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case.15 速攻

詠唱の意味。



「ここで勝負が決まったァァァァァ! 勝ったのは、海王ムルだァァァ!」



 サタールの勝者コールによって、試合終了となった。


 結果は、アスモフィの敗北。

 誰もが、予想してなかった結果となった。



「いや〜、まさかあの状況から負けるなんてなァ?」


「ああ、ホントだぜ。流石に負けるとか笑えるぞ!」



「「アハハハハハハハッ!」」



 サタールとマノンは、2人で高笑いをする。

 そんな中、戦いが終わったアスモフィが帰って来た。



「誰の噂をしているのかしら……?」



 これが漫画の一コマなら、“ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ”とでも付くだろうか。その位の迫力でサタールとマノンの背後を取ったアスモフィ。



「あ、アハハ〜。じょ、冗談だって。それよりお疲れさん。あとお久しぶりだなァ!」



 誤魔化すように、話題転換するサタール。

 それに呆れた様子で答えるアスモフィ。



「はぁ……そうね。悪いけど昔話はまた今度にしてちょうだい……」


「ヘイヘイ、疲れてんだな。あっちで休んできな」



 そう言ってサタールは、神殿を指差した。

 あそこでは現在、リガーテとリガルテが寝ていたはずだ。つまりアスモフィ追加で計3名があそこで寝ているということになる。



「そうさせてもらうわ……」


「何だよ、情けねえやつだなぁ!」


「はいはい、情けなくていいわよ。どうせ私は負け犬ですぅ〜」



 小さく手をぷらぷらさせながら、神殿へとトボトボ歩いていくアスモフィ。


 サタールはそんな様子を見ながら、続きの試合を始めるべく、コールを始めた。



「さて、早速だが次の試合に行くぜぇぇ!?」



『ウォォォォォォォォォォォォォォォォオ!』



 また、一体何処から湧いて出たのか分からない謎の歓声が現れる。

 しかし、もう慣れたのか、周りの人たちは全員ツッコまなかった。



「さて……最初は! 魔王ルミナスの側近にして、夢淫魔サキュバスという珍しい種族の少女! 現在暗殺者を目指して日々成長中とのことだ! その名もォォ! ルイィィィィィィィンッ!」



『ウォォォォォォォォォォォォォォォォオ!』



「続きましてェ! 魔帝八皇の【強欲】枠にして、大悪魔マモンの子孫! 戦闘大好き最強魔法使いの……マノォォォォォォォォンッ!」



『ウォォォォォォォォォォォォォォォォオ!』



 2人は、サタールの言葉を受けて静かにバトルフィールドへと入る。



 そのフィールドには、1人の人物が居た。



「ふふ、お2人さん。どうも。私がこの試合の審判をさせていただきますわ」



 海王ムル。

 試合が終わっても中々出てこないと思ったら、まさかここで審判をするとは。






―――ルインは目の前に立つ強敵2人に、怯みそうになりながらも、主の為、負けてはならないと、気合いを入れ直すのだった。







「ちょっとぶりだな! ルイン!」


「は、はい! ちょっとぶりです! マノン様!」



 バトルフィールドに入った私は、目の前に立つロリ(主様がそう言っていた)2人に、足が震えてしまうが、何とか……何とか持ちこたえている。



(こんなんで勝てるのかなぁ……私)




「まあ、さっきのはあれだろ? 痴女のモツ? とかいう……」


「それを言うなら……痴情のもつれ、ですよ」


「あーそれだそれ! まあ、何でもいいけどよ、オレは準備できてるし、普通に戦いてぇだけだからよ!」




 ……今回、空いた時間で私が“暗殺者”に近づく為に覚えてきた技は二つある。


 一つは影隠えいいんという技能。

 影隠は、目視できる場所にある影に転移し、その中に潜むことが出来る技。暗殺者の基本技だ。


 もう一つは急所突き。

 これは、この技を使った時に攻撃を当てた場所を問答無用に相手の急所とし、大ダメージを負わせる技。



 今回私が使う武器は短剣と手裏剣。それに得意の魔法で戦うつもりだ。




 だけど、マノン様は魔法使い。魔法で勝てるとは到底思えない。


 多分、多少の目くらまし程度にしかならないだろう。



「それじゃあ両者、準備はいいかい?!」


「おうともさ!」


「はい!」



 サタール様は、私たちの返事を受けて、勝負開始の宣言をする。



「おう、元気な返事ありがとさん! そんじゃ行くぜェ……? 第2回戦、ルインVSマノン……勝負開始だァァァァ!」




 早速試合が始まった。



(さて、マノン様はどう―――)



「オラオラオラァ! 速攻速攻速攻!」



 なっ……! バカ正直に正面突破をしてきた!?

 いや……これはもう突破っていうか、何も障害物は無いから突進……?


 ってそんなこと考えてる場合じゃない!



「“影隠”ッ!」


 

 マノン様の足元に出来た影に転移しようとする。

 が……



「おせぇんだよ! ―――“電光石火ライトニングビート”ッ!」



 手に持っていた杖を逆さにし、まるで剣のように持ち替えたマノン様。

 私が、影に入る直前、マノン様はその杖で私を思いっきり殴った。



「痛っ……ッ!」



 頭をガツンと、一発。

 だが、こんな痛みに震えている場合じゃない……。



「―――“氷天ひょうてん”ッ!」



 震える手で、魔法を放つ。


 氷天……主様が使っていた“炎天”を自分流にアレンジした魔法。私の得意な氷属性の魔法に変えてみた。


 空から降り注ぐ氷柱つらら

 それがマノン様を襲う。



「オレに……オレを魔法使いと分かっていて魔法をつかうとはなァッ……!?」



 直撃。

 いくつも、いくつも氷柱はマノン様に当たる。


 周りに着弾した氷柱は、破裂して白い煙を辺りに蔓延させる。




 勝った……?

 いや、絶対まだだ。こんなの誰でも分かる。




(……煙が……晴れる!)




「―――我、強欲の王なり。

 我が魔法は天を穿ち大地を轟かせる。

 力求めし太古の獣に、今百鬼を討たせる覇の力を宿し給え―――」



 何……?

 あのマノン様が、真面目に詠唱を……?



「―――限界突破。

        殲滅キル開始スタート

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