case.4 特異の力
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「さて、到着です」
自分のことを“転生者”と呼ぶ男2人に、言われるがままついて行った俺たち。
男……まあ仮に転生者Aとしとこうか。その転生者Aの案内のもと、しばらく無法地帯を歩き続けていたが、ようやく目的地へたどり着いたみたいだ。
「それで……ここは?」
見たところ、普通の屋敷だ。
まあ、この都市での“普通”だから、知らない人からして見れば、“異常”な屋敷でもあるんだが。
簡単に説明すれば、スラム街のようなイメージ。壁から地面から……何から何までに落書きが施されている。
一体こんな所に何があるというのか。
(まさかここにアイツらが……?)
「ご察しの通り、ここが我々が目指していた場所。貴方たちのお仲間さんがいらっしゃる場所です。そもそも何故―――」
「煩い。御託を並べるのは後にしろ。取り敢えずまずは仲間に合わせろ。安全を確認したい」
少し、焦り気味に言いつけた。
言ってすぐ気づいたが、あまり刺激しない方が良かったのかもしれない……。
「はぁ。仕方ないですね。それではこちらへとうぞ」
良かった……変に刺激した訳ではなさそうだ。
ホッと一息、安堵した俺はルインの手を取って一緒に歩く。
「あ、あ、あるじひゃまぁ……」
「?」
何かへにゃへにゃになってるぞ、ルイン。
どうしたというのだ。
「ジーッ」
……? 俺がルインを見ていると、視線を感じた。辺りを見てみると、転生者Aの後ろに居たはずのデブ……まあ、転生者Bとしとくか、が俺たちの後ろに居たのだ。
(何だ……? 何でこちらを見つめている?)
「???」
声にならない疑問の声が出てしまう。
……あー、これは気にしても仕方のないやつか。
「行くぞ。俺から離れるなよ」
「ひゃ、ひゃい!」
……???
駄目だ、不思議が多過ぎる。
取り敢えず、この男Bの警戒だけは怠らないようにしよう。何か怪しげな雰囲気が漂っている。
俺は色々な思考を巡らせながら、男Aについていくのだった。
■
「一つ聞きたいことがある」
俺は思い立って、男Aに質問してみた。
「何ですか? 御託を並べるのは後にした方が良いのでは?」
「ぐっ……ま、まあいいだろう? 一つだけだ。答えてほしいことがある」
核心を突かれてしまった……。しかし、動揺は見せない。コイツらに隙を見せちゃ駄目だからな。
「それで、聞きたいことって?」
「あ、ああ。お前たちは『スカーレット』という言葉に思い当たることはあるか?」
もしコイツらが、俺と同じようにこの世界に来たのなら、イェスと答えるだろう。逆にこの世界が俺の想定とは違う……つまりこの世界が『Scarlet Online』のゲーム内の世界じゃないのだとしたらノーと答えるはずだ。
まあ、コマンドとかがある時点で恐らく答えはイェスで確定だと思うが……
「スカーレット……はて、知らない言葉ですね」
(何……? スカーレットを知らないだと?嘘か……? いや、でも……?)
「それは……本当か? なら、どうやってこの世界に来たんだ。転生者なんだろ?」
「そうですね……。まあ、簡単に言ってしまえば、文字通り『転生』して来たんですよ。一度死んで、ね」
転生者……? ああ、そういうことか。
つまり俺の『転生者』とコイツの『転生者』は文字は同じでも意味が違うということか。
俺のは、『転生』という呪いのようなスキルを持っていて、何度でも蘇ることができることから、俺は自分のことを『転生者』と呼んでいるが、コイツのは異世界モノのラノベのように、現実世界で死んで、何か神様のパワーで転生させられる方の、よくある『転生者』ってことか。
……待てよ。なら、このステータス画面は何だ? 何故俺はスカーレットを起動してこの世界に来た?
そもそも俺のこの世界に来た方法とコイツのこの世界に来た方法が違うのだとしたら、俺たちがこうして出会っているのはおかしいのでは……?
まさか、世界が繋がっている……とか?
「おい、お前らは―――」
俺はこのステータス画面について、聞こうとした。が、その言葉は男Aによって遮られた。
「着きました。ここが、貴方たちの―――」
そう言いながら、男は扉を開けた。
俺たちは促され、扉の中に入った。
「ここは?」
部屋の中は真っ暗。
到底ここに、アスモフィたちが居るとは思えないが……
「―――墓場となる場所ですッ!」
バタン!勢い良く扉は閉められた。
しまった……コレも罠だったのか……!
「ハメやがったな……?」
「いえいえ、ハメてなどいませんよ? 確かにこの建物内には彼女たちが居ますから」
そうか。嘘、という訳ではないのか。ということは言葉巧みに騙されたというわけだ。
「一つ、良い事を教えて差し上げます。私の職業は“言霊師”。文字通り言霊を操る職業です」
言霊……つまり詐欺師のようなもんか。
まあ、ルシファルナは別だけどな。うん。俺はこの男Aに言ってるのだ。勘違いしないでくれたまえよ。諸君。
「私の名前は神宮神 玲雄鳴……。この世界ではレオンと名乗っていますがね」
じんぐうじんれおな……漢字でどう書くのか、非常に気になるところだが、まずはこの状況をどうするか考えないと……
「ああ、これは先に言っておかなければなりませんね」
「何だ」
「おい、ダレス。ソイツを見せてやれ」
れおな……もといレオンがそう言うと、真っ暗だった部屋に明かりが灯り、少しずつ視界が広がっていく。
そして、目に飛び込んできたのは……
「ルインッ!」
デブ男……レオンは“ダレス”と呼んだか……。ソイツがルインを……捕まえていた。
何故だ? ルインの手のぬくもりは確かにずっと感じていた。それはこの部屋に入ったあともずっと……。それなのに、どうしてルインは捕まっている?
「この女の命は預からせて頂きます。私は貴方の本気が見たいのですよ。……そうですね。おい、ダレス……ヤれ!」
「グルァァ!」
ダレスは、その太い腕で拳を振り上げ……そしてそのままルインを殴りつけた。
「グハァッ……」
「おい……」
何故だ……どうしてルインは抵抗しない。声をあげない……?
(いや……まさか……)
「抵抗……“できない”?」
そう、逆に考えればしっくりくるのだ。
つまり何か……スキルが……
「そうか……洗脳系のスキル……それも特異の……」
「ハハハ! 素晴らしい! その通りですよ! 素晴らしい……素晴らしい考察力だ! ダレス!」
「ウラァァ!」
また、レオンが言った。
するとダレスはそれを受けて、またもルインを殴りつける。
「おい……! いい加減にしろよ……」
「そうです……もっと、もっと怒りなさい。感情は最大の武器ですから!」
ああ。最悪の気分だ。
何でこう……転生者ってのはこういう奴らばかりなんだろうか。
「私のスキルは、通常のとは違い特異性……つまりユニークを持っているのですよ。そこのダレスも同じでね。まあ、貴方に教える義理はありませんが」
ああ。最悪だ。クソ……。ただでさえこの都市に来てから最悪な気分だったのに……。
「おい……。最初で最後の忠告だ。ルインを解放しろ」
「しないと言ったら?」
「殺す」
「おお、怖い怖い。じゃあ解放してあげま…………せぇぇぇぇん!」
本当に最悪だ。
やっぱり、俺はまた……
―――人を殺さなくちゃいけないみたいだ。
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