閑話3 マノンの誤解解きと情報整理
普通くらいの長さ
「あ」
そんな一言で俺たちの行動は止まった。
声の主は当の俺だった。
「……どうかしたんですか? 主様」
「あ、いや。色々と聞き忘れたことがあったなって」
そう。聞き忘れたこと。
俺の心の内の違和感の正体を、暴かないと気が気じゃないからな。
「―――おい、マノン! 少し待ってくれ」
俺は振り返って、その人物の名を呼んだ。
俺に呼ばれたマノンは振り返ると、こちらの方へと歩いてくる。
「お……なんだよ」
「いや、何だよじゃなくてだな。俺は……いや、俺“たち”はお前に聞かなきゃならない事があるんだよ」
「聞かなきゃいけない事…………あ」
「どうやら気づいたみたいだな」
そう。
俺がマノンに聞かなきゃいけない事。
そんなの、答えは一つしかない。
「―――どうして俺を殺そうとした?」
あの時。
海底都市での謎のトーナメント戦の時だ。
俺はマノンとルインの戦いを見ている途中、突然身体が裂けるような痛みに襲われて、気絶してしまった。
それで目が覚めたのがついさっきと言う訳なのだが―――
「あー……あれはな」
「そ……そうでした……。どうしてマノン……様……はしれっと私たちと共に……」
戦っていた当人と、犠牲になった当人がいる以上、聞かない理由は無いし、答えない理由も無いだろう。
「言い訳、させてくれるか?」
そう、バツが悪そうに頭を掻きながら、マノンは話し始めた。
■
「……あーつまり?」
「すまん! オレにそんなつもりは無かったんだ!」
……なるほど、な。
全部ハッキリした。
マノンは言い訳をしたいと言ってから、その事件の全貌を語り始めた。
その内容は至ってシンプルな物だった。
まず、スキル『身代わり』について。
これは、自分を対象に受ける攻撃を、範囲内の近くの人物に代わりに受けてもらえるという効果。
『自分が』身代わり『になる』のではなくて、『誰かを』身代わり『にする』のがネックなスキルだと言う。
そしてそのスキルを攻撃回避の目的で使ったところ、なんとたまたま偶然俺に当たってしまったのだという。
当然、マノンは死に至る可能性のある攻撃と判断したうえでこのスキルを使ったそうなのだが、まさか魔王である俺に当たるとは思わなかったらしい。
マノン曰く、あとで身代わりにしてしまった人にはアスモフィに頼んで回復してもらう予定だったのだとか。
まあともかく、俺が身代わりとなってしまった訳だが……。
魔王を殺した……となればマノンの罪は重くなる。
だから何とかして誤魔化さなければならかった
だがしかし、マノンの心の内には、ルインの本気が見たいという戦闘狂の血が騒ぐ思いもあった。
二つの感情が入り混じった結果、今回の事件に繋がったのだという。
「マジですまなかった!」
土下座でそう謝るマノン。
そこまでされたら、許さない訳にはいかないな。
「分かった。もう怒ってないし、お前も気にするな」
「そうですね……そういう理由なのでしたら、仕方ありません」
ルインもこう言ってるしな。
俺たちがいいのだから、全然問題は無いだろう。
「お前ら……」
マノンは立ち上がる。
「オレが言えた話じゃねぇがよ……アスモフィを……絶対に助けてきてくれよな……」
「任せておけ。それは魔王して、当然の責務だ」
「……頼む……!」
そう言って、マノンは拳を突き出してきた。
俺はそれに拳を返す。
コツン、と俺たちの拳は重なった。
「それじゃあ俺らはそろそろ行ってくる」
「ああ。魔界は任せておきな!」
「頼んだぞ、マノン」
「おう!」
何ともまあ、馬鹿馬鹿しい話だったが、これにて一件落着だ。
俺の心の中の違和感も綺麗に無くなったし。
さあ、ここからは気持ちを切り替えてアスモフィ奪還作戦と行こうか。
「頑張りましょう! 主様!」
「ああ、そうだな!」




