どうやら、ルインは分かったみたいだな。
俺と共に歩んできただけある。
「なっ、ななななな何よ! おねえちゃんにも教えて!」
「答えはな、ココだよココ」
俺は地面を指差しながら、言ってやった。
そして、頭に?マークを浮かべたアスモフィに、ルインが説明を始める。
「えっと、主様に代わって代弁いたしますね。ココ、というのはこの屋敷の事ではなく、この都市……つまり無法都市全体がゴミ箱なのですよ」
「ど、どういうこと?」
「まあ、要するにだ。ココは治安が悪く、何かすれば殺されるか犯されるか……まあそういう道に進む訳だ。そこに、転生者と周りに言いふらし、都合の良いように人々を利用し、それにお前みたいな可愛い女性を周りに蔓延らせてた奴らが放り込まれればどうなると思う?」
文字通り、ゴミ箱にゴミを放り込む。そう云う事だ。
「えっ、今私の事可愛いって……」
「あ」
「あ……るじさまァァァァァ!」
ひゃぁぁぁぁ、何故かルインが激怒している!? 嫌だ嫌だ、殺されそうだ!
「どうどう、ルインどうどう。話を進めるぞ。つまりだな、無法都市に転生者を捨てるってことだ」
もう、何回も同じことを言っている気がする。だが、いいのだ。これで理解してもらえるなら。
「と、言う訳だからサタールたちに先を越される前に俺たちも行くぞ」
そう言って、俺たちは部屋を出ることにした。
その時、熱い視線と冷たい視線を同時に背中に感じたのは気のせいだと思うことにした。
■
「オラオラオラァ! どうしたァ!? 洗脳のスキルは使わねぇのかよォ!?」
「“蜘蛛糸・雑結”ッ!」
……恐らく、サタールたちが戦っているであろう部屋の前に辿り着いたのだが、
「うわぁぁぁぁっ」
わざとらしい……わざとらしすぎる声が響いている。こんなの、小学生レベルの演技だぞ。下手か。
「チッ、どうにもその態度がムカつくねェ。そろそろ本気を出したらどうなんだい?」
「……やれやれ、じゃあそこで聞いている魔王たちも入ってきてくださいよ」
どうやら、こちらにもしっかり気づいていたようだ。計り知れないな、この男。
「ルイン、お前は何かあった時の為に影に隠れてろ」
「……分かりました。“影陰”」
俺の指示で、ルインは扉横の壁……そこの影に隠れていく。
「よし、アスモフィ。行くぞ」
「うん!」
そして俺たちは勢い良く扉を開いた。
中には想像通りのメンバーが対峙してただけだったので、特に語ることはない。
「あれ、1人居ませんね。……まあいいでしょう。4対2……明らかにこちらが不利な状況。ですか私たちの特異スキルの本性はまだ見せていません」
「だからどうしたというのだ」
「……いいですか? 私は……いや。―――俺たちは負けねぇんだよ! 特異スキル、『掌握』は人に発動するだけでなく、物にまで使えるッ! しかも自分自身だって例外じゃねぇ! ―――例えばこういう風に、棚を浮かせたり、腕の筋力を限界まで上げたり、な……ッ!」
そう言いながら、レオンは自分のスキルについて語り始めた。
「それに、ここに居るダレス。コイツの特異スキルは、スキル『汚染』の特質進化形態、『甘毒脳殺』といって、自分で作った効果を含んだ匂いを辺りに充満させることが出来るスキルなんだよ」
あー、コイツ、バカなのか? どんどん聞いてもいないことをペラペラと。
「どうだ? 最強だろう? ダレスが敵に異常事態を撒き散らし、俺がそこでトドメを刺す。完璧な作戦だ。そこの女をここへ転移するように仕向けたのもダレスの力だし、そこの男たちを気絶させたのもダレスの力だ。それに、今の俺たちには死んでも蘇る力が付与されているんだ。もうお前たちに勝ち目はないぞ! ハーハッハッハッハッ!」
何……だと!? 全部後ろのデブの力じゃないか!
だが、それを言ってしまうと反感を買いそうなので、止めておいた。
と、いうか、つまりはあのデブだけどうにかすればいいのではないか?
レオンはどうでもいい気がする。俺一人で対処出来てしまうから。
「ハハハ! 俺が強過ぎて何も言えないか! そうかそうか! じゃあ……これで終わりだ! 最終決戦だぁ! ハーッハッハッハッ!」
……残念だ。残念過ぎる。この男、かなりのポンコツだぞ。
「あー、サタール、ルシファルナ。それにアスモフィ。後ろのデブ、お前ら3人に任せるわ……」
「お、おう。任せときな」
代表してサタールが答えてくれる。
そうして俺は、レオンの方を向く。
「……なァ、レオン。1対1だ。タイマンだ。出来るよな?」
「い、1対1だと……? な、ナメるなよ。貴様を洗脳してやるからな!」
コイツには聞きたいことが山ほどあるんだ。だから、殺さず捕える。そして、無法都市に捨てる。
さあ、憂さ晴らし……もといレオン戦の決着をつける時だ。
「傀儡にする価値も無い。お前はとっとと死ね―――」
ブックマークおねげーします!




